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7 彼女との再会(2)

「おれの学部とか専攻の話はしてなかったと思うんだけど、学校でロボット工学をやっていて。同じゼミに横川がいるんだ。覚えてない?横川真吾」


彼女は首を振って覚えていないという。


「小学校と中学校で同じ学校だったけど。こう、いつもやたらと姿勢が良くて背筋が伸びてて。あだ名が『アンパン』だった」


「そういえば、確かに同じ学年にいたね。クラスも時々同じだった。すごく勉強の出来た子」


「そうそう、その横川」


「なんでアンパンって呼ばれていたんだっけ?」


「遠足のおやつでアンパンを持ってきて、食べようとしてリュックから出したら完全に潰れていて。それを泣きながら食べてたからみんな面白がってそのあだ名にしたんじゃないかな、たしか」


「そういうことだったっけ」


と彼女はカップから立ち上る湯気を見つめながら


「あだ名をつけて呼ぶことは学校で禁止されてたけど。やっぱり止めた方が良いね」


と言った。


僕は研究室で時々真吾がアンパンを食べているのを見かけているから、その度にそのあだ名が頭に浮かんでいた。


確かにこういうあだ名は残酷かもしれない。


高良さんはまだ横川の全体像を掴んでないようで、もう少し詳しく思い出そうとしていた。


「成人式では・・・見かけなかった?」


「そう、たぶんいなかった。実はさっき訊いたんだけど、どうしてだろう」


「それで、横川君とは同じ高校だった?」


「いやあいつは私立に行った」


「高校が別だったのにそれで今は同じゼミなんて、すごい偶然じゃない」


「そうなんだよ。大学受験の時にたまたま友達伝いに知って」


この話の流れから真吾の話の信憑性を確かめるべく、高良さんに訊いてみた。


「なにか横川のことで印象に残っていることない?小学生の頃」


彼女は思い出そうとする。それは演技なのかもしれないが、少なくとも本当にそうしているようには見えた。


「うーん、別にないかな」


「そういえば、横川がおれらと一緒のクラスだったとき、だれかの物がなくなるとかいう事件ってなかったっけ?」


「そんなことあったっけ?」


「うん、あった気がする」


僕は高良さんの様子をそれとなしに観察していた。


本当に忘れているのかそもそも知らないのか、特に変わりがなかった。


段々と真吾の記憶こそが書き換えられているのではないかという気がしてきた。


話を切り替えて本命の話題までもっていくために彼女の学校のことを訊いた。


「ところで、看護学校って具体的にどんな風に授業があるの?実習とかもあるんでしょ?」


そうやって彼女に看護学校の話を訊ねてみたが、あまり乗り気ではないようで、言葉少なく返された。


「うん、実習はあるよ。実際に看護や介護の現場に行く研修もある」


それ以上は何も出てこなかった。

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