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14 二人だけのオフ・クリスマス(4)

風は全く吹いていなかったから寒くはなかった。


ここから見える風車も勢いを失っていた。


高良さんと並んでベンチに座り、澄んだ空気でひときわ輝く横浜の夜景を見ながらチョコレートの箱を開けた。


九個のガナッシュが入っていた。どれも同じような四角い形だった。


海を挟んだ向かいにある赤レンガ倉庫を抜けて、遠くにランドマークタワーとコスモワールドの観覧車が望めた。


時刻はちょうど二十時と表示されていた。


箱からガナッシュを丹念に選んだけれど、説明の紙は手元が暗くて読み取りにくく、どれが何の味かを調べるのは諦めた。


口に入れればなめらかに溶けていった。


食べれば味の種類がわかるはずが意外とわからないもので、ラズベリーのように味の特徴が強ければ明快だが、特徴が繊細なものは原材料がわからなかった。


彼女も同じようなもので、味の細かい評価をするときもあれば、ただ「おいしいね」と言うだけの時もあった。


こんな夜でもそれなりに嬉しそうだったが、彼女は


「今日はありがとう」


と言った後に続けて


「でも、もう誘わなくていいから」


と告げた。


僕といるのが嬉しくないのならそれでもいい。でも彼女の本心は違う。


本能的に不幸を選ぼうとしているのだった。だから僕はここで後ずさりしたり、無理に誘うとよくないと正論でごまかしたくなかった。


「誘う」


「え?」


「嫌がられても、また誘う」


僕はもうひとつチョコレートをつまんでかじった。


しばらくしてから彼女も一つ取り上げて口に頬張った。


「本当は私ね、甘い物そんなに好きじゃないんだ。でも今日は特別」


彼女は地面から足を上げて、子供がやるようにベンチでぶらぶらさせていた。


「子供の頃はいつもお弁当の代わりに菓子パンを渡されていたから。いつからか甘い物が好きじゃなくなった」


最後の一粒は、金色のフィルムに包まれていた。


彼女はそれを丁寧に剥がすと、半分かじった。


「ウイスキーボンボン」


こちらに差し出して「半分食べたら?」と訊いてきた。


「間接キスとか、そんな子供じみたことは考えないでよ」


そう言われてもう半分を口に入れた。


いざこうしてあたかも恋人ごっこをして過ごしてみると、前に四人で集まったときと違って会話に困った。


いっぱい話したいことや伝えたいこと、聞きたいことがあったはずなのだが、全てがすっぽ抜けた感覚だった。


相性が悪いのかと考えた。でも会話がなくても気まずい雰囲気はなかった。だから相性が悪いわけではなさそうだった。


ただそういう僕らの関係のインタールードが必要だったのだろう。そう、彼女には休息が必要だった。


ひとりで止まることなく走り続けている彼女には休息が必要だった。

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