21話 瑠香にバレた
12月31日になった。
今年も今日で終わる。
さすがに今日は予備校も休みだ。
リビングのコタツに潜って、みかんを食べていると、瑠香がコタツに入ってきた。
そしてジーっと玲の顔を覗いてくる。
何かを疑っている眼差しだ。
自然と瑠香から視線を逸らす。
「玲兄ちゃん、視線を逸らさないで聞いて。12月24日のクリスマスイブの時のこと詳しく教えて」
今まで忘れていたから、すっかり瑠香も忘れてくれていると思っていたのに……
質問するのを我慢していたようだ。
「私……玲兄ちゃんが夜中に外着を着て寝てるの知ってるんだからね」
夜中にも拘わらず、俺が寝てから覗き見していたのか。
「夜中に俺の部屋を見る必要ないだろう」
「だって、毎日のように机で寝落ちしてた時期あったじゃん。いつも毛布かけてたんだから」
そういえば、朝になると毛布がかけられていたな。
あれは瑠香がしてくれていたのか。
「毛布……ありがとうな」
「毛布をかけに行くと、いつも玲兄ちゃん、半透明になってて気持ち悪かったんだからね」
え!向こうの世界に行ってる時、身体は半透明になってるのか。
それは不気味すぎる。
今まで両親に黙っていてくれてありがとう。
両親に見られたら、大騒ぎされるところだ。
「そして12月24日は目の前から透明になって消えちゃうし……どうなってるのか説明してほしい」
そこまでバレているのなら仕方がないだろう。
「玲兄ちゃんな……寝ると、向こうの世界……異世界へ飛ばされちゃうらしいんだ」
「やっぱり、異世界は聞いていたけど」
「向こうの世界といっても洞窟の中なんだけどな……そこには竜がいたりする」
「玲兄ちゃんがネルを連れてきたのってそういうことね」
本当のことを言って瑠香は信じてくれた。
「確かにファンタジーな世界に飛ばされてるけどな」
「玲兄ちゃん…瑠香に話す分にはいいけど、他の人に話しちゃダメだよ。だからネルもいるんだね」
そのことは分かっている。
できれば瑠香にも詳しく説明したくはなかった。
両親には一生バレたくない話だ。
「別に俺の話を全て信じようと信じまいと瑠香の自由だ。俺は実際に起こっていることを説明してるだけだし」
「わかったよ……玲兄ちゃんのことを信じてるから」
「別に夢の話にしてくれてもかまわない……そのほうが説明しなくて済む」
「玲兄ちゃんの意地悪!」
瑠香は頬を膨らませて不満を表す。
「それ向こうの世界に行くと洞窟になってるんでしょ。そこで何をしてるの?」
「毎日、ある女子と会ってる。彼女も今の世界から向こうの世界へ飛ばされてきていたんだ」
「ええー! 信じられない。私が心配してたのに、玲兄ちゃんは毎日女の子とデートしてたの?」
毎日デート。
あまりの瑠香の衝撃的な発言に玲の体が固まる。
そうか……毎日、亜美とデートをしていたのか……自覚がなかった。
「その女の子は可愛いの? 玲兄ちゃんの好みなの?」
「可愛いし、きれいだと俺は思う」
「それは瑠香も知っている女の子なの?」
もちろん瑠香の知っている女子だ。
瑠香の大ファンの『スピーカーJacks』の亜美だからな。
『スピーカーJacks』の亜美と聞いて、瑠香に信じてもらえるだろうか。
もし、瑠香が信じたら大騒ぎになる。
この場合は信じてもらえないほうがいいのか。
「どうなのよ。私の知ってる女子なの?」
「『スピーカーJacks』の亜美って言ったら、瑠香は信じるか?」
「亜美ちゃんと玲兄ちゃんが夜中にデートなんて信じられるわけないでしょう」
「そうだよな……普通は瑠香のような反応をするだろうな」
2人で黙ってミカンを食べる。
その間、微妙な空気がリビングに漂う。
「嘘よね? 冗談よね? 玲兄ちゃんの悪戯よね?」
「嘘もついていない。事実をそのまま伝えただけだ。俺は『スピーカーJacks』の亜美と毎日会っている」
「え―――!」
瑠香の悲鳴がリビングに響きわたる。
「玲兄ちゃん……私が『スピーカーJacks』の亜美ちゃんの大ファンだって知ってるよね」
「……うん……」
「それを知ってて、からかっての?」
全くからかっているつもりなど一切ない。
本当に会っているんだから、仕方がないだろう。
これ以上、説明のしようがない。
「からかってない……本当のことを瑠香に伝えてるだけだ」
「じゃあ、亜美ちゃんに会わせてよ」
「向こうの世界に行かないと亜美には会えないんだ。だから瑠香には無理だ。諦めろ」
「何か証拠を見せてよ」
そういえば、向こうの世界で皆でスマホのカメラで撮った写真がある。
ポケットから取り出して、瑠香にスマホの写真を見せる。
亜美と玲のツーショット写真だ。
それを見た瑠香は驚きのあまりに固まった。
「どうだ、これで真実だとわかっただろう」
「何で……玲兄ちゃんと亜美ちゃんのツーショットの写真があるの?」
「それは向こうの世界で、亜美と2人で写真を撮ったからだ」
亜美と玲が笑顔で写っている貴重な1枚だ。
「キャ――亜美ちゃん! 私も亜美ちゃんと一緒に写真を撮りたい!」
「それは無理だ。俺だけが向こうの世界に行けることができるんだから」
瑠香は急いで部屋へ戻っていくと、すぐにDVDとペンを持っておりてきた。
「玲兄ちゃん……せめて亜美ちゃんのサインだけでも貰ってきて……それで許してあげるから」
別に瑠香に対して悪いことなどしていないのに、なぜか悪者扱いだ。
寝る時にDVDとペンを持って眠れば、向こう側に持っていくことができるだろう。
「わかった……DVDにサインをもらっておくよ」
それを聞いた瑠香は大喜びで、太陽のような笑顔をして、ソファの上で飛び跳ねた。




