表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/45

13話 亜美の気持ち

◆亜美side



 今日も放課後からダンスのレッスンと歌のレッスンがあり、休憩する暇もなかった。

一応はプロのアイドルとしてデビューしている自覚は持っている。

だから、どんなダンスレッスン、歌のレッスンにも全力を出し切るつもりで頑張る。


 それでも教えてくださる先生方々は、まだ全力を出し切ってないという。

疲れたから……このまま倒れて、動かないでおこうかなという気持ちが……ふっと湧く。


 気軽にスカウトを受けて入った芸能界だけど、歌もダンスも大好きだ。

だから途中で投げ出すつもりはない。

必ずダンスも歌も合格点を取って、クリスマスコンサートを絶対に成功させたい。


 TVの向こうでは玲が応援してくれると約束してくれている。

大好きな玲が見てくれているのに、中途半端な演技はできない。

だから、このまま倒れていることはできないの。



「亜美、まだ大丈夫よね……できるよね?」


「はい、大丈夫です……まだ頑張ります」



 そう言って亜美はヨロヨロと立ち上がる。

しかし、瞳の奥には、目標に向かっていく意思が込められていた。







 玲は神隠しの頃のことを忘れて、覚えていないらしいけど……亜美にとっては大切な初恋の男の子。


 もう再会することもないと諦めていたけれど……古竜の魔法によって偶然にも再会することができた。

今でも再会した時の瞬間のことは忘れられない。


 玲は茶髪のゆるふわパーマをかけていた。

そして切れ長二重、きれいな鼻筋、薄い唇。

どこか幼い頃を思い出させる顔。

自分よりも背が10cm以上高い。


 亜美はすぐに初恋のことを思い出して、顔を赤く染めて俯いてしまった。


 顔を見た瞬間に玲だということに気が付いて、胸がドキドキと高鳴るのを押さえるのに必死。

なのに玲は神隠しに遭っていた時のことを微かにしか覚えていなくて、とても悲しかった。

興奮していたのは自分1人だけ。



「ああ……『スピーカーJacks』のアイドル早乙女亜美さんだ――!」



 玲は『スピーカーJacks』の亜美だって興奮していた。

本当は『スピーカーJacks』の亜美として覚えているんじゃなくて、幼馴染の亜美として覚えていてほしかった。


 でも、そんなワガママを言っても仕方がない。

だって4歳の頃の記憶をはっきりと覚えておくことは難しいと思うから。

亜美にとっては沢山の思い出が詰まっていたけど……

玲にとっては普段と変わりない思い出だったのかもしれない。


 あの再会の日から、毎日、玲と深夜に洞窟の中で会うようになった。

玲と毎日、洞窟で待ち合わせをするのが楽しくなった。

玲は知らないと思うけど、亜美はいつも23時50分には寝ている。

そして洞窟の中で1人、10分間玲が来るのを待っている。


 待っている時のほうが胸がドキドキして、姿を現した時の玲を見つめる。

その瞬間が1番興奮するし……胸が高鳴る。

本当は大好きと言って、抱き着きたいけど……そこまでの行動力も度胸もない。

だって……玲に嫌われたくないし。


 この間、初めて洞窟の外へ玲達と一緒に出ることができた。

幼竜のネルがいるおかげで、森の魔獣達は私達を襲ってこなかった。

おかげで、森の昼間を玲と歩くことができた。

玲は常に声をかけてくれて、ずっと亜美の手を握っていてくれた。

玲の手が優しく亜美の手を握る。

その手の温もりを今でも忘れられない。


 ムント村での、グレクスとミリアとの再会は、すごく嬉しかった。

村で1番にお世話になった人達だったし……玲と亜美を育ててくれた人達だ。

2人が幸せそうに結婚している話を聞いて……亜美も少しだけ結婚のことを考える。

すると結婚式が頭の中に浮かんで、相手が玲だった……とても恥ずかしくて誰にも言えない。


 ミリアは亜美の思っていることを見透かしているように微笑んでいる。

そして台所でヒントをくれた。



「好きな人ができたら、胃袋を捕まえなさい。美味しい食事を作ると男性は必ず帰ってくるのよ」



 ミリアは料理がとても上手だった。

そしてグレクスもミリアの料理を美味しそうに食べていた。

ミリアが亜美に向かって、静かに微笑む。

何となくミリアのいうことが理解できた。


 でも今の自分には料理学校へ行く暇などないし……そのことは今後、考えようと思う。


 クリスマスコンサートが近付いてから、一気にレッスンがキツクなってきた。

だから洞窟の中では、玲に寄り添って、リラックスさせてもらっている。

すると玲が膝枕をしてくれた。

こんなに優しくされると……玲から離れられなくなっちゃう……

この時、はじめてLINEアドレスを交換した。

それから毎日のようにLINEでも話をしている。







 やっと今日のダンスのレッスンと歌のレッスンが終わった。

毎日、レッスンを繰り返しているだけあって、ずいぶんと体が慣れてきたような気がする。



「亜美……よく頑張ってるわ。この調子ならクリスマスコンサートは大丈夫そうね」



 ダンスのレッスンの教師からもお褒めの言葉をいただいた。

これで少しは安心できる。

後は歌のレッスンに集中するのみ。



「コンサートは何が起こるかわからないから、絶対に焦ってはダメよ」


「はい。ありがとうございます」



 マネージャーに送ってもらって、芸能プロダクションの寮へと戻る。

そして、皆で食事をして、お風呂に入って、談笑して、今日1日のスケジュールは終わり。


 それから予備校の宿題をすませると夜中の2時。

今日も待ち合わせの時間に遅れてしまった。

でも玲は優しいから、ネルと一緒に、向こうの世界で待ってくれている。

隣で寝ている里緒菜の寝息を確かめて、外着に着替えてベッドの中でおやすみなさい。

睡魔に誘われて、夢の世界へ行ってきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ