ランプの精霊と佐藤君 前編
佐藤君はある日、魔法のランプを拾いその中にいた精霊を呼び出してしまいました。
「私を呼び出したのはあなたですね。」
「え、え? なにこれ。」
突然佐藤君は精霊の出現に驚きました。
精霊の方は佐藤君のような反応を今まで見てきたのか慣れた様子で自分の仕事を全うしようとします。
「私はランプの精霊。ランプを見つけられた褒美としてあなたの願いを私が達成できる範囲でひとつだけ叶えましょう。」
「え、ひとつ?」
それを聞いて、ランプの精霊のおとぎ話を知っている佐藤君は思った。三つではないのかと。さらに、叶えられる願いはなんでもではないのかと。
佐藤君の考えを察したランプの精霊は言い添える。
「ランプの精霊でも役職というものがありまして。私の立場を会社員で例えると入社してから数年が経った一般社員です。なので、叶えられる願いの限度が他の方達と比べるとかなり狭いですね。」
「ランプの精霊にもそういう社会の仕組みがあるのか。」
思わぬところでランプの精霊達の実態の一端を知った佐藤君。
しかし、制限があるとはいえ願いを叶えてくれる事には変わりありません。
「質問はあり?」
「はい。質問には制限はありませんので分からない事は遠慮なく聞いてください。」
「じゃあさ。もし俺が大金が欲しいって言ったらどのくらい貰えるんだ?」
「そうですね。」
ランプの精霊はどこからか電卓を取り出しボソボソと何かを呟きながら電卓をいじると電卓に表示された数字を佐藤君に見せました。
「多く見積もってもこのくらいですね。」
「あー。こんなものか。」
表示された数字が金額だとするとその額は一般社員の平均月給の三ヶ月分だ。大金ではあるが、なんか違うと佐藤君は思い大金を願う事は一旦保留する事にした。
他に何か叶えてもらいたい願い事はないかと考え、そして思いついた。
「なぁ、SHUGAR'sに会えるか?」
「SHUGAR'sとは、アイドルユニットの?」
「そう、そのSHUGAR's!」
かつて、SHUGAR'sという名前の三人組アイドルのユニットが活躍していた。
可愛らしい個性的な少女三人が歌って踊る姿は多くの人達を魅了してきた大人気のアイドルグループ。
しかし一年前、人気絶好調であったにもかかわらずSHUGAR'sは解散してしまった。解散コンサートをした後、誰もSHUGAR'sの少女達のその後を知らない。
佐藤君もSHUGAR'sのファンであり、SHUGAR'sの引退を嘆き悲しんだファンの一人だ。
「会って話をする事はできるか?」
もしかしたらSHUGAR'sに会えるかもしれないという期待を持ち、ランプの精霊にそう聞くとランプの精霊は少し考え込む素振りを見せる。
「…少々お待ちを。」
そしてどこからか携帯電話を取り出して誰かと連絡を取り始めた。
そして話し終えたのかランプの精霊は通話を切り携帯電話をしまうと佐藤君に向き直る。
「何日かお時間をいただければその願い叶えられますよ。」
「あ、今すぐではないんだ。」
「えぇ。アポをとったり場所の手配などがありますので。」
「そうなんだ。てっきり魔法でぱぱっとやるものかと。」
「それができるのはもっと上の人達なので。」
とはいえ時間はかかるがSHUGAR'sの子達に会える。
佐藤君の願いはSHUGAR'sに会いたいに決まった。
◆◇◆◇◆
そして数日後。
ついにSHUGAR'sの子達と会える日。精一杯身だしなみを整えた佐藤君は緊張で胸を高鳴らせていました。
会う場所は飲食店の広い個室席。ランプの精霊がSHUGAR'sの子達を連れてくるまでの間、佐藤君はそこで待っていました。
「お待たせしました。」
ランプの精霊が個室に入ってきました。
「SHUGAR'sの皆様をお連れしましたよ。」
ランプの精霊のその言葉に佐藤君は勢いよく立ち上がります。
ついに、佐藤君は大好きなアイドル達に会えるのです。期待と興奮を心中に抱えながら、佐藤君はランプの精霊の後に入ってくるSHUGAR'sの子達の方を見ます。
「初めまして。」
「どうも。」
「…こんにちは。」
ランプの精霊の後に入ってきたのは佐藤君と同い年くらいの少年三名。それぞれ挨拶をした後、佐藤君の向かい側の席に座ります。ランプの精霊は佐藤の隣に座ります。
佐藤君は目の前に座る三人の少年を見て、目を閉じて、もう一度三人の少年達を見た後、小声でランプの精霊に聞きます。
「あの、ねぇ。あの人達誰?」
「だれって、SHUGAR'sの皆様ですよ。」
「いや、どこからどう見ても男にしか見えないんですけど。」
「そりゃあそうですよ。SHUGAR'sの皆様は全員、男ですよ。」
「…えっ?」
「一部の人達を除いて男である事を隠して女装してアイドル活動をしていたようですよ。」
衝撃の事実に佐藤君の思考が停止した。
硬直してしまった佐藤君に佐藤君から見て右側に座っている少年が話しかけてきた。
「えっと。そうです。こう見えて僕達、元はSHUGAR'sのメンバーでした。驚かせてしまってすみません。」
「…あっ! いえいえいえ! こっちこそすみません!」
優しそうな少年の言葉に佐藤君は我に帰ります。
予想外の事実に驚いたが、呼び出したのはこちら側。このままはいさようならは大変失礼。
そう思った佐藤君はとりあえず、自己紹介をしようと言い、まずは自分の自己紹介をした。その後、三人も佐藤君のように自己紹介をした。
「佐藤です。」
「佐藤だ。」
「…佐藤。」
全員、佐藤君と同じ苗字だった。
三人の苗字を聞いてある考えに行き着いた佐藤君は恐る恐る三人に確認した。
「あの、もしかしてSHUGAR'sの名前の由来って三人が同じ苗字だったからそうつけた、んですか?」
「「「うん。」」」
意外と安直な命名理由に佐藤君は思わず脱力してしまった。




