表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/45

16話 クリスマスコンサート(後編)

『人の子よ。 我の声を聞け』



 頭の中へ直接、声が響いてくる。

今まで洞窟の中には誰もいないと思っていた。

だから安心していたが、洞窟の中にはネル以外に何者かが潜んでいるようだ。


 玲は警戒しながら、亜美と里緒菜を連れて、洞窟の奥へと入っていく。

そういえば、今日はネルの声が聞こえない。


 洞窟の奥へ進んでいくと、真紅のウロコが輝いている竜が眠っている。

全長15mほどだろうか。体が真紅に輝いている。

玲達が近寄ると大きな目が開き、大きな口を広げる。

口の中にはずらりと牙が並んでいる。


 その姿はまさにファンタジー小説に出てくる竜そのものだ。

現実に出会うと、凄まじいまでの存在感がある。

実体感が違う。迫力が違う。

現実感が半端ない。


 玲が真紅に輝く何かわからないものと思っていたモノは竜のウロコだったのか。

だからネルは時々、削って食べていたのか。

ネルは竜の翼の上で大人しく眠っている。

ずいぶんと懐いているようだ。



『我がこの洞窟へ戻ってきたことで、お主達に渡してある魔力を封印しているネックレスと、我の魔力が暴走を起こした。それを利用してお前達2人を呼んだのだが、タイミングが悪かったようだな』



 竜は知性を持っているとファンタジー小説で読んだことはあるが、かなり知力は高いようだ。


 里緒菜はツカツカと歩いて玲を追い越して、竜の前に立つ。



「早く……私達を元の世界へ戻して……今、コンサートの真っ最中なの。私達がいないとスタッフも観客も困るの……何でもいいから、すぐに私達を元の世界へ返してちょうだい」



 全長15m以上もある、真紅に輝く竜を前にして、自分の意見を進めようとする里緒菜に玲は驚く。

里緒菜は怒りのあまり、今の自分の置かれている状況をはっきりと理解できていないようだ。



『我に向かって、そのような口のきき方をする娘がいたとは驚きだ。人族など、我の姿を見ると平伏するばかりで、つまらぬと思っていたが、この娘は違うようだ。名は何という?』


「名前は里緒菜。 芹沢里緒菜セリザワリオナよ」


『そうか里緒菜か……気に入った。また遊びにくるがよい。お前にも魔力のネックレスを渡しておこう』



 そう言って、竜は体全身に魔力を集中させる。そして魔力を封じたネックレスを瞬時に作りあげた。

そして前足の爪にネックレスをひっかけて、里緒菜に渡す。



「何だか、よくわからないけど、もらっておくわ。今度、来た時には詳しく事情を聞かせなさいよね。今はとにかく早く元の世界へ返して。早くして」


『今回、お主が来たことは事故じゃ。そう怒らなくてもよかろう。すぐに元の世界へ返してやる。では3人共、しばしの別れじゃ』



 そう言って、竜は人間には理解できない言葉で詠唱を始めた。


 気が付けば、玲は瑠香の目の前に立っていた。







 瑠香が顔から涙を流して、玲を抱きしめる。

玲も瑠香の髪を優しくなでる。


 テレビを見ると、先ほどまで煌々と点けれれていた照明の一切が消えている。

そしてバンドメンバーの音もぴたりと止んでいる。


 観客達はこれから何が起こるのだろうと、固唾を呑んで舞台を見守っている。



「さっきはビックリしたなー! もう大丈夫だから、皆でコンサートを楽しもう!」



 亜美がマイクを持って観客に向かって笑顔で大きく手を振る。



「私も大丈夫だよ……驚かせてゴメンね。これも一種のパフォーマンスだったの。許してね」



 里緒菜も満面の笑みを浮かべて、観客に手を振る。


 そして突然、全ての照明が点灯し、光線が光り輝く。そしてごう音が鳴り響いて、『スピーカーJacks』のBGMが流れ出す。

そして、『スピーカーJacks』のメンバー達が一斉にそれぞれのパートをダンスし、歌い始める。


 観客達は、いきなりの始まりに興奮MAX状態に。


 既に瑠香の意識は玲から離れ、クッションを抱き枕にしてテレビに夢中になっている。



「玲兄ちゃん……すごくない? 今のパフォーマンスだったんだって。『スピーカーJacks』のコンサートはいつも凝ってるわ……スゴーイ!」



 瑠香は満面の笑みを浮かべて、玲を見て笑っている。

なんとか、パフォーマンスということで乗り切ることができたらしい。


 玲はそれよりも、洞窟にいた竜のことが気になる。

ネルも懐いていたようだし……ネルの親竜なのか?


 そして4歳のころで覚えていないが、確かにあの竜からは懐かしい感じがした。

深夜にでも洞窟を訪れた時に、亜美に詳しい話を聞いてみよう。

何か知っているかもしれない。


 コンサートの終わりに、『スピーカーJacks』のメンバーは手をつないで、観客達に笑顔で手振っていく。

そして礼儀正しく頭を下げる。



「今日、来てくれて本当にありがとうございまーす」



 MCを勤める里緒菜が大声で観客にお礼の言葉を述べていく。


 観客達は『スピーカーJacks』のメンバーに拍手を送る。全ての観客達に挨拶を終えた『スピーカーJacks』のメンバーは演奏を終えて舞台から去っていった。


 しかし、観客達は誰一人、帰ることもなく、アンコールを大合唱している。

すると、Tシャツ姿に着替えた『スピーカーJacks』のメンバーとバンドマンが現れ、アンコールに応える。

『スピーカーJacks』で1番のヒットソングだ。


 観客達は大盛り上がりのうちにアンコールが終わり、クリスマスコンサートが終わった。


家では瑠香が感動して、クッションを涙で濡らしている。

録画も撮っているというから、後で何度も見返すことだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ