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私は、悪魔だ

 皆に謝らなくちゃいけない。

 この状況、実は超常現象でも、エイリアンの仕業でも座標ずれでもない。

 私は、悪魔だ。


 ふと空を見れば、そこには、H型鋼材を適当に溶接して作った、禍々しい祭壇があった。

 その祭壇に据え付けられた物体こそ、私が作り出した悪魔の力その物だった。

 それがこの状況を作り出し、市内から私以外の人間を追いやるに至っていた。


 その悪魔の名前をanfoという。硝酸化アンモニウム4トン、燃料400キロ、過酸化アセトン120キロで更生されたその化物は、ダイナマイト換算で3トンの爆発力に匹敵する。


これは半径十キロの範囲で家屋を倒壊させる恐れのある爆弾である。なんだそれは、と思うだろう。


 防災無線が鳴って、警察から電話に出るようにと命令があった。電話に出ると、女の人の声で

「もう、止めたらどうですか?」

 面食らう。何となく、怒鳴られると思っていたのだが優しくさとされた。

「交渉しましょう。snsを復帰してください。それから、フェラーリを一台、町の真ん中に据えて、鍵を座席の上に」

「は?え?」

「私が満足すれば、起爆装置をお渡しします。」


 それだけ言って電話を切った。


 もし、彼らが過去を忘れない人であれば、私が本気なのは承知のことだろう。


 これより前に、警視庁を爆破した。建物の構造体である鉄筋コンクリートに互い違いに仕掛けた過酸化アセトン200キロで足の骨を折るみたいに左右に揺さぶった。

 それは大変な光景だった。

 足を失った巨人は自重に耐えかねて土煙を上げながら地面に倒れた。

 瓦礫に体を挟まれた人や、手足を失った人間が、呻き声を上げながら歩き回る様はさながら地獄のようである。


 2時間後に到着した救急隊を巻き込む形で2回目の爆破を行った。勿論、戦いの基本とは波状攻撃であり、その本質は相手の心を徹底的にくじくことにある。

 一度目の爆破で発生した瓦礫が、二度目の爆破では散弾のように飛び散って人を肉片に変えた。

 今回の警視庁爆破事件に当たっては、主要な12の県からレスキュー隊と医師が集まっていた。それらは既に刈り取られ、警察の中枢、および、関係者450名あまりを失う結果になった。それからは随時、警察署、交番と爆破して、ついに日本が頼れるのは自衛隊だけとなった。


 自衛隊はまず、ヘリコプターからの監視を開始した。人工衛星からの写真は最長1時間半かかり、かつ雲の影響を受けるためである。

 片っ端から情報を集めた彼らが発見したのはTNT 換算で推定6トンもの爆発力を持った悪魔の姿だった。


 自衛隊には爆弾処理の専門家がいる。かつての戦争からの負の遺産、不発弾処理に命を懸けている方々のだ。

 彼らに悪魔の正体が過酸化アセトンだと告げると、民間人を待避させた。

 過酸化アセトンは爆発力も高ければ、その不安定性も高く、また、爆発に先だって衝撃波の起こる爆薬だ。


 その用途とは起爆剤。つまり、それらは始まりにすぎないのだ。


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