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データベース

作者: ariko
掲載日:2020/04/19

教務主任『……で、次は、データベースから判明した情報の共有です……3年2組のTさんのお母様の事で重大な事実をお伝えします。お母様は、看護師をされておりますが……』

担任『はい……それは知っています。Tさん、いつも自慢のお母さんだって……』

教務主任『……。お母様が、S大学病院の感染病棟にお勤めだそうです』

担任『えっ!!……』

教務主任『くれぐれも、距離を置き、連絡等は全て電話で、学校には来ないように注意して、関わり方に気を付けて下さい』

職員一同『……はい……』


そんな、職員会議の情報は、どこからともなく児童の耳に入り、またたく間に広まった。


A『Tの母ちゃんって、ヤバいよな』

T『なにが?ヤバいって何?』

B『看護師ですよね』

T『そうよ。それがなに?自慢のママよ!』

A『感染病棟の看護師なんだってな〜』

T『!そ……それは』

A『Tに近寄るのはやべーよ!』

B『触ったものに触るのもヤバいですね!』

A『あ、そうそう、確か、Tも、大人になったら看護師になりたいんだよなー?』

T『え……それは……』

B『学童データベースに反映されてますね。間違いないですね』

T『ママのお仕事……大変だし、危険もあるかも知れないけど、大切なお仕事なんだよ!!』

A『おーい、みんなー!今日から感染防止にTに近づくなよ!ちかづいたら、そいつもおんなじだからな!』

T『どうして……ママ悪くないもん……どうして……』


クラス全員からの無視、Tが触れた物への消毒、ばい菌扱いは日に日に増していった。

それから一週間ほど経ったある日の事。


A『ママ、ただいま!おやつなにー?』

Aが部屋に入ると、床に倒れ込む母親の姿があった。

A『ママ!?どうしたの?!』

母親『ぜ……ぜぇぜぇ……胸が……苦し……』

A『ママー!!ど、どうしよう……あ、き、救急車呼ばなきゃ』


Aは震える手で、119を掛けた。

オペレーター『はい。119番です。救急ですか?火事ですか?』

A『救急車、救急車お願いします!』

オペレーター『今はどの様な症状ですか?』

A『胸が苦しいって、ぜーぜー言ってて!』

オペレーター『今流行している感染症の可能性が高いですね。専門病院に搬送を……あ、一旦、データベースを確認致しますので、数秒お待ち下さい』

A『早く……早く!』



オペレーター『Aさん、お待たせしました。データベース拝見しましたが……』

A『データベースがなんだよ!』

オペレーター『一週間前から……Aさん、Tさんを差別扱いしましたね。母親が感染病棟の看護師と言うことで……』

A『え……え……っと……そ……そんなん関係ねーだろ今は!』

オペレーター『大いに関係あるんですよ』

A『なんでだよ!!』

オペレーター『現在、感染症が全国各地で広がっているのは、あなたは学校で勉強してると思うのだけど、今、感染者の数が急激に増えてね、病院に掛かれる人を選ばなければいけないのよ』

A『えぇ!でも、ママは病院掛かれるんだろ?!』

オペレーター『残念たけど、データベースであなたが感染病棟看護師のお子さんを差別したことが記録されていて、感染に罹患した時、医療の必要がないと言う意思表示だと判定されているの』

A『そ……そんな!そんな!そんな!ママ……ママ……死んじゃうよぉ!どうにかならないの?』

オペレーター『どうにもなりません……』

A『そんな!僕のせいでママ死んじゃうの?!』

オペレーター『脅す訳では無いですが、この感染症は、身近な人が感染しやすいから、もしかしたらあなたも感染するか……してるかもね』

A『嫌だ!どうしたらいいんだ!どうしたら助かるんだ!』

オペレーター『90%は無理だと思いますが……方法は無くはないです』

A『本当に!?』

オペレーター『望みは薄いですが、試す価値はあるかと』

A『試してみたい!なんでもやるよ!』

オペレーター『……。そうですか……では……あなたが、一週間前から差別したTさんのお母様に、入院をお願いしてみて下さい……』

A『えぇ!!まさか!!そんな事できる訳ないじゃん!!』

オペレーター『やるもやらないもあなたの判断なので無理には押し付けません。ただ……90%無理なのは、あなたのせいですから、それを乗り越えたら、残りの10%は結構大きな確率ですよ。まぁ時間もないので、早く行動した方が良いですよ』


A『そんな……僕は……なんて事してしまったんだ……』


母親『苦しぃ、苦しぃ……』


Aは家を飛び出し、学校に向った。

Tが丁度、下駄箱にいたので呼び止めた。

A『T、ゴメン!!お前の母ちゃんの事でお前を差別してしまって、本当にゴメン!この通りだ!』

Aはその場に土下座した。

T『え……っと、状況よくわからないけど、謝ってくれたからもう良いよ』

A『え!あんな酷いこと言ったのに、許してくれるの?』

T『多分だけど……Aの家族、感染したんじゃないの?』

A『そ……そうなんだよ!!それで、救急車呼ぼうとしたら断られて、Tの母ちゃんにお願いしてみろって言われて』

T『やっぱりそうなのね。わかった。すぐママに電話する』


Aの母親は、Tの母親の機転で勤めている病院の救急車を手配し、搬送し、感染病棟で無事治療を受けることが出来た。


A『T……本当にありがとう……それと、本当にごめんな……正直、90%は無理だと思ってた。なのに、こんなアッサリ許してくれて、ママを助けてくれてさ……』


その時、Aは気づいた。

90%は……僕の気持ちなんだ。 一週間前から差別してた人に頭を下げるのに、本当に大きな壁を感じた。

でも、それを越えたら、TもTの母ちゃんも、すぐに許してくれたし、助けてくれた。 


差別なんて、絶対ダメだ。

助けてくれたTとTの母ちゃんには、心から感謝している。 

大変な現場で、命の危険を晒しながら、頑張っている人が沢山いる。

今は、これだけが僕に言える事。


感染症の医療に関わる全ての人に、感謝と、尊敬を。


それから数カ月の時を経て、感染症の流行は終息した。


119番のオペレーターは、なんとなく気になっていたAのその後を調べたくなった。

 

データベース5670804

『○○小学校4年2組 男子

 氏名:A 

 将来の夢:





 






    








           看護師』


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