7 彼女との再会(1)
家の最寄り駅に着くと人波に沿ってエスカレーターを下りて改札を出た。
夜の帳がすっかり落ちて一日の終わりを迎えていた。
ふと視線を感じたので周りをなんとなしに見回してみると、駅前のバーガーショップの窓席に高良さんがいて、こちらを見ていた。
それから僕の方に向けて手を振った。
どきりとして心が高揚したが、僕ではない誰かに手を振っているのかと気づき、後ろを振り向いた。
だが誰もおらず、彼女を再び見ると「あ・な・た・よ」と言わんばかりに指をこちらに向けていた。
・・・
「びっくりした。外見てたら永井君がいるんだもの」
僕はホットコーヒーを片手に高良さんのとなりの席に座った。
今日の彼女の装いは昨日と違って露出が少なく、シックな印象で袖が長めにすぼまったライトグレーのニットを着ており、黒いパンツに白いスニーカーを履いていた。
彼女はいたって自然な振る舞いだけれど、昨日の出来事があるので、僕は彼女を直視できなかった。
挙動不審に思われないように気をつかいながら話した。
「びっくりしたのはおれの方だよ。こういう風に声かけられるのって初めてだから」
「たしかにそうだね。不思議と今まで見かけることがなかったし。こうして声をかけるのも、一緒にここに入るのも初めてだね」
そういった何気ない会話をしながらも、例の話を聞き出す突然のチャンスの到来に内心動揺していた。
いきなり本題を切り出すわけにはいかないため、まずは当たり障りのない所から訊ねた。
「今日は学校だった?」
「うん、学校だった。朝から授業と実習があって、いつもより今日は大変だったかな。それで帰る前に一呼吸つこうと思って」
彼女は両手でカフェラテの入ったカップを包んだ。
マニキュアの塗られていない、短く切った爪は、何か塗ってあるよりもむしろ際立つ。
柔らかく透き通るような指先を温めていた。あまり量が減っていないのは、つい先程来たからだろう。
カップの縁に浮かんだ泡にスティックシュガーをパラパラと落としてから、軽く泡をひとかき混ぜして口に含んだ。
「永井君も学校?」
「昼から行ってきた。ほら、朝は昨日置いてきた自転車を取りに行って」
「ああ・・・」
「ちょうど電車で帰ってきたところ」
「あれ、じゃあ今日は自転車?」
「うん」
「早く出さないとお金掛かっちゃう?」
「大丈夫。そこの裏手に駐めてあるから。あそこは二十四時間で同じ金額だから」
僕はコーヒーをすすって一度心を落ち着かせる。
それから徐々に本題に向かうために、外堀から話題をふることにした。
はじめに横川のことで大きく話を外しておいて、それから学校のことをもう少し話して、徐々にアルバイトの話につなげよう。




