エピーソード3 輸入品のお菓子
エピソード3 輸入品の菓子
ここに来て数日たつがここでの生活はまぁ悪くなかった。
男の話によると俺は買われたらしい。
ペットショップの闇市みたいのがあるんだと。
人と動物のハーフはこの世界では社会的地位が低く売り買いが認められているそうだ。
本当にとんでもない話だ。
それから俺の昔の記憶が無いことは黙っておいた。
何となく話がややこしくなるのは避けたかったからだ。
そういえば男の名前を教えてもらった。
光というらしい。
呼び捨てでいいと言われた。
俺もサクという名前があると教えてやったがおそらく呼んではくれなさそうだ。
いつもお前呼びだからな…。
それで、
変態男 光は俺をその市場で一目惚れで買ったらしい。
何でも前飼っていた犬(本物)に似ていたからだとか。
そして相変わらず毎日キスしたりベタベタしたりしてくる。
しかし、それもなれてしまえば気にならない。
殴られたりするよりましだ。
光はまぁまぁ忙しそうだ。
いつも対談だのなんか仕事に追われている。
俺はというと部屋を与えられた。
小さめの部屋だが日当たりもよく光の部屋からも近い。
西側の部屋で、机と本棚と押し入れと窓と基本的なものが揃っていた。
部屋からは出ないようにとだけ言われた。
だから暇な時間は読書などで日々を消化している。
一度だけうっかり約束を忘れ部屋から出ていってしまったことがあった。
すると多くの使用人に罵倒されたり叩かれたり追い出されそうになった。
「なんで城にこんな卑しいやつがいるのかしら? 誰の奴隷よ 閉じ込めておいてちょうだい。あぁ汚い」
そうキンキン声で怒鳴られたのを覚えている。
そこで俺は改めて自分の社会的地位を理解した。
動物とのハーフは嫌われものらしい。
そういえばここに来る道中でも汚いだの言われたな…。
そして光がそれを飼ってることは一部の人間しか知らない事実だそうだ。
勿論部屋から出たことは光にばれたし注意された。
なるほど俺が逃げないように部屋から出ないように言っていたわけではなかったわけだ。
そしてフードのついた服をもらった。
どうしても用事があるときはこれを着て城内を歩けと言われた。
ただ、城内の散策はしばらくいいかなと思った。
今日もまた光と一緒だ。
ここに来てからもう一週間ぐらい立つだろうか。
今日は特別なものをくれるそうだ。
なんでも別の国から輸入したお菓子があるんだとか。
こらから普及する予定だそうだがまだ金持ちしか食べれないらしい。
保存が難しいとかで…。
なんだろうとても楽しみだな。
いつもの大広間で光の横で正座して待つ。
光が大きめの箱からお菓子を出す。
そのお菓子は…
そのお菓子は知ってる食べ物だった。
木の棒に白く冷たく甘い固形状のものが刺さっている。
これは確かアイスクリームだ…!
どこかの記憶の中で食べたことがある。
既視感にテンションが上がった。
「これは氷菓子というものらしい。少し遠いい国から仕入れたのだが何でも熱に弱いとかで保存が難しいんだ。甘いのは好きか?」
「うん!めっちゃすき」
俺はキラキラした目でそれを見つめる。
最近少し暑いから冷たいお菓子はとても美味しそうだ。
光が俺の口元にそれを差し出す。
「ん」
「ありがと」
お礼を言ってアイスにかぶりつく
「甘い!」
口に広がるのはあまーいバニラ味だ。
「ふっ、そうか ほらもっと食べろ」
光は机に肘を付きながら目を細めてアイスを俺の口に押し込む。
喉の奥まで押し込むもんだからむせそうになってアイスの棒をもつ光の手に自分の手を添えアイスを押し返す。
「奥入れすぎ」
そう言って上の方から舐め始めるが、だんだんアイスが溶けてきたので下の方も舐める。
「ほら、もっとちゃんと舌使え」
光はにこにこしている。
なんだこいつ偉そうに…!
不満に思いつつも食べる。
「んんんんっ…って!
冷たい…って!奥いれるな」
なぜこいつは人の口に食べ物を押し込みたがるのだろうか。
苦しさに俺が抗議すると光は俺の頭をふさふさ撫でた。
「悪かったって」
口から溢れたアイスが口の端をつたう。
それを光はぬぐって舐めた。
そのまま今度は人指し指を口に突っ込んできた。
親指と人差し指で舌を掴まれ、口の外へ出される。
そして親指で俺の舌をなでた。
「はひふんあ…!」
「冷たかっただろうかと思って」
そのままキスされる。
だしたままの舌を吸われ熱い光の舌と絡められる。
ちゅくちゅくと音がする。
息が苦しくなって光の肩を押し返す。
「ぷはっ…誰のせいだよ」
光は俺の耳に顔を近づけるとそっと
「必死に舐めてるのかわいすぎ」
と囁いた。
「つっ…!!」
「くくっ 耳真っ赤だけど弱いの?」
「なーー弱くねぇ!光が変なこと言うからだろ…!」
「顔も真っ赤 お前ほんと可愛い」
それから髪をさらさら撫でられた。
そしてまるで愛おしいものでも見るかのような目で俺のことを見るもんだからどうしていいのか分からなくなった。
いきなりの沈黙に落ち着かなくて目をそらすと
溶けかけのアイスクリームがあった。
「光これ溶ける溶けるっ」
光はあぁと言って残りのアイスを口に入れた。
少し名残おしそうな目でそれを見る。
その視線に気づいたのか光が尋ねる。
「食べるか?」
「もうないじゃん」
「いや?」
また光の端正な顔が近づいてきて、口を開けると冷たく甘いのが口に入ってくる。
ただ光の舌が熱くてすぐに溶けてしまう。
口の中がアイスと唾液でいっぱいになって口の端から白い液がまた少しつたってそれを飲み込む。
その後またキスが長く続いた。正直何度もされているが一向に慣れない。
「ぷは、はぁはぁ光、苦し… もういいだろ」
「ん〜?もっと…」
いくら顔を背けても何度も深く口づけされる。
そうして今度は俺の着物の襟に手を入れてきた
へ?
そして胸の先端に触れた。そこを何度も指で擦ってきた。
ビクッとして
もう何が起きてるのかわからなくなってびっくりして後ろにのけぞった。
「うわっぁっ」
それから壁まで一気に下がった。
それを見てくすっと笑いやがった。
ななな何?!
そして手招きしている。
「はやく戻ってこい」
そう言ってめんどくさそうに手招きをしている。
だが、俺が首を横に振り、俺にその意思がないことが分かるとこっちににじり寄ってきた。
俺はとっさに
逃げた
「おいまて…くそっサク!」
後ろでなんか聞こえるが知ったことではない。
キスまでなら許せるがそれ以上はだめだ。
未知の領域すぎて怖い。何されるのかもよくわからないし。
俺は猛ダッシュで部屋から逃走した。
しかしこの城はやけに入り組んでいて迷ってしまった。
「あれ…ここどこだっけ?」
そしてあっけなく捕まった。
「サク」
「いやだいやだ離せ!」
「わかったから部屋に戻るぞ」
「うぅ わかったから離して」
「離したらまた逃げるだろ」
「逃げないから」
「…ほら」
光がようやく解放してくれて仕方なく部屋に戻ることにした。
戻る途中に俺は今まで気になってたことを聞くことにする。
「あのさ」
「なんだ」
「前から思ってたんだけど…俺ってさ光にとってペットだろ?」
「ん?それがどうかしたのか」
「ならさなんでそんなことするわけ…?」
「そんなこと?」
「きっキスしたりだよ…!」
「あーなんでって……可愛いから?」
「へ」
予想外の返答に唖然とした。ナニイッテンダこいつ。
「あのさ俺確かに中性的な顔だけど男だよ」
「知ってるが」
「…もしかしてこの国ではペットとキスしたりするのは普通なの?」
「んなわけないだろ くだらないこと言ってないではやく歩け」
そう言って足で前に蹴り飛ばされた
本当に乱暴だ。