14 二人だけのオフ・クリスマス(2)
外観は横浜、馬車道を代表するように重厚なレンガ造りの建物だった。
明治時代の洋館が再現されており、一歩中に入れば時代を飛び越えた気持ちになれた。
店内を案内されると、通路に飾られているウエディングフォトをみて、こういうプランもあるんだねと高良さんが嬉しそうだった。
席に着くと彼女はそわそわし始めた。
「あの、本当にごちそうになっていいの?」
「うん、元々大してない貯金だから、ぱーっと使っちゃおうよ」
「じゃあどうしようかな。選んでもらいたいけど」
「任せて!」
と僕はよくわからないながら、予算に合うできるだけ高級なコースを選んだ。
食事をしながらアイさんのことを訊いてみた。高良さんが確認する。
「彼女は、彼女自身のことについて話をした?」
「話してくれた。ほら真吾と高良さんがおれとアイさんから離れて砂浜を歩いていたとき。話されて驚いた」
「うん、そうだよね。あえて伝えなかったんだ。彼女が話したければ話して、話したくなければそのままでいて欲しかったから」
「アイさんのような人ばかりではないだろうけど、色々と誤解してた。それに高良さんはNPOの手伝いもしているんだって?」
「うん、学校からの紹介もあって。出来ることがあれば何だってお手伝いしたいから」
「高良さんもアイさんも偉いよ。おれなんか全く何もしてないに等しい。大学に行っても何もしていないように思えてきた」
「そんなことないよ。立派だよ。私が出来ないようなすごいことをしていると思う」
「いや本当に、二人の方がよっぽど立派だ。おれと真吾はただ好きなことを楽しんでやっているだけで、申し訳なくなる」
僕らは会食に慣れていないため、とんでもなくぎこちない時間を過ごした。
出てきた料理の味を表現するには、あまりに日常の食事が庶民的なため、ただ「おいしい」としか表現できなかった。
どこの魚で味付けに何を使って、という話はできず、かといって日常会話も上手くできず、黙って食べる時間が長かった。
それでも何か特別な時間を過ごしている気がして、少しでもクリスマスを補完できた。
食事を終えてレストランの入り口に向かった。そこには持ち帰り用の洋菓子が並んでおり、ガラスのショーケースの内側には宝石のように美しいケーキが整然と並んでいた。
僕は財布を取り出して少し覗いてから、残りのお金で買えそうな物を探した。
ガナッシュの小箱の金額が財布の残りとほとんど同じだったので、それを手に取るとレジでお願いした。
厚めの立派な紙の手提げに入れて渡された。こんなに高級なチョコレートを買ったのは生まれて初めてだった。
これで持ち金はきれいさっぱりなくなった。
そのまま帰ってしまうと二人とも同じ駅だし、せっかくここまで来たのだからもったいないと、高良さんが「大さん橋まで行ってみない?」と誘ってくれた。
二人で海岸通りを歩いていると、ふと中学校で揉めた出来事を思い出した。




