5-7 帰路
森から出て、隊長がエフェルレメリアに挨拶した後。
邪神討伐隊の6人は、王都への帰路についた。
道中、フィリーとアレアはノーシュに説明した。冥府の巫女のことや、生き返らせた時の様子などを。
全て聞き終えたノーシュは、
「ごめん」
立ち止まって頭を下げた。ジャンとフィリーがギョッとする。
「なっ、何を今更!」
「そうよ、謝られる覚えは無いわ!」
「でも……」
ノーシュは顔を上げ、言葉を続ける。
「皆、あんなに加護を欲しがってたのに。それに、寿命5分の1って、結構長いし……そんな代償を払ってまで生き返らせてもらう価値、オレには無い」
「何殊勝なこと言ってんだい」
アレアは笑い飛ばした。積もった埃を吹き払う、一陣の風のように。
「言ったろう? あーしたちは、あんたに仕返ししたかっただけさ。復讐に命を使ったあんたと、そう変わりゃしないよ」
他4人も、「そうだ、その通りだ」とばかり頷いている。
「……そっか」
「あと、価値ならあるぞ」
ジャンが笑みを浮かべて言う。
「ノーシュが独占した、武器を生み出す力……思いっ切り利用してやるから覚悟しろ!」
「そういえば、武器屋がどうとか言ってたな。詳しく」
「お、おう」
ノーシュの反応が意外と乗り気そうだったので、ジャンは少したじろいだ。
そんな2人を見て、フィリーは嘆息する。
「王都で商売する気なら、貴族の後ろ盾が必要よ。どうするつもり?」
「え、マジで?」
ジャンが振り向く。知らなかったらしい。
ノーシュは少し考えて提案する。
「仕入れはタダなんだから、報奨金が余るだろ。爵位でも買えば良いんじゃないか」
「多分、そこまでの額は貰えないわよ……」
フィリーは呆れたように言った。それから表情をほころばせる。
「私、ちょっと当てがあるの。相談してみるわ」
「おー、頼んだ!」
ジャンは目を輝かせた。
わだかまりはすっかり解けて、わいわい喋りながら歩いて行く。帰路がこんなに楽しいものになるとは、誰も予想していなかった。
一方、天界に戻ったスーロは、自分の得た木で少し休んだ後、妖精たちのたまり場に赴いていた。
花畑である。
淡い色の、ふわふわとした花が咲き乱れ、妖精たちはその上で喋ったり寝転んだりしている。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど」
スーロは年配の妖精に声をかけた。
「強い人間は死んだら天界に来るって、本当かい?」
「なんだ、会いたい人間でもいるのか? その話は本当だが、会うことは出来ないぞ」
「え、どうして……」
「そうやって天界に来た人間は、神のもとで暮らすんだ。この辺りには来られない」
「……」
スーロは無言で踵を返し、花畑の外へ飛んでいく。
しばらく飛んでいると、湖のほとりに着いた。重い溜息が出る。
(会えないんだ……)
ポタリ。
水滴が足元に落ちた。
(雨……? ここでは降らないはずなのに)
顔を上げてみるが、抜けるような青空が広がるばかりだ。再び足元を見ると、パタパタと地面が濡れた。
湖に映る自分の顔を見て、ようやく理解する。これは、涙だ。
(……人間じゃあるまいし)
目をごしごしと擦った。そして、改めて湖を見る。
この湖は、見たいものを映し出す。下界の景色や天界の別の場所、人間や動物まで、何でも思い浮かべるだけで映る。
(ご主人……)
湖が揺らぎ、ノーシュの姿を映し出した。邪神討伐隊の皆と楽しそうに話す、ノーシュの姿を。
(え……?)
夢でも見ているのかと思った。
ノーシュが生きている。どういう訳か知らないが、生きて下界にいる。
つまり、再び下界に降りさえすれば、会えるのだ。
嬉しくなったスーロは、でたらめに飛び回りながら自分の木に戻った。力はほとんど回復しているが、どうせなら全快してから下界に降りよう。そんな考えであった。




