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10 元彼と決別するとき(4)

今日の彼女はデニムのパンツと、丈の長い重めの紺のコートを羽織っていた。内側に着ているものはみえなかった。


誰も周りにいない方が話しやすいからと、デパートの屋上にやって来た。


放置されたような遊具がいくつかあり、遅い時間だから子連れの親子もおらず、ただ僕らだけがそこでベンチに座った。


周りを取り囲むビルからの明かりやネオン、ずらりと並んだ自動販売機の明かりで僕らは複雑な色に照らされていた。


先程までの話は一度切り離されて、改めて二人で面と向かって腹を割って話す雰囲気になった。


うっかり告白まがいのことをした後に、いきなり重い状況となってしまった。


「永井君は私のバイトのことを知っているから、信じてくれるよね」


僕は頷いた。


「彼は信じてくれなかった。だから今日跡をつけられてた。それであんな風にもめて・・・」


僕は一瞬でも彼女のことを疑った気持ちを切り捨てた。


自分の目で見ている彼女が本当の彼女だ。そう捉えるべきだ。


「もう会わない方がいいよ」


「うん」


「おれだって、高良さんのこと知ってる。ずっと前から。元彼よりもっともっと前からずっと。だって小学生の頃から一緒だったんだから。そのころから見ていたから」


高良さんはその言葉を耳にして、泣きそうに口を堅くへの字に曲げて、感情を押し殺そうとしているようだった。


「さっきは思わずあんなこと口走ってしまったけど。高良さんとまたこうして話をして、小学生の頃のことを沢山思い出した。あのころ自分の感情も。やっぱり好きだったんだなって」


「初恋?」


「まあ、そうなんだろうな」


彼女は顔を背けた。その後ろ姿の柔らかな髪の揺らぎで、泣いているようにみえた。


何も出来ずに心が落ち着かなかった。


彼女は何も返事をしなかったが、また立ち上がるとデパートの中に入ろうとした。


僕が慌てて後を追っていくと、彼女はエレベーターを呼び出していた。


エレベーターが開くと乗り込んだ。そして地下階のボタンを押した。


それから彼女は壁にもたれかかって、またこめかみを壁の冷たい部分に押し当てているのだった。

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