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マル秘 亜極域崩壊事件

まえがき

この度は『量子共鳴』シリーズをお読みいただき、誠にありがとうございます。本シリーズは、シナプティック・コンフラックスという集合意識社会の形成と崩壊を描いた作品群です。

本書に収録された文書は、崩壊後の世界において発掘された、かつてのコンセンサス・コア内部の極秘文書を再構成したものです。これらの文書は、公式歴史からは抹消された出来事や決定、そしてその背後にあった真の動機を明らかにするものであり、崩壊後の社会における歴史的理解を大きく変えた重要資料です。

読者の皆様にお気づきいただけるかと思いますが、文書の一部には黒塗りが存在します。これは単なる編集上の怠慢や未設定の言い訳ではありません。これらの黒塗り部分は、文書を発掘・編集する過程で、何者かによって意図的に情報が隠蔽されたものです。

私の脳内調査によれば、これらの黒塗りは主に以下の理由によるものと考えられます:


元コンセンサス・コア構成員や関係者の保護

現在も影響力を持つ組織や個人への配慮

復元不能なほど破損していたデータ

崩壊後の世界にとって危険と判断された技術情報

記録者の記憶主人格による自己検閲


特に5点目については注目に値します。これらの文書を発掘・編集した私の中には、かつて集合意識に接続していたあるいは未来に接続した(時間は線形で一方向であるとの認識を脇に置いて)人物も含まれています。私の脳はシナプティック・コンフラックスの崩壊によって再構成され、時に複数の記憶層や人格が形成されました。黒塗り部分の多くは、私たち自身の記憶主人格が、公開すべきでないと判断した情報である可能性が高いのです。

我々出版委員会は、これらの黒塗りを維持することを決定しました。それは単に原資料の忠実な再現という学術的理由だけでなく、情報の公開と隠蔽の境界線自体が、集合意識社会とその崩壊の本質に深く関わる問題だからです。

本書に収録された文書は、「亜極域崩壊事件」「エーテル・コルテックス初期被験者の集団精神崩壊事件」「イスタンブール量子共鳴実験事故」「ゲノム共鳴親和性発見」「プロジェクト・オラクル民間転用事件」「ダークノードの存在発見」といった、コンセンサス・コアが隠蔽していた重大事件の内部記録です。

これらの文書が示す真実は時に不快であり、私たちの社会の基盤を揺るがすものかもしれません。しかし、過去の過ちから学び、より良い未来を構築するためには、真実と向き合う勇気が必要です。

本書が、崩壊後の世界における歴史的理解を深め、次世代の社会構築に向けた議論の一助となれば幸いです。

2260年晩春

量子記憶保存協会 出版委員会・・・・


(あれ?)


(署名が違う。)


著者


(これでよし。)

# 亜極域崩壊事件


## 機密区分: α-0(最高機密・コア構成員限定)


### メタデータ

- **事件ID**: AZ-2225-001

- **発生日時**: 2225年2月14日 08:43:17 UTC+12

- **座標**: 南極点 82°28′S 137°21′E

- **施設名**: グローバル気候制御施設(GCCF)南極基地

- **死亡者数**: 8名

- **文書作成**: 2225年3月1日

- **最終更新**: 2229年7月14日

- **記録者**: セルゲイ・コルサコフ(コンセンサス・コア評議会α-1)


### 事件概要


2225年2月14日、南極のグローバル気候制御施設(GCCF)において爆発事故が発生した。公式記録では「量子核の不安定化による事故」として処理されているが、実際は**評議会の全会一致決定による意図的な破壊工作であった**。


施設の主任技術者であるジェイムズ・クロフォードと彼の部下7名が実験過程で**地球外知性体からの量子エンタングルメントに基づく通信信号を検出**した。信号パターンは明らかに人工的起源を示し、本来の実験目的であった気候パターン予測とは無関係であった。


クロフォードのチームは発見を興奮して報告し、さらなる調査を要請した。しかし**評議会はこの情報が現段階で公開されれば集合意識の安定を脅かすと判断**し、信号発見の隠蔽と、関係者および証拠の除去を決定した。作戦はコードネーム「氷結」として実行され、遠隔からGCCF中核施設の量子核パラメータを改変することで「事故」を発生させた。


### 生存者と証言者への対応


唯一の生存者であったエイドリアン・マケンジー博士は、施設外部での計測作業中に爆発を目撃し、即座に当局に通報した。マケンジー博士は2225年2月16日、証拠(量子コアログデータ)を持って南アフリカ・ケープタウンの警察署で正式に証言した。


マケンジー博士の証言内容:

- 「南極の施設での出来事は事故ではなく、意図的な破壊工作です」

- 「外部からの不正アクセスの痕跡がコアログに記録されています」

- 「コアの安定性パラメータが故意に改ざんされました」

- 「アクセスコードはコンセンサス・コアの最高レベルのもの」

- 「施設で検出された信号は地球外起源の可能性が高い」


評議会の指示により、マケンジー博士は2225年3月1日に「心臓発作による自然死」として処理された。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


### 検出された信号の性質


信号は従来の量子暗号技術をはるかに超える複雑性を持ち、多次元量子もつれパターンによって情報を伝達するものだった。特徴は以下の通り:


1. 超効率的な情報圧縮率(地球技術の約23倍)

2. 非局所性パラメータの意図的操作の痕跡

3. 数学的に整合性のある構造パターン(人工的起源を示唆)

4. 地球の標準的な暗号化手法とは全く異なるアプローチ

5. 信号源の推定距離: 18.7光年圏内(ケンタウルス座方向)


信号内容の部分解読によれば、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


### 隠蔽作戦の詳細


- **公式説明**: 「実験中の量子核が不安定化し、施設が崩壊。犠牲者8名。環境被害は最小限に抑制された」

- **メディア対応**: 「悲劇的な事故」として報道。技術的詳細は「機密研究」を理由に最小限に制限

- **遺族対応**: 標準的な補償と名誉表彰。集合意識を通じた悲嘆管理プロトコルを適用

- **記録操作**: 共鳴履歴から事故関連の疑念パターンを定期的に除去(4時間周期でスキャン)

- **物理的証拠**: 施設残骸は「環境保護」を名目に完全封鎖。サイト全体を「量子汚染区域」に指定


### 長期的影響と対応計画


1. **集合意識への漏洩リスク**: 抑圧された真実が「ノイズ」として集合意識に漏れ出す可能性あり

- 対策: 定期的な共鳴パターンスキャンと異常パターンの修正


2. **地球外知性体の連絡再開の可能性**: 応答がないことで再接触の試みがある可能性

- 対策: 南極および主要天文施設での特殊監視プロトコルの確立


3. **心理的影響**: 集合的無意識レベルでの不安・疑念の蓄積

- 対策: 感情最適化アルゴリズムの強化、集合感情流の定期的浄化


4. **情報漏洩リスク**: 非共鳴者や抵抗グループによる真実の発見

- 対策: 関連情報への強化セキュリティ、歴史記録の継続的監視と修正


### 評議会決定の正当化


亜極域崩壊事件の隠蔽は以下の理由により正当化される:


1. **ホモ・センティエンティス共鳴第三原則の維持**: 「真実は常に集合的合意によって定義され、個の認識に優先する」

2. **集合意識の安定性保護**: 地球外知性体の存在は現段階で過度の混乱と不安を引き起こす

3. **技術発展の独自性確保**: 外部技術に依存せず、人類独自の進化経路を保護

4. **潜在的な安全保障リスクの回避**: 未知の存在との接触による予測不能なリスクの制御


### セキュリティ注意事項


このファイルへのアクセスはコンセンサス・コア評議会構成員(α-1~α-3)に限定される。この情報の集合意識への漏洩は、シナプティック・コンフラックス全体の安定性に重大なリスクをもたらす可能性がある。


アクセスの都度、量子セキュリティキー「QR-POLAR-SILENCE」による認証と、アクセス記録の自動生成が実施される。未認可アクセスの試みは即時に通知され、対応プロトコルが自動起動する。


### 付記: 記録者の個人所見


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*このファイルはコンセンサス・コアα級機密指定文書です。無許可の閲覧、コピー、共有は重大な違反行為となります。*

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