還光の月
かつて人類は、世界の支配者だったという。
大地に宝石の街を築き、空を裂いて絵を描き、星の海を渡って月に至った。
彼らは地を離れ、風を置き去りにしてもなお、夢を見つづけた。
けれど、夢は燃え尽きる。
空を焦がした光はやがて影を呼び、繁栄は静かに崩れた。
墓標は砂に埋もれ、翼は水の底に沈み、星の輝きにかつての栄光を重ねる。
だが繁栄を忘れられない彼らはなおも夢の残滓を手放せずにいる。
やがて星は沈み、夜が地を覆った。
残されたのは、静かな月の光だけ。
それは滅びの証でもあり、祈りの残響でもあった。
今、誰もいない地平でひとり、月が夢を見ている。
かつて地上にいた者たちの願いを、もう一度映し出そうとするように。
風も声もない世界で、ただ淡い光だけが息づいていた。
——月はまだ、夢を見ている。
誰かがその夢に、再び触れる日を待ちながら。
久しぶりに夢で空飛びました




