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4話 夢の中での再会

 待ちに待った夜0時を回った。

23時に帰ってきた両親も既に就寝に就寝している。


 玲はグレーのパーカー、デニム姿で、MA-1のジャケットを着て、靴を履いたままベッドに横になる。

いつぶりにベッドで横になって眠っただろう。

やはりベッドで眠るのは気持ちがいい。

すぐに睡魔に誘われて、意識が奥底へ落ちていく。







 薄暗い洞窟の中で立っている。

周りを見回しても誰もいない。

実験は失敗だったか……


 玲の心から落胆する。

やはり夢だったのか……


 洞窟の奥から、物音がする。

もしかすると……期待を胸に抱いて、玲は一歩を踏み出す。


 少し歩いていくと、大きな赤い水晶のようなモノが光輝いている。

大きさが1m近くある大きな赤く輝く水晶が何枚もあった。


 その手前で、白のニットのワンピースを着た、美少女が佇んでいる。

茶髪のミディアムロングヘアーのゆるふわカールパーマ

クリっとした二重、垂れた目尻、きれいな鼻筋、甘い唇。

その肌は透き通ったような色白で美しい。

身長は162cmぐらいだろうか、胸の膨らみがニットで強調されている。

手足は長く、デニム姿が良く似合う。


 とんでもない美少女だ。

あれ? どこかで見たことのある美少女だぞ。 どこかで会った覚えはない。



「ああ……『スピーカーJacks』のアイドル早乙女亜美さんだーーー!」



 少し俯き加減にして、顔を赤らめていた美少女は、しっかりと玲を見つめて、嬉しそうに微笑んで涙がツーっと頬を伝う。



「夢じゃなかったんだね……玲……会いたかった」


「あわわわ……俺も亜美さんに出会えて光栄であります」


「そんなに緊張しないでよ。今まで通り亜美って呼んで」



 相手はテレビでも超人気のアイドルだぞ。

美少女の中でもNO1希少価値種だ。

自分のような凡人が気軽に話しかけられる存在ではない。

普通なら別の世界の住人だ。



「そんなことを言ってもですね……住む世界が違うと言いましょうか……別次元といいましょうか……」


「亜美って呼んで。そうでないと本気で怒るわよ」



 優しく微笑んでいた亜美の顔が不機嫌に変わっていく。

これは非常にマズイ展開。

早く軌道修正しなければ……



「……はい……あ……亜美」


「私は玲に会えて本当に嬉しいんだから。心から嬉しいと思ってるんだから」


「光栄の至極でございます」


「話し方、変だから! 直して!」



 これは乗り越えなければならない試練だ。

この試練を乗り越えさえすれば、アイドルと友達になれる。

これはチャンスなんだよ、玲。

頑張れ。



「わかったよ。さっきから変な話し方をしてゴメン。俺も亜美にすごく会いたかった。本当に嬉しい」


 やればできる子じゃん……


 亜美が歩いてきて、1mほど手前で止まって両手を差し出してくる。

これは握手の合図だろう。

自分のデニムで必死に手が摩擦するほど拭いてから、亜美の両手を握りしめる。



「自己紹介、早乙女亜美サオトメアミです……会うのは13年ぶりだね玲」


「俺は小浜玲コバマレイだけど……13年ぶり? そんなに前に亜美と会っていたっけ?」


「玲が4歳の頃に神隠しにあったこと忘れちゃったの?」



 確かに玲は4歳から5歳にかけての1年間、神隠しにあっていた。

その当時のことは、もう両親しか知らないはず……

どうして、亜美が知ってるんだ?



「玲はグレクスの鍛冶屋に預けられて、私は隣のミリアの道具屋に預けられていたの。覚えてる?」



 確かに熱い炉がある工房があって……玲はグレクスという鍛冶師の元で暮らしていた記憶が微かにある。

その時、隣の道具屋に同い年の女子が預けられていた……名前は忘れた。



「隣の道具屋に女の子がいたのは覚えている。名前は定かじゃないけど……まさか亜美?」


「もう……名前を忘れるなんて最低……そうよ。私が道具屋の亜美よ……思い出して」



 玲と亜美は神隠しの間、確かになんとか村のグレクスとミリアに育てられた……段々と思い出してきた。



「そうか……亜美と俺は幼馴染だったんだな。久しぶり亜美」


「全然、忘れていた癖に……私なんて、大事な思い出として、ずっと大切にしてきたのに」



 だってあの頃は4歳から5歳のことだろう。

普通に子供生活で揉まれていれば忘れてしまうだろう。

それとも……やはり……自分が忘れやすい質だけなのか。



「ということは……俺と亜美は13年前にも、この異世界へ来たことがあるということか?」


「たぶん、そうだと思うわ。だから私は森に魔獣がいて危険なことを知っていた。洞窟の中が安全なことも知っていたんだと思う」



 なるほど、辻褄が合う。



「今日のところは昔のことを考えるのはやめましょう。どうせ玲は微かにしか覚えていないんだから。今度、私がゆっくりと聞かせてあげる」


「そうしてくれ……今日は亜美に会えただけでも嬉しいよ」


「私も玲に会えたことが嬉しいわ」



 自分も亜美も本当の異世界へ転移していたなんて、陸が聞いていたら、驚くだろうな。

瑠香も本物の『スピーカーJacks』の亜美と幼馴染だと聞いたら驚くだろう。

瑠香は亜美の大ファンだからな。



「玲……お願いしてもいいかな? 今日から毎晩0時に寝る約束してほしい。玲に会いたいの」


「俺も亜美とまた会いたい。これからは毎日、0時に寝るようにするよ。亜美に約束する」



 その言葉を聞いて亜美は色白な頬を赤らめて、嬉しそうに「ありがとう」と告げた。

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