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状況

拙い文ですいません。

 腹が減ってすぐにでも何かを食べたいので、獲物を探しに行きたいが、魔物と戦闘になる可能性が高いので、まずは今の自分に出来ることを知りたい。


 まず特筆すべきは、体を回復する速度だな。

 動けないほどボコボコに殴られ、何本も骨が折れていたのに数時間寝ただけで、完治ではないが動けるまでになるというのは絶対普通じゃない。


 回復能力は人間だった前世とはくらべものにならないくらい高いだろう。

 なので、ある程度この回復能力を当てにして、これから行動しようと考えている。


 怪我がすぐに治るなら、これからしようと思っている肉体強化や体力強化のためのトレーニングもかなり追い込めるだろう。


 回復能力が高いのは素晴らしいことだと思うけど、背が120cmくらいしかないうえに、ガリガリで筋肉が全然ないから腕力や持久力などの肉体の能力はかなり低そうだ。


 ただ、ゴブリンは回復能力に見て取れるように、人間とは全く違う。

 だから120㎝の人間よりは確実に能力が高いだろう。だって120cmは、日本でいう幼稚園から小学校低学年くらいの身長だ、流石にその年代よりも諸々の肉体能力は高いと思う。


 でも、ゴブリンの能力を人間と比較したところで現状の能力が分かる訳もないんだよな…詳しくはまあ、いろいろとテストしてみよう。

 

 そういうことで、体を休められる体勢をとっていたが、立ち上がって体の動きを確かめる。

 良かった、体もほぼ治って動くことが出来そうだな。今いる場所には隠れられる場所もなければ、もしかしたら俺をボコボコにしたゴブリン共が帰ってくるかもしれないから、この場からまず離れよう。

 

 ここから離れるついでにまずは、どれくらいの距離を走れるかのテストだな


 「はぁはぁはぁ」


 時間を知るすべがないので正確には分からないが、体感ではかなり長い時間、長い距離を走れたと思う。

 もしかしたら、走る持久力は普通の人間よりもあるかもしれない。少なくとも、持久走が得意でなかった前世よりは走れるようだ。


 分かってはいたけど、道が舗装されていない森の中を走るのというのは、かなりしんどいものなんだな。


 これから、体力や体を強くするために森を走るつもりだったけど、想像よりもきつそうだ。

 まず、森に道はないし、大小さまざまな石も落ちているし、木や岩が無作為にあるので障害物だらけだったりするけど、強くなるためには良い場所だな。

 

 かなりの距離を走れることと、体力が結構あることは分かったが、後はパワー系の動作がどれくらいできるかが知りたい。

 そこで、まずは俺が獲物を仕留める為に使おうと思っている”投石”がどれくらいできるかを確認しよう。


 その前に、この体の持ち主だったゴブリンの記憶では、狩りの方法は単純で毎回命がけで獲物に突っ込み、石や木の棒で殴り殺すというものだった。


 このゴブリンの記憶は少し不便で、その場面で何を考えているかまでは分からない。

 だから何度も狩りをした記憶を覚えてはいるんだけど、それはまるでこのゴブリンが見た場面の動画を見ているような感じで、何故無謀なやり方をしていたのかは分からない。


 いや、このゴブリンのいた集落では、生まれて少し経てば狩りをして来いと命令され、狩りのやり方を教えられずに育ち、それでも必死に生きてきたからこのゴブリンにとっては無謀でもなんでもなくて勝率の高いやり方だったのかもしれない。


 だけど俺はこのゴブリンの記憶を持っているだけで、体感的には昨日まで現代日本に住んでいた普通の人間だ。

 そんな俺がこの記憶の通りに狩りをしても、うまくいくはずがないと思うので、まずは遠距離から攻撃して獲物を弱らせて狩るために何がいいかなと考えた時、投げられるような石は探せばどこにでも落ちているし、まずは遠距離攻撃の手段として投石をやってみようと考えたわけだ。

 野球を見るのも好きだったし、なかなかいい線行くと個人的には思っている。


 そういうわけで、投げやすそうな石を探す。

 

 大事なのは、どれくらいの距離を正確に投げられるのか、ということとその威力だな。

 肩を回したりして準備体操をする。さっき走ったので、ばっちり体は温まっている。


 まずはゴルフボールくらいの大きさの軽い石で、どれくらいできるかを試す。

 10メートルくらい離れた所にある大きな木の太い幹に直径15㎝くらいの円を描き的にする。


 野球の投手のように、振りかぶって全力で投げる。

 投げた石は的を外れて遠くに転がって行ってしまった。


 「思ってたより難しい、練習が必要だな。」


 やっぱり野球を見るだけでは、うまくならないみたいだ。

 

 それから、投石が狩りに使えるかのお試しだったのつもりだったけど、俺はこの石投にハマってしまって肘が痛くなるまでだいたい200回以上投げたと思う。


 ただ投げていたのではなく、的に当てる為に腕の振りやリリースのポイントなどを調節しながら投げると、最後の方は10回中7回的に当たるくらい上手になった。短期間の練習で、かなりの命中率になったと自負している。

 でも、全部命中するくらいのコントロールが必要だ、なんせ相手は動く訳だしな。


 それで肝心の威力だが、そこそこという感じだ。まだ獲物に試したわけではないので分からないけど、一撃必殺とはいかないと思う。当たり所がよければ一撃かもしれないけれど。

 まあ俺も投石は獲物を仕留めるっていうより、弱らせる手段と考えているし、これなら狩りに使えそうだ。


 投石と持久走をして気が付いたけど、ガリガリでかなり貧弱そうな体のわりに腕力は強いようだ。


 本当に人間とは何もかもが違うのかもな。チビでガリガリの同じような大きさの人間とはくらべものにならないくらい力も強いし、回復能力や持久力も高い能力を持っている。

 まあ、ここが地球じゃないと仮定して、この世界の人間は地球よりも能力が高いのかもしれないけどな…嫌だなぁ、人間はおそらく敵だから弱い方が良い。


 まあそこは考えても仕方ないし、これから鍛えていけば腕力も強くなるだろうし、強い生き物にも対抗できるようになるはずだ。

 目指せ投石160kmだ!


 能力の確認は、このくらいにして獲物と拠点を探そう。

 できるだけ他の生物にこちらの存在がばれないように慎重に森を歩く。


 投げやすそうな石を拾いながら、だいたい1時間ほど歩いた頃岩場の影に、30cmくらいある長い角の生えた1mくらいの兎が一羽いた。

 名前は分からないけど、この兎は記憶の中でこの体の持ち主がお得意様にしていた相手だ。

 

 何らかの肉を一心不乱にグチャグチャと食べているので、今は油断していて仕留めやすそうだ。


 兎なのに肉食…まあ顔もかなり凶悪だし、正直に言って兎っぽい見た目なだけで、あれは俺の知っている兎じゃないな。

 まあそりゃそうか…ここは、ほんとに地球じゃないんだな。

 あの兎の注意すべきポイントは、突進攻撃だけだ。投石を外した場合は、記憶にあるような肉弾戦で仕留めるしかない。

 

 がんばれ、俺。集中だ。


 油断している今がチャンスだ、5個ほど選りすぐった石を持って、慎重にゆっくりと近づいていく。こちらからは相手が見えて、相手からは見えにくい場所を探し、見つけたちょうど良い木の裏で集中する。


 こちらから相手までの距離は、だいたい8m。

 狙いは当然兎なんだが、特に急所だと思われる頭部に石をぶつけたい。かなり狙いの的は小さくなってしまうが、投石練習でつかんだ良い感覚で、握った石を思い切り投げる。


 「うらぁ!」


 バンッ


 「ギグィッ!」


 投げた石は真っすぐに飛んでいき、兎には当たったものの、初めて生き物に石を投げるという行為に、緊張と罪悪感みたいなものが生まれ、それに伴って投げる瞬間に力んでしまって、頭部ではなく腹部に当たってしまった。


 石が当たった兎は、衝撃で少しだけ飛んだが、奇妙な悲鳴を上げて直ぐに体制を整え、周りを見回し石を投げた俺を探している。

 

 流石に野生の生き物は頑丈だな。地球の猪は、車に撥ねられてもすぐに走りだせる程頑丈だって聞いたことがあるし、異世界のあんなに凶悪な面をしている生物は想定よりも頑丈で力強いだろう。

 

 だけど、奴はまだこっちの場所に気づいていない。今のうちにもう一発当ててできるだけ弱らしたい。まあ仕留められれば最高なんだけどな。

 まあ、慎重に相手のことは仕留めるまで過大に評価しておこう。


 次こそは頭部に思いっきりぶつけてやる。

 いや、興奮せずに冷静でいこう、さっきみたいに余計なことは考えず、頭部に石を当てることにだけ集中するんだ。


 その狙いの兎は、さっきまでのように動きが止まっていない。俺を探す為にピョンピョンと跳んで動き回っている。

 正直に言って難易度は爆上がりだ。動きがゆっくりになるか、止まるのを待つ。

 

 「ふぅ~はぁ~よしっ今っ!おらぁっ!」


 ゴツンッ


 「ギィッ」


 出来るだけ力まずに投げた石は、今までよりもはやい速度で一直線に兎の頭部に吸い込まれるように当たった。

 当たった兎は、さっきみよりも鈍い音がしてその場で動かなくなった。

 さっきは吹っ飛んで威力を減らせたのかな?野生の本能か…すごいな。


 それにしても我ながら凄いコントロールだ、もう一度同じことができるかな?

 もっと確率が高い方法を考えるべきかもしれないな。


 「今はそんなことより、肉だ!早く食いたい!」


 小走りで動かなくなった兎に近づく。

 そして、もう触れるくらいの距離になった時、まだ胸ら辺が動いていて息があることに気づいてしまった。


 まだ生きているなんて、頭に当たったんだから死んどいてくれよ。

 直接とどめを刺さすなんて、なんて言っていいか分からないけど…クソっ。


 仕方ないんだ、俺が食うためにはそうしないといけない。

 俺は覚悟を決め、落ちていた大きめの石を、既に投石で抉れている頭部を潰すように、”グチャッグチャッ”と不快な音を聞きながら振り下ろす。


 想像していたよりも生き物の命を奪うっていうのは、疲れるな。投石みたいに遠距離からやるのと、直接やるのでは全然何もかもが違う。

 まだ手に肉をえぐる生々しい感覚が残っている。


 この世界で生きていくためには、これに慣れないといけないんだよな。そうしないと俺が生きていけないもんな。

 だからと言っては何だけど、凄く感謝して食べよう。


 まだ拠点が見つかっていないので、この場で兎を食べることにする。

 ここはまあ岩陰だし安全ではないけど、仕方ない。腹が減りすぎて早く食べたい。


 解体するための道具なんて当然持っていないので、力ずくで皮を剥ぐ。

 死んですぐだからか、意外と簡単に出来た。早く食べた過ぎてパワーアップしてるのかもしれないな。

 記憶では生で食べていたので、火を通したりしないでも大丈夫だろう。


 「いただきます。」


 それから、感謝しながら一心不乱に、兎の肉も内臓もすべて平らげた。

 血の処理をしていなかったので、少し血で臭かったけど、それさえも美味しかった。


 残った骨、角、皮はなにかに使えるかもしれないので、これから探す拠点に持っていくことにした。

 特に角は、かなり鋭いので、懸念している近距離戦にも使えそうだ。


 腹も6分目くらいまで満たし、さっきまでのブルーな気持ちを食事で紛らわせたので、テンションを上げて行動できそうだ。


 日が暮れる前に身を隠れられる場所を見つけたい。


 そういうことで俺は、早速森を歩き始めた。


 

 

 

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