45話 エピローグ
あれから3年後
向こうの世界へ行くことはなかった。
ラルスだけは自分の治めている領地を守るため1カ月に1度は向こうの世界に戻っている。
時々、陸がラルスに頼み込んで、向こうの世界を見学させてもらっているという。
最近ではラルスと陸の2人で王都見物に行ったらしい。
現実主義だった陸も、すっかり変わってしまった。
今ではファンタジー世界を受け入れて楽しんでいるという。
瑠香は無事に志望校である有名私立大学へ進学することとなった。
しかし、今でも実家に住んでおり、玲のマンションから大学へ通っている。
ネルは玲の通っていた高校の1年生となった。
今は元気に玲のマンションから、芸能プロダクションのレッスンに通っている。
次の『スピーカーJacks』メンバーの候補生だ。
『スピーカーJacks』の初代メンバーは全員が卒業し、それぞれの道へと散っていった。
里緒菜はソロデビューを果たし、今でもソロでオリコン入りを果たしている。
ラルスは今では里緒菜の専属マネージャーを仕事をしているという。
そして役職も課長となっている。
ラルスの住んでいる高級マンションが恵比寿にあり、芸能プロダクションが借りているマンションから近いこともあり、寮の管理人のような仕事までこなしているらしい。
超イケメンのラルスなら良き相談相手になるだろう。
亜美は1年前からモデルの仕事が舞い込んできて、今ではモデルとして活躍している。
今では撮影のために海外へ行ったりと忙しい生活を楽しんでいる。
陸はファンタジー世界を受け入れ、今はラノベ小説家を目指して、文芸部のラノベ研究会で小説を書いて、出版社の公募に応募したりしている。
就職希望職種は大手出版社だという。
◇
「玲パパ――!」
公園のベンチに座っていると元気に玲を呼ぶ声がする。
ネルだ。
ネルと亜美が手をつないで公園を歩いてくる。
亜美の帰国は明日だったはずだけど……
亜美は玲の隣に何も言わずに座って、体を寄せて頭を玲の肩に乗せる。
「撮影が早く終わったから、1日早く帰してもらったの」
「そうだったのか……お疲れ様」
「時には一緒に同行してくれてもいいのに……」
亜美が撮影されるのかと思うと今でも胸がドキドキする。
そして少し嫌だという気持ちもある。
それが自分のワガママで、自分の独占欲だということはわかっている。
だから亜美の撮影には同行しないようにしている。
「玲パパはね……亜美ママを独り占めしたいの……私、わかるもん」
「ネル……人の心を読むのはやめなさい……恥ずかしいだろう」
「玲……ネルの言う通りなの?」
「……恥ずかしいけど……少し焼ける……うん」
素直に白状すると、亜美はとても嬉しそうな顔で微笑む。
そして玲の手をギュッと握る。
「私はどこにも行かないわ。いつも玲の傍にいるし……玲のものだから」
「うん……ありがとう……嬉しいよ」
「私もヤキモチ焼いてくれて嬉しい」
亜美の顔が近い。
潤んだ瞳が優しく見つめている。
思わず抱き寄せてキスをしようとすると、ネルの顔が近くにあった。
「ネル……」
「私がいるのに2人でイチャイチャは禁止。私が寂しいでしょ」
「別にネルのことを忘れてたわけじゃないよ」
「嘘……2人とも私のことを忘れてた」
そう言ってネルが玲と亜美の間に割り込むようにベンチに座る。
その顔は悪戯っ子のような、甘えた顔だ。
「玲パパ、亜美ママ、私はいつまでも2人の子供なんだよ」
「わかってる。俺も亜美もネルのことを本当の子供だと思ってるよ」
「うん……玲パパと亜美ママと一緒にいると心が温かくなるからわかる」
大きな夕陽が都会のビルに隠れるように傾いている。
もうすぐ夕暮れ時になる。
ベンチから立って3人で公園の中を歩く。
ゆっくりと、丁寧に幸せの上を歩くように。
3人が歩いた後ろには幸せそうに手をつなぎ合った影が寄り添っていた。
END
無事完結させることができました。
これも読者様の応援があってのことです。
本当にありがとうございます。
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皆様、本当にありがとうございました。 潮ノ海月




