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1.魔法使いは海へ行く

「あら散歩?」


忍び足で歩いていても気づかれた。


「はい、これ」


小さなお弁当バッグを渡された。


「…ありがとう」

「近いとはいえまだ暗いから気をつけてね」

「はい」


背後には、まだいる気配がしてスニーカーの踵に指をいれながら振り向かないで挨拶を伝えた。


「いってきます」

「はい、いってらっしゃい」


ドアが閉まりやっと息を吐いた。


「いってきますなんて言ったの、久しぶりかも」



カシャン


鍵を差し込み真新しい灰色の自転車のカゴに叔母から受けとた朝食を放り、ペダルに足をのせた。


「魔法使いなんて、いなきゃいいのに」


普段はたいした力も使えないのに。


「絶滅危惧種ってレッドデータの貝と似たようなもんだな」


それが私だ。


「今日は、何が拾えるかな?」


ブレーキに手を触れないまま、高台から一気に降る。


このまま、飛べればいいのに。 

このまま、いなくなれればいいのに。


車の音に諦め気持ちを押し込めた。閉じた目を開きブレーキをかける。



これから夏休み、また長い一日が始まる。






* * *



夜明け前の海は周囲に誰もいない。


右手を下に向け、目をつぶる。


「還らない小さな物よ集まれ」


淡い青い光が収まり目を開く。


「今日は、上手くできた」


ペットボトルのキャップに破れたビニールと他の国の言葉が印刷された錆びた缶。かなりの量だ。私は、手袋をした左手で持ってきた袋にいれた。


「今日は、曇りかぁ」


ゴミを拾い終わり見上げた空はいまだ暗い。貝やビーチグラス、石英せきえいは、日の光が多少あるほうが見つけやすい。


魔法は、使わなすぎると身体を壊すからと自分を納得させる。嘘じゃない。事実だ。


「使用しないのも駄目、過剰も駄目」


面倒な力。


「その強き光の欠片をみせたまえ」


プラゴミを集めるために下に向けた手を今度は日の光をわけてもらう為に空へと伸ばす。


弱いながらも厚い雲の隙間から光がいくつか射した。浜辺をみると、日の光で輝く硝子の欠片や貝。


よしよし。いくつか拾えそう。嬉しくなった時。


「…嘘だろ?魔法使い…?」


振り向けば、サーフボードを持った、同じくらいの男の子がいた。




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