第2輪 掲示をしたい!
文字通り、ひょんなことから心機一転。
『青春ラブコメ』を実現させるべく、集められた少数精鋭の一人目として加わったのだが、ここで一つ注意喚起だ。
僕は今起きている事象に、
「俺の平凡を返してくれ」
「省エネこそ美徳」
なんて恰好の付けたセリフを吐いたりはしない。
はっきり言おう。
僕はこの15年間で一番ワクワクしている。
◇
僕の後ろの席でずっと俺のことを観察してた、とのこと。
脅して友達になろうとするくらいだし、きっと僕より友達が少ないと思う。
「ねえ朱屋敷さん…」
「ヒナミでいいわよ」
「ヒナミさん…
なんで僕の家いんの!?!?」
あの一件が終わったあと、僕の方が速く学校を出たのに、こいつの方が速く俺の家にいる。
ヒナミさ…ヒナミは我が物顔でふんぞりかえっている。
「ていうか、鍵閉めなきゃだめでしょ? 泥棒が入ってきちゃうよ?」
「鍵が開いてるからって入っていい理由にはならないのだが」
「まあ、いいじゃない。ヒロインはこれくらい破天荒なほうがいいでしょ」
「…それより、僕の牛乳プリン食べたよね」
「ダメだった?」
毎日風呂上りにアニメを見ながら食べる牛乳プリンが細やかな楽しみだったのだが、こいつの机の前には空の牛乳プリンのゴミが4つ。
しかも、全て違うスプーンで食べるという所業まで見せている。
「それにしても、無愛想な部屋ね、一人暮らしなの?」
「ちょっと高校が遠かったから、ここの部屋を借りたんだよ」
「へー、女とか呼び放題じゃない」
「呼ばねーよ」
僕は若干怒り気味で彼女の質問に答える。
ブレザーをハンガーにかけ、手を洗い、彼女と対角になる位置に、腰を落とす。
「で、なんでいるんだ?」
「親睦会よ、親睦会」
「親睦会?」
「うん。だって私たちってさ、まだ出会って半日もたっていないじゃない?
だから、仲を深めて『ラブコメ』について語り合うって散弾よ」
「そんなの明日やればいいだろ」
「あとは今日夕飯がないから食べさせてほしいなって━━」
「それが本命だろ」
ヒナミはプリンを頬張りつつ、吹けもしない口笛をする。
「それにしても、見渡す限りのラノベとかないわね」
「もう一部屋あって、そこに大量にある」
「さすがね…」
「それは褒めてるのか?」
少し沈黙が続いた後、慌てて話題を変える。
こいつはさっき会ったばっかの奴と沈黙が平気なタイプなのか。
「そ、それで。ラブコメをするってなんだよ
もしかして僕が君と付き合うのか?」
「そんなわけないでしょ、馬鹿なの?」
僕を小ばかにして鼻で笑うヒナミ。
僕が言えた試しではないのだが、だから君は友達が少ないんじゃないか?
「じゃあどうするんだよ」
「んーとね。部活作って、部員いて、海行って花火みてぇ」
「つまり、テンプレだな」
「そうそう。コテコテのやつ。」
そういうのは嫌いじゃない。
今はなんか億劫だな感だしているけど、正直楽しそう。
憧れてたやつ。
「じゃあまずは何からするんだ?」
「んまぁ、仲間集めかしら」
「なるほどな、何人くらいが理想だ?」
「…さっきから質問ばっかね、友達いないでしょ」
「━━━!」
「ごめんなさい、冗談で言ったつもりよ。
まさかぐうの音も出ないなんて思いもしなかったわ。」
「と、とりあえず掲示板に部員募集の張り紙を張っといたらどうだ?」
「掲示板?」
「うちの学校には生徒会管理の生徒が自由に使用できる掲示板があるんだよ」
「うん、明日8時40分に教室で待ってるわね」
◇
約束の時間より少し過ぎた。
できるだけ教室に行きたくないので、遅刻ギリギリを狙っていくのが僕の流儀だったので早く来るのは初めてだ。
居なかったらどうしよう。
僕は教室に入る。
朱屋敷陽七海はそこにいた。
「ごめん待った?」
「『ううん、今来たとこ』なんて言わないからね。結構待ったからね。」
「…ラブコメしたいんじゃないの?」
「いいから、早く掲示板に案内して」
こいつ、僕と仲良くする気あるのかな。
ひょっとして、掲示板の場所に行ったら大量の陽キャがいて集団リ〇チに会うとかないよな…
僕は後ろにいる陽七海と死角に気を付けながら掲示板へ向かう。
朱屋敷陽七海
可愛いというより可愛らしい。
戦闘の才能はアリ。
趣味は趣味の合わない人と意見を共有することらしい。
(ラブコメ布教してるだけ)




