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12 三浦海岸のイブ(5)

「さっき買ってきたあれ、出そうよ」


そう言ってヤマザキのケーキのピースを取り出した。


ショートケーキ、チョコレートケーキ、チーズケーキ。全てあわせて4つ。


「飲み物は適当にとって。冷たいものしかないから、体が冷えちゃうかもしれないけど」


缶ビール、缶酎ハイとコーラ。どういうわけかワンカップ酒も混ざっていた。


「これ、どういう組み合わせだ」


そう言いながらどうでもよくなって、ワンカップを開けて冷えたアルコールを少し呑んでから、減った分だけコーラを注いでみた。


おいしいのかどうかはわからなかった。


「メリークリスマス」


「駅に着いた時は、こういうクリスマスの過ごし方も悪くないかなと思ったけど、今までの人生で一番惨めなクリスマスに認定してもいい」


と真吾が言うと、みんな面白がって笑った。


「そう?私は・・・」


と高良さんはみんなを等しく確認してから


「私は、今が一番嬉しいクリスマス」


と言い、もう酔ってしまったのか満面の笑顔を浮かべた。


彼女の家庭事情は僕の知らないところだが、これまで家でまともに祝ったことがないのかもしれないし、こんな日は友達と過ごしたかったのかもしれない。


「私も割と悪くないと思うな、こういう日があっても」


とアイさんも高良さんに味方していた。


「まあ、記憶に残るクリスマスということには間違いはないな」


と真吾も最後は認めた。



火の勢いはやがて落ち着いた。いつまでも未来を見せてくれる訳ではなかった。


誰ともなく立ち上がって駅に向かった。


さすがに体が冷えたので、途中の自動販売機で缶コーヒーとコーンポタージュを買ってそれぞれで飲んだ。



帰りの電車の中で高良さんとアイさんが座席に座った。


ちょっと離れた場所で僕と真吾が立っていた。ドアに寄りかかった真吾が言う。


「あのアイさん、いい娘だな。すごく育ちのいい、教養のある人だとわかる。どこか優秀なお嬢様学校にでも行っているのかもな。もしかしたらモデルとかしてるのかも。立ち姿がしっかりしているというか、見栄えがするし。なにか不思議な魅力があるが何だろうか。順一はなにか訊いたか?」


僕はなにも言ってなかったなと答えた。


アイさんが途中で降りた。去り際に僕に近づくと


「高良さんのことは頼みましたよ」


と囁いた。この時以来アイさんとは会っていない。


真吾は川崎で下車した。


残った高良さんと僕はいつもどおり同じ駅で電車を降りる。


すると高良さんが改札間際で、キーホルダーが無いと声を上げた。


中華街で買って渡したパンダのキーホルダーが無くなっているという。


鞄につけていたが、いつの間にかそこには金具だけが残り、他には何もついていなかった。


周りを見渡しても落ちておらず、ホームまで上がってみたがそこにも無かった。


「え、え、どこかで落とした?海岸?中華街で電車に乗るときまではあったはずだけど」


そう言って高良さんはとても動揺していた。


「今から、今日通った所を見て回る、戻る!」


と階段を駆け下りて反対側のホームに向かおうとする。僕はあまりに範囲が広いし、もう暗いからと止めたが彼女は


「あれはなくしたくないの!」


とどうしても耳を貸さなかった。


僕は彼女の腕を掴んだ。


それはあの元彼の行動を連想させたので、思わず直ぐに手を離した。


そして僕は仕方なく嘘をついた。


三浦海岸で電車に乗るまでは確かにあったと彼女に言い、駅の窓口で遺失物の届けをして待った方が確実だと勧めた。


彼女は駅の窓口で届けを出した。


ごめんなさい、ごめんなさいと僕に何度も謝るので、大丈夫だよと安心させた。

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