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43話 ネルの母親①

 深夜に机に引き出しに入れていたケースが赤く光り輝いた。

ケースの中に入っているのはラルスの魔法を封印しているネックレスだ。


 亜美と玲は大学のキャンパスでコーヒーを飲んでいる時だった。

体が段々と透け、そしてキャンパスから亜美と玲は消えた。


 気が付くと亜美と玲は洞窟にいた。

そして亜美と玲の前には里緒菜とネルもいる。

そして奥には古竜へと変化しているラルス横たわっている。



『うむ……我らの世界が、ネルと我を呼び戻したらしい……玲と亜美と里緒菜はそれに巻き込まれたようだ』


「何が起こったんだ?」


『わからん……今から我は我の領土内を調べてくる。玲達はこの洞窟に居るといい。この洞窟は安全だ』



 ラルスにも何が起こっているのかわかっていないらしい。

ネルも竜に変化する。

もう幼竜とはいえない。

全長5mを超える立派な竜だ。



『玲パパ……亜美ママ……私も行ってくるの? お父様だけだと心配な気がするの』


「わかった。行っておいで……でも危なかったら戻ってくるんだぞ」


『はい』



 ネルはラルスと共に洞窟を出て大空へと羽ばたいていった。




◆ネルside




 魔巣の森の上空を飛ぶ。

嫌な予感がする。

森の魔獣達も怯えているようだ。


 何が起こっているの……


 魔巣の森の上空には何もいなかった。

お父様は魔巣の森を抜けてムント村まで飛んでいく。

ムント村は無事だった。


 しかし、ムント村の村人達の様子がおかしい。

私達、竜族に怯えてしまっている。


 この村は竜族に怯えてもいたが、祀ってもいた。

特にラルスお父様への信頼の厚い村だ。


 ラルスお父様がムント村へ降りて、村人へ声をかける。



『我はこの村を守ってきた古竜。この村で何があった? 申してみよ』



 鍛冶屋のグレクスと道具屋のミリアが外へ出てきて、お父様へ平伏する。



「これは古竜様、お久しぶりでございます。最近になって違う竜がこの辺りの地域を支配したと言ってきました。黒竜です。古竜様は居られなくなったと言っていました。そして私達に贄を送れと言ってきたのです」


『別に竜族は好んで人は食べんぞ。それは我への嫌がらせだな。我を誘き出すためにそのような戯言を言ったのであろう。贄など出さなくてよい。我が解決する。その竜はどちらへ飛んでいった?』


「東へ飛んでいきました」


『それでは黒竜は王都へ向かっていったのだな?』


「そこまではわかりません。方角しかわかりません。申し訳ありません」



 お父様は大きな翼を広げて大空に舞い上がり、私の隣へやってくる。



『我らが居らぬ間に、黒竜が我らの支配地域を荒らしているらしい。これからは竜同士の戦いになる。ネルは洞窟で待っておれ。そのほうが安全じゃ』


『それはできません。私もお父様の子供です。それに玲パパ、亜美ママを守らないといけません』


『わかった……我の後ろをついてまいれ』



 それだけ言うとお父様は飛行体勢を取って、大空を滑空する。

ついていくだけで必死だ。

それだけお父様も必死で黒竜を追いかけているということだろう。


大空を飛んでいると目の前に城壁都市が見え、城壁都市の近くで黒竜が上空で停止しているのが見える。

城壁の上からバリスタの大弓が放たれているのが見える。


 黒竜はそれに腹を立てて、時々、火炎のブレスを城壁の上に吐いている。

その度に騎士達が炎に巻かれて城壁から落ちていく。


 お父様は黒竜から少し距離を取った位置で停止する。

そして黒竜を睨みつける。



『何のために戻ってきた? ここはもうお前の領地ではないぞ! 我の領地から出ていけ!』


『私は自分の子供を取り返しにきただけですわ。後ろのいる子竜が我が子ですか? 我が子を返せ』



 ネルの頭の中が混乱する。

黒竜はネルのことを我が子と呼んだ。

ということは……私のお母様?



『お前とはネルが卵の時に別れている。竜は卵を産むまでは一緒に過ごすが、卵が産まれると別れるのが本能というもの。お前は我に洞窟を追い出されて、卵を置いて去っていったではないか』


『竜の母親には別の本能もあるの。卵がかえって、幼竜から小竜になる頃に戻って、小竜と一緒に暮らして、竜の生き方を教えるという本能が。私は本能に従っているだけ』


『小竜と暮らすのに人族を襲う必要はない。黒竜……お前は昔から人族を嫌悪していた。だから人族を弄んでいるのだろう。そのような輩だから、我に洞窟を追い出されたのだ。そのことを忘れたか?』



 黒竜は私のお母様。

そして人族嫌い。

人族を守るお父様の怒りに触れて洞窟を追い出された。

そして私が小竜になったので、奪い返しにきた……これで合っているのだろうか?



『黒竜……あなたはお母様なのですか?』


『そうです。私が母親です。これから私と一緒に暮らしましょう』



 本当に黒竜は私のお母様のようだ。

しかし、お母様は人族が嫌い。

人族を弄ぶ……悪い竜。



『私はお母様と一緒には暮らしません。私は人族が大好きです。そしてお父様のことも大好きです。だから私には構わないでください』


『母親に対して口答えをするなんて……甘やかされたものね。これからは私がビシビシと鍛えなおしてあげます。私は古竜ほど甘くはないわよ』



 黒竜は急加速してネルに向かってくる。

お父様であるラルスがネルを庇って、ネルの前に立ちはだかる。

黒竜と古竜の壮絶な戦いが始まった。



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