転生
拙い文ですいません。
「うぅぅぅ~あぁぁ」
なんだ?
うめき声しか出せない。
それに目が開かないから何も見えない。
ていうか、あんな刺され方をしても人って生きてられるのか…半端ないな現代医療。
あの時は絶対死んだと思ったんだけど。
それにしてもいったいどういう状況なんだ!?
誰かこの状況を説明してくれ!
看護師さぁ~ん!お医者さぁ~ん!
説明して下さい!お願いしまぁ~す!!
まあ俺の心の声が誰かに届くはずもないけど、現状の説明が欲しいな。
でも俺が今生きてるってことは、誰かがあの傷をどうにかしてくれたってことだから、俺が起きたことに気づけば誰か来てくれるだろう。
何とか周りの人に、起きていることを気づかせたくて、声を出そうとするが、喉にも傷を受けたようで痛いし”ぐぅう”とという、うめき声しか出せない。
それでも頑張って声を出していたが、誰も来てくれない。
病院なら医者や看護師が、気づいてくれそうなんだけどな。
この状況を誰も説明してくれないなら、自分で把握するしかない。
まず俺の体のことだが、刺されたから体がものすごく痛いっていうのは分かる。
寝ころんだまま起き上がれないほど全身が痛い。どれくらいここで寝ていたかは分からないが、刺された傷はそんなにすぐには治らないだろう。
目が腫れているみたいで少しも開かないから、周りが今どうなっているか分からない。
幸いではあるが、自分が酷く臭いということと、風の音が聞こえてくるので、嗅覚と聴覚はある程度機能していると思う。
鼻と耳で出来るだけ現状を知る努力をする。
それで分かったんだけど、恐らく今俺がいるここは病室じゃない。なぜなら薬の臭いや、病院独特の臭いが全く感じられない。
まあ、俺が臭すぎて鼻がいかれてしまったっていうだけ、という可能性もあるけど。
それに病院だとしたら、人の声や人の出す雑音や機械音が聞こえてこないのは変だ。
これも俺の耳が機能してないだけかもしれないけど。
そんな風に今の俺に出来る限りの情報収集をしていたが、すればするほど良くない情報が集まってくる。
体も痛いし、熱が出たときみたいに頭がボーっとしてきたので、”何もできないなら、もうどうにでもなれ”とふて寝をした。
結構な時間寝てたと思うが、起きると辺りは真っ暗だった。
だが、寝る前の俺とは違う。
腫れて開かなかった目が開いたんだ!
まあ、目が開いたことは、開いたんだけど完全に視力が戻ったわけじゃないみたいだ。
それに、目が見え始めたことは嬉しいんだけど、そのせいで薄々感じていたことが現実だったと分かった悲壮感の方が圧倒的に大きかった。
やっぱりここは病院じゃなくて、辺りに見えるのは木、土、木。
どこかの森の中らしい。
クソっ!最悪だ!最悪すぎる!
あの野郎!刺した俺が死んだと思って森に捨てやがったのか!?
あの野郎への怒りで頭がどうにかなってしまいそうだ。
いかんいかん、こんな状況の時こそ、プラス思考で行こう。
まあ埋められたりしなくて良かったじゃないか。
遺棄の仕方が、お粗末なおかげで助かったと思ってやろう。
そんな風に考えていたおかげか、怒りが少し収まったような気がする。
それでも、この森から脱出出来たら。草の根分けて探し出して、絶対復讐してやるけどな。
でもまあ、日本の警察は優秀だし捕まってるよな…会うなら牢屋か。
当然だが、まだ体は痛いし、首から下は動かない、それに森の中に一人だ、という現状を知ってしまったせいで、頭がさっきまでよりもさらに混乱してしまった。
もう一度ふて寝してしまおうか、と考えたけど、さっきまで寝ていたから、目がバキバキで寝れないから、少しでも体を回復させるために、何も考えず寝ころんでジっとしていた。
それなりの時間が経ち、だんだん体が動くようになっきた。
もたれられる場所があれば座れるくらいには体も動くようになった。
まだ痛い場所もあるけど、体の痛みもある程度痛みも引いて、頭が混乱していたのも収まった。
すると頭の中に前世の俺以外の記憶があることに気づいた。
そんなこととがあれば、それまで以上に混乱してしまいそうなものだが、なぜかすんなりとその記憶を飲み込めた。
その記憶で分かったのは、まず第一に、俺はあらゆる創作物で簡単に殺される雑魚キャラの、ゴブリンに転生してしまったことだ。
それと同時に、ここは多分日本じゃない。もっと言えば地球でもないだろう、地球にはこんな生き物はいなかっはずだ。
でもまだ、ここは誰も着たことがない秘境でそこにはゴブリンがいるという可能性は残っている。
まあ99,9%はありえないことだけど。今の俺の状況もあり得ないことだから0%じゃないかだろう。
まあ、今にして思えば例の記憶を思い出す前から、異常なことはあった。
傷の治りや痛みが引くスピードが人間のそれじゃなかったし、腕も背も脚も短くなっている。
それにもう慣れたのだが、体がものすごい臭かった。
何日も体を洗っていない臭いで、はっきり言ってやばかった。記憶の中で一度も水浴びをしていなかったし、このゴブリンという生物には清潔という概念さえなさそうだ。
自分で見たこのゴブリンの体は、薄暗い緑色で身長はだいたい120cmくらいで、体型はガリガリで全然体に肉がついていない。
実際今もかなり腹が減っている。
恰好も腰にぼろ布を巻いて、かろうじて股間を隠せているくらいだ。
当然だが上半身にはなにも着ていない。この貧弱な体を見せて歩くのは前世の記憶がある俺にはかなり恥ずかしい。
今は何も映せるものがないから見えないが、記憶の中にある自分の顔はすごい凶悪だった。
そして第二に、何故今こんな傷だらけの状態になっているのかということだが、簡単に言うと他のゴブリンにボコボコにされました。
記憶を思い出した時に、ボコボコにされた記憶がよみがえってきて怒りが沸いた。
深呼吸だ、落ち着こう…落ち着くまで5分くらいかかりました。
落ち着いたので説明すると、普通のゴブリンは何体か集まって狩りなどをするんだけど、この体の持ち主は違って、いつも魔物を一人で仕留めていた。
何故一人で仕留めていたかというと、仕留めた魔物は集落の上位者に上納しないといけないのに、その上自分で食べる肉を他のゴブリンと分け合うのが嫌だったみたいだ。
それで、いつものように一人で仕留めた兎の魔物を、持って帰ろうとした時、横取りしようとして現れた六体のゴブリン共に半殺しにされ仕留めた獲物を奪われたという訳だ。
記憶によると、そのゴブリン共とは同じ集落に所属してたけど、同じ集落内でも獲物の奪い合いはよくあることだった。
そのゴブリン集落には掟みたいなものがあって、その一つに強い奴は偉いから弱いものから横取りしても構わないというのがあった。だから強さを見せつけるための殴り合い、肉の奪い合いは日常茶飯事だった。
だから集落の空気はいつも重くて帰る場所というよりも、弱い俺たちが生きていくために…いや上位のゴブリンに気まぐれで殺されないために肉を上納しに行く場所だった。
狩りに行っても仕留められない日もある。だから集落のやつらは必死で肉を手に入れていたが、上納した後でないと自分の分を食べてはいけなかったので、みんなガリガリだった。
ただ、集落の外で肉を奪う行為は聞いたことがなかった。
多分俺がいつも一人だったし、結構肉を手に入れてくるから、いいタイミングで奪おうと考えていたんだろう。
そのことに腹も立つし、報復したいのはやまやまだけど、襲いに行ってもまたこっちがボコられるだろうし、何より上位ゴブリンが出てきたら困るから、報復は今じゃないな。
それと、上位のゴブリンも肉を手に入れてくる手下が減るのは嫌だろうから、俺に都合のいい考えだけど奴らも何らかのペナルティをもらうかもしれないな。
ただ、俺はいつも単独行動だったし、集落はいつも子が生まれていたので、俺がいなくなっても気づかない可能性の方が高いと思う。
痛みもかなり引いて、歩くくらいの運動ができるようになった。
これからのことも考えないといけないな。
さっきも言ったが、俺をボコボコにしたやつらがいる集落には戻るわけにはいかない。
今戻ったら、またボコボコにされるか、最悪口封じに殺されてしまうかもしれないしな。
上位のゴブリンに訴えても大した解決にはならんだろう。
もしゴブリン集落に戻るにしても、集落の誰にも負けないように力をつけてからだな。
集落の大多数は普通のゴブリンだが、俺よりも確実に強いであろう上位のゴブリンが三体はいたので、強くなる努力はかなり必要だろう。
その上位のゴブリン以外は、生まれた年齢問わずだいたい俺と体格が同じくらいだった。集落のゴブリンが栄養が足りてなくて背が伸びてなかったというのもあるだろうが、上位のゴブリンは体格がニ、三倍違うので進化とかがあるのかもしれない。
集落に戻っても得がなさそうだから、戻らずに以前までと同じように単独行動だな。当然以前よりも周囲を警戒して過ごそう。
強くなるための修行もしたいし、武器も欲しいな、それにまずは肉が腹いっぱい食べたい!
まあそんな漠然としたことじゃなく、これからのことを具体的に考えないとな。
拠点に帰らずにやっていくということは既に自分の中で決定している。
だけど、そのためにはまず食料と拠点が必要だな。
食料のことだけど、やっぱり肉だよな。
肉を腹いっぱい食いたい。
記憶の中のゴブリン達は何故か肉類しか食べていなかった。
森なんだから木の実とか他にも色々と食べれるものもあると思うが、集落では誰も食べていなかった。
まあ俺ってばボッチだったから、他のゴブリンは集落の外で肉以外を食べていて知らなかっただけかもしれないけど…こんなところにもボッチの弊害が…
腹が減って死にそうになったら分からないけど、ここが地球でも異世界でも、俺は植物の毒の有無を知らないから、木の実とかを食べるのは今の段階では止めておこう。
だから、魔物と戦えば強くなれるかもしれないし、魔物を仕留めて肉を食おう!
肉を食って筋肉をつけて、早くこのガリガリボディを卒業したい。
後は拠点だな。
できるだけ見つかりにくいような場所がいい。狩りのついでに探すことにしよう。
この森はかなり深い森で、俺たちみたいなゴブリンが活動するのは森の最も外縁の部分で、一番の脅威はオークで体格が俺の2倍くらいあるらしい。(俺の身長は約120cm)
しかしオークは、ゴブリンが住む地域よりも奥地で生息していて、こちらから近寄らなければオークの集団に遭遇することはまずない。だが、単独のオークは比較的浅い所にたまにいるらしい。
正直に言って今のままでは、攻撃が通らないだろうから、オーク狩りは厳しい。
だから危険を冒さずに、記憶でも狩ったことがあるような、小型の魔物を探して狩ろう。
記憶では、いつも浅いところで狩りをしていたので、奥には進んだことはないけど、この森は
浅いところだけでもかなり広いので、隠れるだけの場所ならすぐに見つけられるだろう。
隠れられる場所がないと、睡眠も疲れも取れないだろう。できるだけいい場所を早く見つけたいものだ。
こんな感じでこれから頑張っていくつもりだが、地球にいた時に、サバイバル生活なんてしたことないし、それに関する知識も持っていない。
当然森での生活の仕方なんて分からないし、殺されてボコボコのゴブリンに転生するという最悪の現状だが、この体の前の持ち主の記憶もあるし、怪我がすぐに治るめちゃくちゃな生命力を持つゴブリンになったから死ぬ気で頑張れば案外大丈夫かもしれない。
それに、ここは日本じゃないんだ。強ければ強いほど生きやすくなるはずだ。
俺も死ぬ前に思ったじゃないか、最強の男になりたいと!
プラスに考えれば、この転生は一度死んだ俺に降ってわいたチャンスのように感じてきた。
人じゃなくてゴブリンになっちゃったけど、このチャンスを無駄にしないために頑張って強くなろう、やりたいことをやって生きよう。
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