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9 エッセンシャルワーカー(1)

「昨日の帰りに高良さんとばったり会って、ちょっと話をした」


僕は翌日の午前中も早い内に、大学の研究室にいた。


昨晩は高良さんとのことが頭から離れず、上手く眠れなかった。


無理に寝ようとせずにいっそのこと早く起きてしまえと、早々に家を出たのだった。


真吾はどうやら研究室に泊まったようで、僕が部屋に入ると並べた椅子の上で伸びていた。


そしてその側の机には炊飯器が置いてあり、保温のランプがついていた。


真吾はよくここで自炊をしている。といってもやっていることは無洗米で炊いたご飯に、ツナ缶やサバ缶といった各種類の缶詰とマヨネーズをのせているだけだが。


真吾は椅子で寝そべったまま「それで、何を話した?」と訊いてきた。 


「小学生の時、物を取ったとかそういう記憶はないって」


「お前本当にそれ、訊いたのか?」


「ん、ああ」


「たとえ黒でも、知らないって言うだろ普通」


「バイトのことも訊いた」


これは真吾は内心予想していなかったようで、直ぐに言葉を返さずに少し考えた様子だった。


「で、どうだった?」


僕は彼女の真実を知った気になって、鼻にかけてそう真吾に告げたものの、彼女としては秘密にしていて欲しい事柄かもしれないと気づいた。


「まあ、何というか・・・。場所は確かにそっちの方だけど、最近は飲食店も色々あるだろ。そこでウェイトレスしてるって言ってた」


「どこの店か訊いたか?」


「・・・いや、そこまでは訊いてない。でも元気そうだし、大丈夫じゃないかな」


真吾が鋭くつっこんできて、たとえば「ウェイトレスなら、営業時間中に会いに行ってみるか?」など言ってきたら困るなと構えていた。


ところが彼にとっては実際の所、別段興味のある話ではないようで、そうか、と言ったきりだった。

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