ランプの精霊と佐藤君 中編
ある日、苗字が佐藤の三人の少年がある場所に集められていました。
この三人には苗字以外で共通する点がありました。
三人ともここに集められる前日に願いを叶えてくれる精霊が入っているランプを拾っていたのです。
「なんでもいいので良い結果を出したいです。」
「人気者になってみんなにチヤホヤされたい。」
「…人前で堂々と話せるようになりたい。」
願いの内容はそれぞれバラバラでしたが、三人ともランプの精霊に願いました。
そして、ランプの精霊は願いを叶えました。
「と、いうわけであなた達は今から女装をしてアイドルになってもらいます。」
「いやなんでそうなる!」
真っ先にランプの精霊にツッコミを入れたのは後にSHUGAR'sのメンバーの一人、SHUGAR'sのムードメーカー、ブラウンとファンに呼ばれる事になる佐藤君。
「なんでもいいとは言ったけど、アイドルはともかく女装はしたくないな。」
苦言をこぼしたのは後にSHUGAR'sのメンバーの一人、SHUGAR'sのリーダーであり気配り上手、ホワイトとファンに呼ばれる事になる佐藤君。
「ぼ、ぼぼ僕には、無理です。」
小さな声でありながらもアイドルになるのを必死に拒否しようとしているのは後にSHUGAR'sのメンバーの一人、SHUGAR'sの知的と眼鏡担当、クリアと呼ばれる事になる佐藤君。
現在、三人の佐藤君達がランプの精霊に向けてそれぞれ不満拒絶の言葉をぶつける。それに対してランプの精霊はにっこりと微笑む。
「あなた達に拒否権はありませんよ。だってもうすでにライブ会場の手配は済ませてありますから。」
「「「えっ。」」」
「さぁ、アイドルの名前を決めたら早速練習をしますよ!」
「「「えぇっ!」」」
こうして、SHUGAR'sはランプの精霊によって無理矢理結成された。
◆◇◆◇◆
そんなこんなで女装をしてアイドル活動をする事になってしまった佐藤君達。ランプの精霊に対する愚痴を言い合ったおかげで三人はすぐに仲良くなった。
かなり不本意な形でSHUGAR'sとしてアイドルになってしまったが、自分達を応援してくれるファンの人達をがっかりさせないためにも練習を頑張った。辛くて何度も挫折しそうになったが、仲間同士で支え合い何度も乗り切ってきた。その度にSHUGAR'sの結束は強くなっていく。
その甲斐あってSHUGAR'sは急成長し一気に人気アイドルとなった。
三人の女装姿の完成度が高いため、ほとんどの人達が佐藤君達の事を女の子だと完全に信じていた。
SHUGAR'sのリーダー、ホワイトは優しい笑顔でファン達を和ませブラウンとクリアを支える。メンバーの中で歌唱力が飛び抜けており、ホワイトのソロパートを聴いて感動のあまり涙を流したファンが数多くいた。
メンバーの中で一番アイドル活動を嫌がっていたブラウンはなんだかんだで真面目にアイドル活動を取り組み、練習を行った。特にダンスが得意でライブの時にはキレのあるダンスをファン達の前で披露し、ファンの人達を喜ばせた。
人前で話すのが苦手なため口数の少ないクリアだが、知的な雰囲気と知識豊富な一面が合わさってクイズ番組に出演した時は大活躍した。
人気が上がりSHUGAR'sとしての活動は絶好調、だがその分トラブルも数多くあった。悪質なファンやアンチからの嫌がらせや誹謗中傷だけでなく、SHUGAR'sのストーカーがいる事が発覚。佐藤君達はマネージャーを務めているランプの精霊になんとかして欲しいと頼んだため、嫌がらせや誹謗中傷は収まったが、ストーカーに関しては佐藤君達の気のせいとして片付けられた。
ランプの精霊に対してかなりの不満とストーカーへの恐怖はあったが、佐藤君達はファンの人達を悲しませないよう、せめて人前では笑顔を絶やさないようにしようと努力した。
が、数々の困難を乗り越えてきた佐藤君達でもアイドルとして乗り越える事ができない事がやってきた。
佐藤君、ホワイトが声変わりしてしまった。
佐藤君達はまだまだ成長途中の少年達。SHUGAR's結成の時は佐藤君達は声変わりをしていなかった。
声変わりは大人への第一歩。
SHUGAR'sとしては引退への第一歩。
佐藤君、ホワイトの声変わりをきっかけに佐藤君達は今後の事を話し合った。
佐藤君、ホワイトはこのまま活動を行えば自分が男である事はいずれバレる。ファンの人達の夢を壊さないためにも引退するべきだと言う。
佐藤君、ブラウンはアイドル活動の最中で身につけたダンスが気に入り、歌や会話術ではなくダンスに専念したいと思うようになったためブラウンも引退を考えていた。
佐藤君、クリアはSHUGAR'sとして活動したおかげで人前で話をする事に慣れた事と佐藤君達に出会えて良かったと思っている。しかし、やはり女装をしてアイドル活動を行うのは恥ずかしいと思っているため引退を考えていた。
三人が話し合った結果、SHUGAR'sは解散すべきだという結論になった。
絶対に猛反対されると三人とも予想したが、マネージャーであるランプの精霊に解散する事を伝えようと探したり、連絡をとってみたがこの日に限ってランプの精霊が見つからない。いったいどこに行ったのだろうと思っていると、たまたまつけていたテレビのニュースを見て三人とも驚きで目を見開いた。
『続いてのニュースです。今日未明、未成年に対して猥褻行為を行い、人気アイドルのストーカーを行った年齢不詳の女性ランプの精霊が逮捕されました。警察の調べに対してランプの精霊は見守っていた、やましい事はしていないと供述しているようです。』
テレビに映し出されたのは佐藤君達の願いを歪な形で叶え、そして佐藤君達をSHUGAR'sとしてアイドル活動を行わせたランプの精霊だった。
「ストーカーはお前だったのかよ!」
テレビのニュースの内容に思わずツッコミを入れたのはブラウン、佐藤君だ。