12話 期末考査テスト発表
学校では学期末考査のテストの時間割が発表された。
これが終われば冬休みだ。
しかし、今年は高校3年生……冬休みを満喫している暇などない。
正月が明ければ、すぐにセンター試験が待っている。
教室の中はいつにも増してピリピリした雰囲気が漂っている。
玲も陸も進学組なだけに、今回の試験も成績を落とすことができない。
昼休憩の時間……いつものように陸と2人で弁当を食べていると、陸がニヤニヤ笑いを浮かべる。
「今度のクリスマスイブに『スピーカーJacks』のコンサートがあるんだぜ。それもネットで生中継」
「それが本当なら瑠香が喜ぶな。瑠香も『スピーカーJacks』の大ファンだから」
また家のリビングで大はしゃぎで、一緒にテレビを見ることになるだろう。
亜美が出演しているから、玲も楽しみだ。
「今年のクリスマスイベントはこれでお仕舞いだな……俺達の高校生活って暗かったよな……」
「ああ……そうだな。女子と浮いた話の1つもなく、高校3年間が終わったな」
今では向こうの世界で亜美を毎日のようにデートしている玲だが、そのことは陸には内緒だ。
陸に知られれば、大騒ぎどころで済まなくなりそうだから。
「どうしたら……芸能界の美少女達と知り合いになれるんだろうな……羨ましい」
「それは……自分が芸能関係の仕事に就くか、自分自身が芸能人になるしかないだろう」
「そうか……玲、良いことを言うな。俺……将来の仕事は芸能関係にするわ。これで俺の未来決定」
そんな軽いノリで良いのか?
しかし、そういう玲も将来の仕事については、はっきりしたイメージを持っていない。
今は、志望大学へ合格することのほうに優先順位を向けている。
亜美は芸能人を続けるつもりなんだろうか……
俺の未来は一体、どうなっていくのだろう……今まで考えたこともなかった。
そんな先のことよりも、まずは目先の学期末考査で及第点を取ることが優先だ。
「これから……今まで以上に勉強も頑張らないとな……」
「弁当食べている時ぐらいはテストのことは忘れようぜ」
確かに陸のいうとおりだ。
せっかくの弁当も美味しくなくなる。
そういえば亜美も受験勉強をしていると言っていたけど、志望校は何処なんだろう。
志望校を聞くのを忘れていた……今度、向こうの世界に行った時に亜美に聞いてみよう。
その日から学校の授業では、本格的なテスト対策の授業が始まった。
先生達が、テストに出る要点などを、重点的に教えていく。
それをノートに書き写して、教科書にも忘れないようにマーカーで線を引いていく。
高校3年生の3学期は始業式、センター試験の前日、卒業式の3回しか登校する時がない。
この試験が実質的には高校最後の期末考査テストとなる。
科目教科の先生達も良い点数を取らせたいのだろう。
いつもよりも熱のこもった授業が続く。
いつもなら学校が終わり、自転車に乗って家路へ向かう所だが、今日は予備校があるので、駅前にあ
る予備校へ向かう。
予備校での授業も、段々と厳しさが増してきている。
模試でA判定をもらっているからと安堵している暇などない。
予備校で夜8時まで勉強し、自宅へ戻ると、瑠香が夕飯に温かいカレーを作ってくれていた。
「玲兄ちゃんおかえりなさい。今日は玲兄ちゃんの大好きなカレーだよ。残さず食べてね。大量に作ってあるから、残ったら、明日もカレーだし」
カレーは大好物だ。今日、明日と続いても苦にならない。
2階の自室に戻って、部屋着の上下のスウェット姿に着替える。
そしてダイニングテーブルに座って、カレーを食べる。
瑠香が冷蔵庫から麦茶を出してくれる。
「とても美味いよ、このカレー。瑠香……ありがとうな」
「別に玲兄ちゃんのためだけに作ったわけじゃないし……お父さんとお母さんの分も残しておいてね」
それほど大食漢ではない。
父さんと母さんが食べる量以上に、カレーは残ると思うぞ。
夕食を食べ終わって、風呂に入って、身体を拭く。
そして自分の部屋に戻って、夜0時まで机に座って勉強を続ける。
期末考査テストの範囲もあるし、予備校の受験対策もある。
夜の0時までに終わりそうにない。
しかし、夜の0時には向こうの世界で亜美が待ってくれている。
夜0時になる前に、外着に着替えて、ベッドの中へ潜り込む。
すぐに睡魔に誘われて、玲は向こう側の世界へと旅立った。
◇
洞窟に到着して、周りを見回しても亜美の姿がない。
今日は忙しくて、亜美も時間が遅れているのかもしれない。
亜美が眠れば、自動的に洞窟へとやってくる。
玲は焦らずに洞窟にもたれて、ネルと遊びながら亜美がくるのを待つ。
2時間ほど遅れて亜美が洞窟に現れた。
「ごめんなさい……学校で学期末考査のテスト範囲が発表になって……予備校の宿題をしていたら遅くなっちゃった」
「そんな所だろうと思ったよ……俺も夜の0時だと、予備校の宿題がまだ残っていたからね」
「これからは、もう少し遅い時間にしてもらってもいいかな? 色々と忙しくって……」
「別に俺は構わないよ。俺も予備校の宿題をしていたら、遅くなることもあるだろうし……」
「ありがとう……玲」
亜美は玲以上に忙しい生活をしている。
これぐらいの気配りは必要だと思う。
亜美は嬉しそうに、玲の手を掴んで握手する。
その手はとても柔らかくて暖かかった。




