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7 彼女との再会(5)

「検査のバイト」


そう言って彼女は歩幅を広げて、早足で歩き始めた。


「検査?なんの?」


「その・・・あの辺りは風俗店が多いから、性病の検査を手伝ってるの。これは真面目な話よ」


彼女はそれでも少し気まずそうな表情をしながら続けた。


「看護師になろうとしてるんだから、今からでもなにか人の役に立つ形でバイトをしたいから。バイトをするなら、全く関係のないことよりも、少しでもなりたい仕事に近いものを選ぶと良いってどこかで聞いたことがあって。それで友達に紹介してもらった」


僕の震えは止まってはいなくて、緊張したままだったが本当に心の底から安堵した。


やはり僕の見ていた彼女が本当の彼女ではないか。真吾の言う高良さんは虚像としての人物像だ。


直に話しているわけではない真吾は、高良さんを間違って理解している。


どれだけ頭の良いやつだって、コミュニケーションをとらなければ真実を見通せないんだ。


正直に言えば、彼女がもしお金に困ってそういう体を売る仕事をしているとしたらと考えて、四六時中脳裏に不安がよぎっていた。


もし同じ年齢でそういう事を誰かとしているとすれば、どうしようもなくやるせない気がしていた。胸が騒いで仕方がなかった。


そして答えを得られた今、同時に自分に対しての嫌悪感に襲われた。

だからつい「よかった。体を売るような仕事をしてなくてよかった」と呟いた。


すると意外にも彼女の表情が変わり、さっきまでと違う様子で怒りに満ちた。


「よかったって・・・なにそれ」


「え、だから、体を売るような仕事をしてなくてよかったって」


「私の仕事は良くて、彼女たちの仕事は良くないってこと?そんな風に蔑んで欲しくない。彼女たちも立派に仕事をしてるんだよ」


踏切を渡ってコンビニの前の駐車場に来ると彼女は立ち止まった。そして、ここまででいい、と言った。


そのまま去って行くかと思っていたが、彼女は動かなかった。しばらく僕らはそのまま向かい合って立っていた。


彼女は下を向いたままだったが、


「ごめんなさい。言い過ぎました」


と足早に立ち去った。


怒って帰るかわりに投げかけられたその言葉が、小さなとげのようで余計に胸に刺さり、高良さんとの距離を感じた。


昨日別れた後に感じた、地球人と火星人のように再び距離を感じた。


二人の間には漆黒で何も存在しない空間が感じられた。


今夜はこんなにも気持ちが沈む帰り道となった。


やはり錆びた自転車は自然に直ることはないとわかった。家までの帰り際に見た枯木星が泣いていた。

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