14 二人だけのオフ・クリスマス(1)
クリスマスが過ぎて数日経った頃、高良さんから連絡があり、キーホルダーが無事に返ってきたと教えてくれた。
あの後僕は自分が適当に話を作ったことに気がとがめていたが、それほど真剣でもなかった。
どうしてもキーホルダーが見つからなければ、また買いに行けばいいぐらいにしか考えていなかった。
彼女からすると特別な思い入れがあり、心配かけてしまってごめんなさいと、またしきりに何度も謝っていた。
なにかその対応は僕にとって想定外に胸を締め付けるものだった。
たいしたことのないプレゼントだ。でも彼女にとってはそうではなかった。
彼女が儚かった。もっと彼女にしっかりとした何かをしてあげたい、それは贖罪ではなく、赤いリボンを手繰ると出てきた、リボンの絡まった僕の心への始末のようだった。
「仕切り直そう。クリスマス」
なけなしの貯金を全て下ろして、彼女を誘うことにした。
「どこかディナーに行こう。クリスマスは過ぎたから、どこでも直ぐにいけるよ。丸の内?品川?新宿や渋谷の方がいい?横浜?そんなに予算は無いから、あまり豪勢なところにはいけないかもしれないけど」
「いや、いいよそんなの」
と彼女が断ろうとする。
それはみずから幸せを突き放して手放す癖が出ているように感じた。
遠慮は美徳かもしれないが、彼女にはもっと幸せを謳歌する権利がある。
なにかしてあげられるならしてあげたい。電車での別れ際のアイさんの言葉が浮かんだ。
「そうだ、アイさんならどこかおすすめのお店を知っているかも知れないよ。だから訊いてみたら?」
彼女は困ったように返事をして、それで半分ぐらい無理矢理に連れ出して、僕らは横浜で待ち合わせた。
僕らが入ったのは馬車道にある馬車道十番館だった。早めのディナーの時間だった。
少しだけ小綺麗な格好をした僕らは、格式高い佇まいを前にして
「本当にここに入るの?」
と胸が高鳴り緊張していた。




