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「フラ子さんのご趣味は!?」
「ムッ、ムッ」
「岩石砕きって教えてやりなよ」
「あとは投げ技も好きだよねー」
代わりに答えるドラ子とウル子の情報を研孝が熱心にメモする。
「岩石砕きと投げ技!? ぼくの趣味と全然、合わない!」
何やらショックを受けている研孝の隣に、サラサラヘアーの美少年が駆けつけた。
「どうした、研孝! まさか女子を誘ってるのか!?」
カッコいいポーズで、歯をキラリと光らせる。
ドラ子が負けじとギラッと牙を輝かせた。
「ぐはっ! ま、眩しい! 学園No.1イケメンの僕のビューティフル・トゥースを上回るとは! 何者だ!?」
「誰よ、このバカ?」
「何だか、面白ーい」
ドラ子とウル子の反応に、美少年がカッコ良く髪をなびかせる。
「僕は麗良男。僕の美しさに魅了されない女子は居ないのさ!」
「目障りだから、血を吸い尽くしてやるか」
「やめなよー。死んじゃうから」
と、そこにさらに1人のかわいい系男子が現れた。
「かわいいー!」
大声をあげた男子が、ウル子に抱きつく。
ワシャワシャと頭と顎を撫でだした。
「アォーン!」
ツボを得た手つきにウル子が喜ぶ。
「ボクは模歩好太! かわいい動物が大好きだよ!」
「この子、撫でるの上手ー!」
「まったく。皆、男にうつつを抜かして…任務を忘れないでよ!」
ドラ子が呆れた。
「君には僕が居るじゃないか、ハニー。この美しすぎる僕が!」
「今すぐ干物にするか」
「フラ子さん、他の趣味はありますか!?」
「ムムムッ」
騒いでるうちに休み時間が終わった。
昼休み。
男子3人のマークをかわしたフラ子、ウル子、ドラ子はマジョンヌの命じた任務に取りかかった。
「マジョンヌ様のお母様の魔力反応は校長室の中からか」
ドラ子が舌打ちする。
「面倒ね。ウル子、中に人は?」
「何も聞こえないよ」
ウル子が両耳をピクピクさせた。
「よし、入ろう」
ドラ子が扉を開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。
「フラ子」
「厶」
「全力で壊しちゃダメよ。加減して」
「厶ッ」
フラ子がそっと扉を引くと鍵が壊れ、扉が開いた。
3人が中に忍び込む。
室内には机とソファーが2台、そして本棚があった。
3人が魔力を探す。
「これだわ!」
ドラ子が声をあげた。
本棚の1箇所に、小さな箱が置いてある。
ドラ子の指が、それに伸びた瞬間。
(待って!)
3人の頭の中に、マジョンヌの声が響いた。
(お母様の魔力は、この中ですよね?)とドラ子。
(そうよ。でも、その箱にも魔法がかかってるわ)
(これにも?)
(ええ、正当な手続きを踏まずに魔女が手に入れれば、中の魔力が消失するようね)
(そんな!)
ドラ子が悔しがる。
(どうします?)とウル子。
(今は諦めるしかない。その箱の中身について聞き込みしてみて)
(面倒だわ…)
マジョンヌの新たな指示に、ドラ子がため息をつく。
(何か言った?)
(い、いいえ! 任務を続行します!)
3人は校長室を出て、教室に戻った。
放課後。
女子3人は男子3人と教室で話していた。
「校長室の箱? ああ、代々伝わるエメラルドペンダントですね!」
研孝がテンションを上げる。
「ペンダント?」とドラ子。
「はい、貴重な物らしいです。校長先生が大切にしてます」
「そのペンダントをほんの少しでいいから借りたいのよ」
「それは難しいかもね」
好太がウル子の顎を撫でつつ、表情を曇らせた。
「あれは滅多に外に出さないから」
「そうだ!」
急に研孝が大声を出す。
「3日後、この学園でダンスパーティーが開催されます」
「ダンスパーティー?」
「はい。毎年、この時期に我こそはという学園の男女がペアになって出場します。その中から選ばれた優勝者が、あのペンダントを1日だけ身に付けられるんです! その人は運が良くなるという噂も聞きます」
「いいわね!」
ドラ子が牙を輝かせる。
「それこそ、正当な手に入れ方だわ」
「え? じゃあ、あたしたちがダンスパーティーに出場するの?」
「そうよ」
ウル子の問いにドラ子が頷く。
「そういうことなら!」
それまで興味なさげにしていた良男が、急にカッコいいポーズを連発しだした。
「この僕に! 任せたまえ! ドラ子ちゃんとのペアで! ぶっちぎり優勝して見せるよ!」
「こいつの首をぶっちぎってやろうかしら」
「やめなよー、死んじゃうから」
「フラ子さん!」
研孝がフラ子の両手を握った。
「ムムッ!」
「ぼくとペアを組んでください!」
「ムーーーッ!」
フラ子の顔が真っ赤になり、両耳から蒸気がシューッと噴出する。
「フラ子ー!?」
「フラ子ちゃんが壊れちゃったー!」
ドラ子とウル子がパニクった。