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1 成人式以来の再開(1)

その日は小春日和で、これからやってくる本格的な冬を前に心が一息つく陽気だった。


待ち合わせのために僕は一人でベンチに座って、清らかな空気に満ちた広い公園を眺めていた。


そこはタイヤ公園と呼ばれている。


その名の通り見渡す限りタイヤだらけの公園で、趣向を凝らした方法でタイヤが置かれていた。


半分埋まっていたりどこまでも積み上がったり、小さな物からジェット機が使うタイヤまで揃っていた。


『明日会って話ができない?』


そう言われて旧友の女の子に呼び出され、僕はどんな話か確認もしないまま二つ返事で約束をした。子供の頃にその彼女といつも遊んだこの公園で待ち合わせをした。


近所だが子供向けの場所だからか、気がつけば十年以上も訪れていなかった。意識しなければこんなに近所でも全く関わることがない。


見たところあの頃からあまり変わらないようだが、実際にはいろいろなものが新しく入れ替わっているに違いない。




彼女はミニスカートにパーカーと、オフホワイトのもこもこした起毛のジャケットという格好で現れた。


一昨年の成人式でふと顔をあわせて、久しぶりだからと連絡先を交換したのだった。あれから連絡は一度もなかったのだが。


「元気?」


彼女はそう言いながら僕の隣に座った。


ふっと冷たい空気の流れに乗って、女の子らしい柔らかいにおいがした。


香水かコロンなのか、香りに気づいたことをわざわざ伝えるのもおかしい気がして、ただ黙っていた。僕はベンチのてすりに手をかけて、意味もなく座りなおした。


彼女の面影は子供の頃と変わらないが、いつまでも記憶の中では幼かった彼女が、いつの間にか成長していた。


時間の流れを改めて実感して、僕も同じぐらい変わっているのだろうと、客観的に突きつけられる思いがした。


「ごめんね、急に呼んじゃって。成人式ぶりだね。まだここに住んでるとは思っていなかったからびっくりした」


と彼女がこちらをみつめてきた。


僕はその視線に目を合わせるのが恥ずかしくて目をそらした。


「実家から大学に通っていて、その方がなにかと便利だし。あんまりこだわりもないから。一人暮らししたいとか、早く実家出たいとか」


「そうなんだ」


隣に座られると顔を見るにも近すぎるので、さらに視線をそらすために自然と斜め下に目を向けた。すらりと伸びた彼女の素足が目に入った。


彼女はその視線に気づいているのかいないのか、公園を見渡した。


「なんだか思い出すよね。小学生の頃、みんなでここで遊んだじゃない。覚えてない?同じ学年の男女で分かれて集まって遊んでいるうちに、結局一緒になって氷鬼やったりドロケイやったり。そのうちテンカやるようになって」


「氷鬼って、よく覚えてるな。すごく懐かしい響き。そう言われると確かにそんなことしてたな。小学校入ってから三、四年生まではそうやってみんなで遊んでたな」


「楽しかったよあの頃。男子と女子、私たちの学年は仲良かったから」


「なんでかそうだったよな。クラスが二つしかなかったからかな、みんな仲良くて。今も連絡とってる?」


「うん、よく連絡とってるよ」


彼女はそれがあたり前だと言わんばかりの勢いで、そう返事をした。

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