5 研究室(3)
「いやいや、そういうのじゃないから」
「ならなんでいちいち呼び出したんだよ。男と別れたから、声をかけてきたんじゃないのか?」
「そんなことでいちいち呼び出すか?」
と反論したものの、改めて会話を思い返してみれば、たいした話をしていないと気づく。
「・・・愚痴を聞いただけ、といえばそれだけかもしれない」
真吾は基盤のシグナルを見ながら「ああ、ちがうな」と呟いた。
再び床を蹴って、パソコンの前に戻ってくる。
そうしながらこちらを見て
「なにか他に話をしてないのか?」
と言う。
僕はどこまで彼女のプライベートを伝えて良いのか迷いつつも答えた。
「病院に行った」
「病院?」
この答えは真吾の興味をひいたようだった。驚いてこちらに振り向いた。
「そう。高良さんと話しているときに電話があって、お父さんが入院している病院に行った。二人で。てっきり彼女が看護師を目指しているから、それ関係の用事かと思ったけど」
「二人で?なんでお前もついていくんだ?」
「え、だめ?」
「関係者じゃないだろ」
「一緒に来て欲しいと言われたから」
「・・・」
真吾はしばらく画面を見つめていた。そうして数回タイプをした後、再びロボットの胴体の所へ椅子を飛ばした。
「お前、高良のことあまり知らないだろ。よく一緒に遊んでいたわりに」
昨日の夜に彼女と別れた後に気づいたこと。小学生の時ではなく今になって、今更気づいたことがいろいろあった。
真吾は賢い。だから以前から気づいていたのかもしれない。彼女のことやその背後にある環境について。
「実は昨日会ったあとに、改めて気づいたことがある」
「高良の良いうわさはあまり聞かない。昔も今も」
今も?彼女のことはあまり知らなそうな素振りだったが、どういうことだろうか。
真吾は急に立ち上がり、
「飯に行こう!腹が減った」
と突然大声を出した。




