10 元彼と決別するとき(2)
三十分待ってみても出てこなかった。
そのうち客引きの男がこちらに近づいてきて、商売の邪魔だと怒鳴られて追い払われてしまった。
いずれにせよ彼女の用事が済めば駅に戻ってくるだろうと、駅の近くのポールに腰をかけて待っていた。
そうして更に三十分程度過ぎると、すっかりお尻と腰が痛くなってきたため近くの花壇に腰を下ろした。
いつの間にか僕はうたた寝をしてしまったようで、突然声をかけられて顔を上げると、そこには高良さんがいた。
彼女の左頬にはあざがあった。
僕は素知らぬふりをして彼女に訊いた。
「それどうしたの?大丈夫?」
と左の頬を指さすように訊いた。
「私がいることに驚かないのね」
と彼女が言う。
僕はうっかりしていたと戸惑ったが、彼女は「いいから、気にしないで」と言った。
「いや、気にするよ。どこかでぶつけた?」
「ぶつけてこうなる事なんてないでしょ。知ってるくせに」
彼女は目線をそらした。だから僕は訊いた。
「元彼に会った?」
彼女は小さく頷いた。だがそれ以上は訊けなかった。
プライベートに入るわけにはいかない。彼女が自ら打ち明けるのを待つのみだった。
そうしていると彼女の方がしびれを切らした。
「訊かないの?もっと」
「プライベートだから訊けない。話すなら相談にのるけど」
「なにその正論」
彼女も花壇に腰を下ろして、そうして僕に目を合わせないまま、街の様子を見ながら言った。
「知ってる。さっきお店に入った後に中から見てた。あなたが一言ガツンと言ってくれてるの見てた」
僕はそれを聞くと、先程の様子がありありと眼前に浮かんできた。
目の前の大きな体格の男。高良さんに手を出したのがどうしても許せなかった。
「別れなよ。幸せになれるわけないだろ、一緒になれたとしても。わかっててそうするの、もう止めなよ」




