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4 雨のあとの公園(2)

昨日も来たはずなのに、こうして通り抜ける改札や上りのエスカレーター、ガランとしたホーム、いずれも遠い日の出来事に思えた。


赤い京急の電車に乗って南方に向かって揺られていると、子供の頃の記憶が段々と甦ってきた。


自分の心に素直になれば、そこにぽっかりと洞穴の隙間が出来て、その隙間を埋めるように何かが岩の隙間から染み出てくる。


それはすっかり忘れていた記憶となり鮮明化する。


実は彼女に恋をしていたのだった。


あまりに遠い記憶となり忘れかけていた。どうして好きだったことを忘れていたのだろうか。


そう、その理由も思い出した。


小学生の頃にはいつも彼女の姿を追いかけていたし、廊下で姿が目に留まればそのまま釘付けになった。


すれ違えば心臓の鼓動が聞かれてしまうのではないかとひとりで焦っていた。


教室や廊下の掲示物で彼女の名前を見かければ目に飛び込んできて、それだけで心がざわつき特別な感じがした。


彼女の字はとてもきれい、とでもなかったが僕が書く文字よりは随分と丁寧だった。


そしてこれが恋というものなのだと初めて知ったのだった。


そんななか同級生が彼女を見る目を冷たくしていったのは、小学校も終わりかけの時期だった。


あの頃は気づかなかったこと。昨日の帰りの電車でようやく気づいた彼女の生活。


彼女のそばから人が離れていった。


彼女がいつでもどこでも弟と一緒にいるのが嫌だとか、本当の友達とは思えないあらゆる理由で人が去った。


いつも同じ服を着ている。家が貧しいといううわさ。人気のない子と一緒にいるからとか。


小さい頃こそ純粋な分だけ残酷なものだ。


大学生にもなればそんなことは気にもしないが、小学生の閉じた世界ではそういったことが命取りになった。


それと共に自分の気持ちも少しずつ冷めていった。


僕の恋とはその程度の情熱で出来ているのだなと、知ってしまったようで少し寂しかった。


今さらながらバチバチと光線が跳ねた短い棒花火の、後に残った灰色のものが自分の気持ちだと知った。


電車が横浜駅を過ぎると、遠足で行った野毛山動物園を思い出した。


ここから園はみえないが最寄り駅を通過したところだった。


たしか、高良さんお弁当は菓子パンだったな。とてもうらやましかった。


今になれば親にお弁当を準備する十分な時間がなかったのだろうと、そんなふうに想像できるが当時の僕らにはわからない大人の事情だった。

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