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41話 4人の入学式

 4月に入り、玲、亜美、里緒菜、陸の4人は大学へ無事に進学し、入学式を迎えた。


 大学内のキャンパスでは亜美と里緒菜に近寄ってくる学生達もいない。

皆、遠巻きにして見ているだけで、邪魔してくる者はいなかった。



「香川陸です……玲の親友をしています。里緒菜ちゃんの大ファンです。よろしくお願いします」


「へえ……玲の親友くんなんだ……それじゃあ仲良くしないとね。私は芹沢里緒菜よ。気軽に里緒菜って呼んでね」



 里緒菜がからかうような目付きで陸を見る。

陸は顔を真っ赤にして里緒菜から視線を逸らす。



「あの……握手してもらっていいですか?」


「いいわよ……はい、握手」



 里緒菜は陸の右手を持って握手する。

それだけで陸は体を硬直させている。

それを見た里緒菜がクスクスと笑う。



「おい、陸……大丈夫か?」


「うるさい……俺は猛烈に感動している……一生、右手は洗わない」



 それは衛生面で問題があると思うぞ。

今、陸がそうしていたいと思うなら勝手に思わせておこう。



「大学って思っていた以上に良いわね。マスコミもやってこないし……ファンも寄ってこないし……私、気に入ったわ」


「さすがに大学の中で里緒菜を追いかけまわすような学生達はいないだろう」


「私もうるさいマスコミから逃げ出せて嬉しいわ」



 芸能界を引退してから亜美は執拗にマスコミに追いかけまわされていた。

引退はしたが、まだまだ芸能界復帰を求めるファンやマスコミの声は多い。



「ラルスが作ってくれた転移装置もいらなさそうだね」



 ラルスは大学の入学式で、亜美と里緒菜の周りに学生達が集まることを危惧して、転移装置を作っていた。

腕にはめられる装置で外見は腕時計にしかみえない。


 装置のリングを回すと、家、実家、大学、ラルスと表示され、ボタンを押すとその場所の転移できるだけ

の簡易転移装置だ。



「ラルスもマメよね……すっかりこの時代の世界に馴染んじゃって、変な装置まで作ってしまうなんて」



 里緒菜が呆れたように言う。



「それだけラルスが俺達のことを気にかけてくれている証拠だ。ありがたいと思わないと」


「まあ……そうね。私のマネージャーでもあるわけだしね」


 そう言って里緒菜が微笑む。



「せっかく貰ったのに使わないのも勿体ない。皆、手をつないで『転移』するよ」



 陸、里緒菜、亜美、玲の4人は輪になって手をつなぐ、

リングを回して実家にセットして転移する。

一瞬でネルの部屋へと転移した。


 制服を着替えようとしていたネルと目が合う。



「キャ――! 玲パパが痴漢!」


「落ち着けネル。亜美や里緒菜もいるだろう……」



 あえて陸のことは言わないでおこう。


 ネルは制服を脱ぐのをやめて、周りを見回す。

里緒菜と亜美が手を振って微笑む。

その後ろに陸が隠れる。



「陸お兄ちゃんも一緒にいるじゃないですか……玲パパ、どこから『転移』してきたの?」


「大学のキャンパスからだ。今日は入学式だったからな。今日からパパ達は大学生なんだぞ」


「キャ――! 玲パパ達が大学生になったー。ヤッター! 今日はお祝いだね!」



 陸がオロオロと部屋を見回している。

顔も青白い。

どうしたのだろうか。



「玲……ここはどこなんだ? そしてこの子は誰なんだ? 俺のことを知ってるみたいだけど?」


「何を言ってるんだ。ここは俺の実家だ。そしてこの子はネルだよ。一緒に学校で遊んだだろう」


「それは幼竜のネルで人間じゃなかったぞ……ネルの人化の魔法を使えるのか」


「当たり前じゃないか。竜だぞ。今では俺達の中学の後輩だ」



 それを聞いた陸が頭を抱える。

陸は意外と現実主義者だ。

今の状況を受け入れるのに時間がかかっているのだろう。



「高校では遊んでくれてありがとう……陸お兄ちゃん……ウインナー美味しかった」



 その言葉を聞いて陸も納得したようだ。



「ネルは着替え中のようだ。皆でリビングへ行こう」



 亜美と里緒菜は手を振って、陸を先頭にしてネルの部屋を出る。

するとネルが玲の背中へと抱き着いてきた。


 玲はくるりと体の向きを変えて、ネルを抱きしめて、髪をなでてやる。

ネルは嬉しそうに目を細める。



「ネルね……こちらの世界で暮らせて良かった。中学でも友達がすぐにできたんだよ」


「それはネルが良い子だからだよ。これからも、もっと楽しいことが待ってるぞ」


「うん」



 そう言って玲はネルから離れて、1階のリビングへ向かう。

途中のダイニングで紅茶を4人分淹れて、リビングの扉を開ける。


 里緒菜と亜美はリビングの中央にソファに座ってくつろいでいる。

陸は別のソファに座ってソワソワと玲が来るのを待っていたようだ。


 リビングテーブルの上に紅茶のカップを置いて、陸の隣に座る。



「どうしたんだ? ソワソワして?」


「当たり前だろう。『スピーカーJacks』の里緒菜ちゃんと亜美ちゃんと一緒の部屋にいるんだぞ。緊張しないほうがおかしいだろう」


 テレビをつけると、テレビにニュースが流れ、『スピーカーJacks』の亜美が引退したことを報道していた。

まだ報道で流れているのかと玲は驚いた。

今の時代はニュースの流れる速度も速い。

近日中には亜美の引退のことも、忘れ去られていくだろう。

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