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25話 ラルス、ネル、役所へ

 ラルスはパラパラと本を速読していく。

その速さがとにかく早い。

玲が持ってきた近代史の本を全て読破してしまった。



「それで本当に頭に入っているのか?」


「竜を馬鹿にするな……これぐらいは当たり前だ」



 貨幣や経済についても覚えてもらわないと困る。

玲は近代史の本を片付けて、経済史についての本をラルスの机の上に大量に乗せる。


 ラルスは余裕でパラパラと速読していく。

中には、大学生にならないと読まれない本まで混じっているが、全く気にした様子もない。



「玲兄ちゃん…・・・私も小学校3年生までの本、終わっちゃった」


「そうかネルは頭が良いな……次の本をもってこよう」



 玲は本を片付けて、ネルに合いそうな小学校3年生から小学校6年生までの本を探して、ネルの机の上に乗せる。



「なるほどな……この世界は金が支配しているのか……そして金の管理をするために人の管理をしているというわけだな」



 少し間違った方向に捉えていると思うが、概ね間違いともいえない。



「そうともいえるかもね……金があれば、贅沢もできるし……起業もできる。そいういう意味では間違っていないともいえるね」


「なるほど……一方向からだけ分析するなということか。面白い」



 そう言いながら、あっという間に経済史についての本を読んでしまった。

玲は大量にある本を片付けていく。

ラルスは片付けようとする気配もない。


 こうなったら、一番難しい、六法全書と判例の本も読ませておこう。

日本は法治国家であることを理解してもらわないといけない。


 玲は法律に拘わる本を集めて、玲の机の上に積み上げる。

ラルスはパラパラといつものように速読していく。



「いつの世も、人の犯罪はなくならないということだな。それを取り締まっているのが人ではなく、法律ということか……その法も上手くすり抜けられてしまうと手が出せなくなるな」


「そうだな……世の中には法の裏を抜けている才能のある者もいるかもしれないな」



 玲にとっては法の裏側の世界は未知の世界であり、足を踏み入れようと思わない世界だからわからない。



「俺は平凡に生まれたから、大学合格して、平凡な就職口を探して、就職するだけさ」


「玲には欲というのがないの……すでに人生を達観しているように見えるぞ」


「仕方ないじゃないか……そういう世の中なんだよ」







 それから3人で役所まで行って、ラルスとネルの2人の戸籍を作らないといけない。

通常であれば不可能な話だ。


しかしラルスが役所の職員に話しかけると笑顔で職員は対応している。

2時間もしない間に、ラルスとネルの戸籍が出来上がってしまった。



「少し魔法を使っただけだ。後は役所の職員が全てしてくれた。何も悪いことはしていないぞ」



 ラルスがどんな魔法を使ったのかは不明だが、その魔法のおかげで役所の手続きは終わって助かった。



「これで晴れて、我もネルも玲の親戚になれたわけだ。これからもよろしく頼む」


「え!そういう戸籍にしたのか? 自分達で戸籍を作ったんじゃないのか?」


「玲から何も指示を受けていなかったからな。玲のご両親にも親戚で通っている。問題あるまい」



 もっと役所にいる時にラルスの隣について、注意しておけばよかった。

これは玲のミスだ。

これでラルスとネルが、玲の家に住み着くことが決まった。



「この家に住むなら、ラルスも何か仕事をしてもらうことになるからな。食料にも金がいるんだ」


「わかっておる……我に任せておけ……後ほど楽しませてやろう」



 ラルスがそういってニヤリと笑う。

ラルスがこういう笑みを浮かべる時は要注意信号だ。



「絶対に魔法を悪用するなよ」


「わかっておる」



 ネルは嬉しそうに玲の手をつないで顔を赤くしている。

何か嬉しいことがあったようだ。



「ネルは戸籍上、13歳ということになりました。これからは中学2年生なのです」



 確かにネルの吸収力が高かったのは認めるし、ネルの身長を見ても中学生に見えるが、まだ生まれてから1年も経っていない。

それに、この世界のことを全て知っているわけではない。

それよりもネルのランドセル姿が見たかった。

気分はすっかりパパである。


 愕然とする玲の肩をラルスがポンポンと叩く。



「竜の成長とはこういう者だ。だから竜は子育てをする必要がないのだ」



 なるほど……竜は人よりも知性が高いということか……



「後は、あの図書館に通って、好きな知識をドンドンと詰め込んでくれ。2人で仲良く静かに本を読むんだぞ。本の片づけは自分でしろよ……今日だけは俺が手伝ったけど、特別だからな」


「そうであったのか……図書館とは自動的に本が運ばれてくるものと思っていた。あれは玲が特別に探してきてくれた本だったわけか……礼をいう」


「礼なんていいよ……図書館の使い方さえ、覚えてくれればいい。明日からは俺は付いて行かないからな……俺が付いていくと練習にならない」



 家に帰ると瑠香が既に夕食の準備に取りかかっていた。

ネルも瑠香の隣で料理を観察している。



「ネルもしたいの? 一緒にする? エプロン着けてあげる」



 瑠香はそういうとネルにエプロンを着せて、水で手を洗わせて、ネルと2人で楽しそうに夕飯の準備を始めた。


 ラルスはリビングへ行き、テレビをつけて、お笑い番組を見て、笑い転げている。

ラルスは案外、笑い上戸かもしれない。

すっかりテレビのことが好きになってしまったようだ。


 これからどうなっていくのかわからないが、ラルスとネルが戸籍を持てたことだけでも良しとしよう。

玲は自室に戻って、部屋着のスウェットの上下に着替え、ベッドの上に横たわった。


 机の上に置いてあったスマホのバイブが鳴り、亜美からLINEが送られてきている。



《今日も1日、お疲れ様でした。詳しい話は夜中に聞くね》



 それを見た玲は気を取り直して、リビングにいるラルスの相手をするため1階まで降りて行った。

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