40話 亜美の引退コンサート
亜美の引退コンサートが始まった。
『スピーカーJacks』のメンバーが舞台に出て歌い踊って、観客を盛り上げる。
里緒菜達、残されたメンバーも亜美と一緒の舞台に上がれるのはこれが最後だ。
皆も一生懸命に歌い踊る。
舞台の光線が交差したり、平行になったりと激しく動く。
舞台上の照明も色とりどりに変化しながら激しく動く。
『スピーカーJacks』のメンバーは舞台から突き出た道を走って円形のステージの上で歌い踊る。
観客達は全員総立ち状態で、『スピーカーJacks』のメンバーの応援する。
今回はチケットをもらって、アリーナ席で瑠香、ネル、玲の3人も亜美達を応援する。
激しいダンスを踊りながらも、亜美と里緒菜が玲達を見つけて手を振ってくれる。
瑠香とネルは必死になって手を振り返す。
いつの間にか玲も大声で亜美達を応援していた。
観客達は大熱狂だ。
玲は初めて『スピーカーJacks』のファン達の応援を耳にして、改めて人気があることを確かめる。
瑠香とネルが大声を出して泣いている。
『スピーカーJacks』のメンバー達も、いつの間にか涙を浮かべて歌っていた。
そこへ新しいメンバー4人も参加する。
総勢11人のメンバーはそれぞれの走りながら、歌って踊ってダンスする。
MCの時間となった。
亜美にスポットライトが当てられる。
「今日は『スピーカーJacks』のコンサートに来てくれて、どうもありがとう」
観客達全員の目に触れるように大きく手を振る。
「そして私の卒業・引退コンサートに来てくれて、どうもありがとう」
舞台の中央で深々と亜美は頭を下げる。
「今まで『スピーカーJacks』のメンバーをしてきて、とてもとても楽しかった。楽しい思い出がいっぱいある」
そう言って亜美は自分の胸を手でギュッと押さえる。
「私、大好きな人ができました。一般人の男性です。だから『スピーカーJacks』を卒業します。そしてアイドルを引退します。皆、勝手な私を許してください。今まで本当にありがとうございます」
観客からは「辞めないでー」という声が聞こえてくる。
「いつまでもファンだぞー」「また戻ってこいよー」という声も聞こえてくる。
亜美のMCを聞いて総立ちで泣いている男性集団までいた。
「お前はこの者達から亜美を奪ったのだ。絶対に幸せにしなければならんぞ」
いつの間にか隣に立っていたラルスが玲に声をかけてくる。
玲も静かに頷く。
どれだけ亜美を笑顔にできるか、幸せにできるかわからないけれど……今まで以上に頑張ろうと思う。
亜美はソロで曲を歌い、『スピーカーJacks』のメンバーが亜美の周りをダンスする。
そしてソロを歌い終えた亜美は深々と観客に頭を下げ、マイクを下に置いた。
その途端に、亜美へ里緒菜が抱き着いて涙を流す。
他のメンバーも集まって亜美との別れを惜しむ。
亜美は1人1人メンバーと抱き合い、何かを話してお別れをしていく。
そしてメンバーと一緒に観客達に大きく手を振って、舞台の後方へと歩いていく。
そして舞台から亜美は去った。
亜美が置いていったマイクを拾って里緒菜がMCをする。
そして新しく入ったメンバーの紹介をしていく。
新生『スピーカーJacks』の始まりだ。
観客達は新生『スピーカーJacks』のダンスと歌に熱狂する。
玲は瑠香とネルと手を握り、ラルスが玲の肩に手を置くと、転移魔法が働いた。
一瞬のうちに舞台裏の通路に立っている。
舞台裏では亜美がコンサート関係者と最後の別れをしている最中だった。
そして玲達を見て驚く。
そして大粒の涙を流して玲の胸に飛び込んでくる。
玲は亜美をギュッと抱きしめ、「お疲れ様」と耳元でささやいた。
「うん……全部の力を出し切った。だから後悔はないから」
亜美は全身に力を入れて強がる。
しかし、寂しがっているのが手に取るように伝わってくる。
玲はそのことに関しては、気づかないフリをした。
「よく頑張ったね。辛かったよね。……これからは亜美を離さないように、もっと俺も頑張るよ」
「うん……玲、いつも近くにいてね。手を離さないでね」
舞台の上ではまだまだ新生『スピーカーJacks』のダンスと歌が続いている。
もう亜美は普通の女性に戻ったのだ。
玲は亜美を引き寄せ、腰に手を回してギュッと抱きしめた。
そして亜美は玲の首に手を回して、ギュッと玲を抱きしめる。
そして亜美と初めてキスを交わした。




