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12 三浦海岸のイブ(1)

時刻は夕方に差しかかっていた。


いくつもの海辺や山を通り過ぎ、電車は三浦海岸駅に到着した。


クリスマス感はどこにもなく、完全なオフシーズンである今の時期は寂しく静かな駅前だった。


海岸に向かう道すがらコンビニへ寄って、飲み物や食べ物をいくつか調達した。


海岸のみえる通りに着くと空はどんよりと曇っており、鮮やかな夕陽は望めなかった。


多くの若者が夏に青春を過ごす海。


ここに縁のない僕にとっては、寒い夏がそこにあるようだった。


遠くで気の早い凧揚げをしている姿が見えた。


蛍光色の鮮やかな凧は灰色の空に映えていた。


三浦海岸に面した細長い駐車場には一台の車もなかった。


僕らは堤防の階段を超えて砂浜に出た。


「うわっ」


と真吾は声を上げた。


砂浜は想像したよりも柔らかく深く、靴の半分が埋もれそうだった。


靴に砂が入らないように慎重に水際に向かうと徐々に砂は硬くなっていった。


真吾はポケットからたばこを取り出した。


「小学生の頃、確かにここに来たな」


と言いながら海岸に沿って進んだ。


「山も近いから山間部でオリエンテーリングをして、別の日は海で泳いだりレクリエーションしたり。確かキャンプファイヤーもしたっけ」


そう言われると確かにそんなことがあったのかもしれない。


思い出そうとしたが、僕には貴重な体験ではなかったのか、あまり記憶の残っていない出来事だった。


「永井君は覚えてないの?私は覚えてるなあ。やっぱり横山君とは同級生だったんだ」


と高良さんが言う。


アイさんはこういった僕らのやりとりを耳にしながら、海岸線やそこから見える港町の景色を眺めていた。


それはどこか懐かしんでいるような姿だった。


あの頃の僕らは文集に載せるために夢を語っていた。


成長につれて大抵は夢を忘れる。もしくは形を変える。

そもそも叶わないような非現実的なものだったとわかる。


でも案外と小学生の頃の夢をそのまま実現する人も多い。


「高良さんは小学校の文集に、将来の夢で何を書いた?」


と僕は訊いた。


「私は看護師って書いた。夢に向かっていると言えば理想的に聞こえるけど、つまらないかもね」


彼女は手に持ったビニール袋をぶらぶらさせていた。


真吾は宇宙飛行士になると書いていたらしい。


僕は正直なところ、何を書いたか覚えていない。おそらくロボットを作りたいと書いたのだろう。


アイさんも何を書いたか覚えていないという。

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