ショートホラー番外編「令和メリーさん」
学校の友人から巷で噂になっているという怪談話を聞いた。
メリーさんの呪いというものだ。
どこかで聞いた事あるなと思っていたら親が若い頃にもそういうものが流行っていたらしい。
電話が鳴り、メリーさんという女の子が少しずつ近づいてくる。
だったら出なければいいのに、と無粋なツッコミをしてしまった。
鏡を見て3回『メリーさん、メリーさんお越しください』と言うと呪われるらしい。
何だかド定番の怪談だ。
鏡に向けて何回か同じ言葉をつぶやくというのは昔からあるパターンじゃあないか。
とは言え暇つぶしに鏡に向かって言葉を唱えてみる。
当然の如く何も起こらない。
「くだんないなぁ」
そんな事を考えながら数学の宿題を解いていると私のスマホが鳴る。
誰だろうか?
画面を見ると『不在着信』の4文字。
「無視しよ……」
こういうものは無視するのに限る。
勧誘だったりいたずらだったりでろくなことは無いから。
ピッ!
「あれ?」
気づけば机に置いたはずのスマホが手にあった。
ロックは解除され、『通話中』の文字が。
「……な、何これッ!?」
私はロックを解除した覚えも応答した覚えもない。
それなのにいつの間にか手が動いて通話を始めていた。
「はい……」
バカな事と思いながらも私は呼び掛けてしまう。
「もしもし、私メリーさん」
「――ッッ!!!?」
一瞬にして背筋に氷水を淹れられた感覚に陥った。
まさか、本物!?
「今、あなたの家に向かっているの」
マズイ!マズイ!
何か言おうとするが通話が切れてしまった。
「ウソでしょ?」
心霊現象など信じていなかった。
だが今起こった出来事はまさしく……
再度、スマホが鳴る。
私は応答を慌てて拒否するが……
「もしもし、私メリーさん」
拒否したはずだ。
それなのに何故か応答している。
「今、あなたの家に向かって……」
『次の信号を左折です』
何か聞いた事のある電子音声の後、通話が切れる。
「……………」
え、何今の?
再度スマホが鳴る。
「もしもし、私メリーさん。待っていてね、すぐに着くから……」
『新しいルートを検索します』
「あ……」
通話が切れる。
「今のって……カーナビだよね?」
どうやら令和のメリーさんは車を運転するらしい。
親の時代に少女だったのだしそういうものなのだろうか。
しかもルートを外れて再検索されていた。
最近の道は入り組んでいるし難しいのかもしれない。
そもそもどこからやってきているのだろう。
スマホが鳴る。
「私メリーさん……」
『その先、第2神明道路を……』
ガチャ。
通話を切った。
高速道路に乗るらしいので危ないと思ったからだ。
更にしばらくしてスマホが鳴る。
「私、メリーさん。もうすぐよ、もうすぐ……」
ウーーーーー!!
電話越しにサイレンの音が聞こえた。
『前の車、止まりなさい』
どうやら電話しながら運転していた事で警察に止められたらしい。
「えーと……お大事に」
通話を終え、電源を落とした。
沈黙……
「ごめんね、メリーさん」
私は天井を見ながらメリーさんに謝るのだった。
運転しながらふと思い浮かんだネタです。
もしかしてもうやってる人はいるかもですが……