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19話 玲と亜美の初デート

 店屋の前には看板が掲げられていて、看板を見ると店の内容がわかるようになっていた。

バルコニーを出て、大通りへあるくと服屋を見つけた。

大通りに面している店なので、置いてある服の種類は多いはずだ。


 亜美と一緒に店の中へ入る。

店の中は洋服がいっぱいあり、玲のような冒険者が入る店ではなさそうだ。



「いらっしゃいませ」



 店員の女性が恭しくお辞儀をしてくれる。

そういう方々が通う店なのだろう。



「今日、買い物するのは俺じゃなくて、彼女です」



 玲は慌てて、亜美の隣へ戻る。

亜美が静かに会釈をする。



「まあ、きれいなお客様。お客様に着られる服は幸せですわ」


「そんな……ありがとうございます」



 店員の誉め言葉に亜美は顔を赤くして、玲の後ろへ隠れてしまう。

亜美は美少女なのに、自分ではあまり自覚がないようだ。



「この服などいかがでしょうか?」



 そう言って、上半身がコルセットで固められているような服を店員が持ってくる。



「せっかくだし……着てみれば……普段は着ることなんてないんだし」


「そうね……ここには玲と私しかいないものね。少し着てみる」



 亜美は顔を赤くしながら試着室へと入っていく。店員のお姉さんも一緒だ。

たぶん、1人で着ることのできないタイプの洋服のようだ。


 試着室から出てきた亜美は腰から上半身にかけて、コルセットのように絞られている。

そして胸がこれでもかというほど、強調されている洋服だった。



「先ほどの服ではわかりませんでしたが、胸がふくよかですから、よく似合っておりますわ」



 どうしても亜美をみると強調された胸に視線がいってしまう。

亜美も恥ずかしそうに玲のことを覗き見してくる。



「よ……よく似合ってるよ。胸が刺激的だね」


「私も着てみて……少し恥ずかしい」


「とてもお似合いになりますわ……まるで輝く宝石のようです」



 店員のお姉さんに褒められて、亜美は顔を真っ赤にして固まってしまう。

丁度、その時、扉が開いて貴族の青年が現れた。


 そして亜美を見て、驚いて恭しく礼をする。



「このような場所に、こんな素敵なお嬢さんがいるとは知りませんでした。私はカスパル・フォン・グロック グロック子爵の次男です。是非、私に楽しい一時をお与えください」


「それは困ります。私は玲と一緒に洋服を選んでいただけですので……」



 亜美が玲の後ろへ隠れる。

玲も亜美を助けるため、貴族の前に立ちはだかる。



「ふん。冒険者風情が貴族の前に立っていいと思っているのか」


「亜美は嫌がっている。ここは引いてほしい」


「冒険者風情に引き下がれと言われるのは貴族に対して無礼だぞ。不敬罪で殺されたいか」



 貴族が大声で怒鳴ると外にいた、護衛の兵士達が店の中に入ってきて、剣を抜いて玲に向かって構える。

店員のお姉さんが護衛の兵達の近くへ行って大声を放つ。



「ここは洋服を選ぶ店です。剣を振るうなら外でお願いいたします。商品が傷ついたら弁償してもらいますから」



 貴族はそれを聞いて、ニヤニヤと笑う。



「ここの商品の弁償ぐらい、いくらでもしてやろう。だからお前は邪魔だ。そこを退け」



 そう言われて、渋々、店員のお姉さんは護衛の兵士達の前を開ける。

護衛の兵士達は亜美と玲を取り囲むようにして剣を構える。



「お嬢さんが素直に一緒に来てくだされば、何も揉め事はなくなる。さー私と一緒に参りましょう」



 亜美は玲の隣をすり抜けるように、玲の前に立つ。

その時、玲の腰に差していた短剣を手に持つ。

そして短剣を自分の首に向けて、切っ先を刺す。

首からスーッと血が流れる。



「私は貴族様と一緒には参りません。私は玲を愛しています。玲以外の者に触れられるなら、ここで自害いたします」



 亜美は目をつむって、目から大粒の涙が頬を伝う。

亜美は本気だ。



「やめろ亜美!」


「止めたまえ、お嬢さん、お嬢さんの本気はわかった。十分に伝わった。今回は私が引き下がろう。私になびく女性など星の数ほどいる。私は貴族だからな。お前達2人は小さな幸せを大切にするがいい」



 そう言ってカスパルは爽やかに笑いながら店から出ていく。

そして護衛の者達も剣を鞘に入れて、店から出ていった。

しかし亜美は短剣を首に突き刺したまま固まっている。



「亜美……大丈夫だよ……貴族達は帰った。短剣を首から外すんだ」


「え……!」



 亜美は玲の声を聞いて、目を開けて店の中を見回している。

そこには貴族も護衛の兵士達もいない。

玲は亜美の持っている短剣から、指を1本1本丁寧に外して、短剣を取り戻して鞘に入れる。



「玲……生きててくれて良かった。私……もうダメかと思った……」



 そう言って、玲に抱き着いて泣き崩れる亜美。

玲は亜美をギュッと抱きしめて、亜美を安心させる。



「俺は大丈夫……それより、こんな危ないことはしなでくれ……亜美がいなくなったら俺も生きていけない」


「玲……好きよ」


「俺も亜美のこと……大好きだ」



 玲と亜美はお互いに体に手を回して抱き合う。

2度と離さないというようにギュッと抱き合う。



「はい、はい、お二人さん、盛り上がっている所、申し訳ないんだけど……ここお店の中よ」



 呆れたような店員のお姉さんの声が聞こえる。

ハッと気づいて離れる玲と亜美。

2人共、顔を真っ赤にして、視線を合わせることもできない。



「2人、仲良しで良かったわね。洋服を買ってくれるとお姉さんも嬉しいわ」



 玲は顔を赤くしながら金貨を店員のお姉さんに支払った。

そして、亜美と店員のお姉さんは試着室へ行って、来てきた服に着替え直す



「その服、2人の記念になったわね」



 そう言って店員のお姉さんが微笑む。

玲と亜美は会釈をして、店と扉を開けて、2人で手をつないで大通りを歩いていく。

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