エピソード7酒
エピソード7 酒
翌日から俺はずっと光と一緒だ。
仕事あいだもずっと横にいる。
あまり聞いてはいけなさそうな会話の際は大きい耳を折りたたむ。
会議に会議に書類に書類
正直 飽きた…
本当に退屈なときは光の膝で寝てしまう。
一生懸命仕事をしている人の横で寝たくは無いが本当に退屈なのだ。
なのに傍を離れようものならどこに行くのか聞かれる。
トイレだけ唯一自由に行けるところだ。
そして寝るときも一緒になった。
これがまた大変だ。
「何読んでるんだ?」
「ん?商学の本だよ」
今は夜。
俺は寝る直前まで本を読む習慣がある。
ケンに言われた本を読みきらなくてはならない。
ただこの世界に電気なんてものはない。
油に火を灯している。
部屋は薄暗い。
変なところだけ不便だ。
「なになに商学の本…?なにか売りたいものでもあるのか?」
「いや、ないけど…ケンにオススメされたから」
「ケンってこの前言ってた友達か?」
「ん、そうそう」
本から目を話さずそう答える。
すると後ろから手が伸びてきて本をパタンと閉じられてしまった。
「えぇ!ちょっと…!せめてシオリ挟ませて」
慌ててページを探すがどこまで読んだのかわからなくなってしまった。
そして本ごと取り上げられてしまった。
「もう読書は終わりだ」
どこか不機嫌そうだ。
もしかしたから光はケンが嫌いなのかもしれない。
そういえばケンと遊んでると言ってから出かけるなとか言われたっけ。
次からできるだけ名前を出さないようにしようと決心する。
すると光がふっと息を吐き、部屋の灯りを消した。
「えぇ… もう、寝るの?」
いきなりの暗闇に目がなれないまま後ろにいるであろう彼に問う。
「いや、明日は休日だし まだ夜もそんなに更けていない。だから今日は夜ふかししよう」
「夜ふかし…?」
部屋の灯りは消えても案外部屋は明るかった。というのも月が出ているからだ。
真っ赤で大きな月が出ている。
そういえばこのお城に来たときもこんな月だったな…。
少し懐かしくなって月を眺めていると。
光は瓶を持ってきた。
この前の薬とは違う大きな瓶。
「お酒?珍しいね」
物珍しそうに瓶を眺める俺に光は尋ねる。
「お前はチビだから少しにしとけ」
「年そんなにかわらないだろ…!飲めるって」
小さいからってすぐからかうんだ。
ムッとする俺を見て光は笑う。
「わかったわかった 一緒に飲もう」
小さな容器にお酒を注いでくれる。
正直な話をすると俺は酒を飲んだ記憶がない。
もらったお酒を暫く眺める。
透明で月の明かりを反射してキラキラしている。
おそるおそる酌に口をつけてそれをすこし飲んでみる。
「あれ思ったより美味しい!」
飲めば飲むほど頭がぼーっとして体がポカポカして喉が熱くなる。
頭が少しくらくらして心地いい。
その感覚が気持ちよくてつい飲みすぎてしまった。
壁にもたれかかってお酒を楽しんでいる光の袖を引っ張る。
「こぉ…!」
そんな俺を見て光は驚く
「顔真っ赤じゃねーか 今水持ってくるから」
水を取りに行こうと立ち上がる光の袖をつかんだ。
「やだぁいかないでっ つきあかりが赤いだけらから」
「…」
「こぉ…」
そのまま抱きしめた。
光に体重をかける。
鼻先が触れ合うような距離だ。
光の着物からはとてもいい匂いがする。
着物の素材もとてもいいのだろうつい頬をスリスリしてしまう。
ふと、光を見上げるとその瞳には俺が映っている。華麗な深い紅色の目だ。
「サク」
ふさふさと俺の頭を撫でる声に
気持ちよくなって頬に手を伸ばした。
そして唇をあわせる。
「んぅ…っ」
その後なんども短くキスをする。
少しずつ呼吸が乱れていく。
光もそれに答えるようにキスしていく。
ちゅっちゅぅちゅ…
「ぷはっ…今日はやけに積極的だな」
「こぉすき…」
「いつもイチャつくの嫌がるくせに…毎日でも酒飲ませたくなる」
「嫌じゃない…ぃ 光ときすするの気持ちいぃからぁ…」
光は少し目を見開いてぎゅっと抱きしめた。
「お前…明日記憶とんでたら許さな…」
俺は唇を光の頬へそして首筋まで滑らせていく そしてそのすこし汗ばんだ首筋をきつく吸い上げた
ちゅっ
その赤い跡は真っ白な光の首筋によく映える。
「えへへうまくついた」
光は自分の上にまたがってへらへらと笑う
「お前…どこでそんなこと…」
光は呆れたように前髪をサラリとかきあげた。
「いやだ…?」
「嫌じゃない もっとつけて」
そう言って首を差し出してくる。
何故かそれが嬉しくて俺はまた光の首筋に顔を埋めた。
頭はボーッとする。
ちゅちゅと何度も音が部屋に響く。
「光…」
「どしたサク」
俺が首筋にキスを落とす間も光はさらさらと髪を撫でてくる
「…な…んか」
「んー?」
「歯がかゆい…」
歯がかゆい。何かを噛みたい。俺は光の首筋に歯を立てた。
「…っ」
痛みに一瞬光が顔をしかめたが、俺は何度も甘噛した。
光の着物の襟を引っ張って肩を出す。
首筋から肩へ俺は甘噛をしていく。
光は俺の名前を呼ぶと頬に手を当てて顔をぐっと近づけて
そのまま何度もキスした。
口内を動く舌の感触がとても気持ちが良くて俺はそのまま眠ってしまった。
すやすやと寝息を立てるサクを見て
光が焦ってたことなんてサクは知らない。
翌朝
とぎれとぎれだが覚えてる。爆弾発言をした気がする…。
光とのキスが好き?え、そうなのか…?
はたして酒の席ででる言葉は本心なのか。
布団から起きて頭を片手で抑える。
少し頭がズキズキする。
もう酒は飲まないことにする…。
どうやら俺は酒に弱いらしい…。
そしておはようと後ろから声をかけられた。
この声は勿論毎晩一緒に寝ているあの男のものだ。
「お…はよ」
どうしてもぎこちなくなってしまう。
すると抱きしめたれ頬にキスされた。
「ひぇっ…」
「嫌じゃないんだろ?」
そう言って微笑む彼はとても上機嫌だ。
そんな彼を見て俺は息を呑んだ。
首元には歯型やら赤い跡やらがたくさんついている。
「ちょえ、ここ光!ごめん これ…跡…」
「ん?あぁ別にいい 俺もつけたし」
そう言って俺の首筋から鎖骨までをなぞってくる。
その仕草にびくっと体を揺れ鏡をおそるおそる覗いて…
俺は叫びそうになった。
やばいこんなんじゃ外歩けない…
キスマってどのぐらいで消えるんだろ…
鏡の前で無数の赤い跡に絶句した俺を光は後ろから包み込んで耳元で囁いた。
「今後、俺のいないところで酒を飲むことは禁止する」
いや、もう今後一生お酒飲みません。