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11話 亜美とのLINE交換

 ムント村へ訪れてから1週間が経った。

あの日からも毎日夜になると、亜美との2人の時間を楽しんでいる。

ネルは魔巣の森を抜けて、洞窟へ戻ってきていた。


 今では時々、魔巣の森へ飛んでいっては、自分の獲物を狩って食べているようだ。

流石に野生の竜の力はすごいと思う。


『スピーカーJacks』はネットだけでなく、TVでも多くのファンがついて、今流行りのグループとなっている。



「スカウト受けた時は、こんなに流行るとは思ってなかったな。気軽な気持ちでスカウトを受けたのに……」



 亜美が少し複雑な表情で、玲を見つめる。



「歌も好きだし、ダンスも好き。こんなに流行ると学校へ通うのも一苦労なのよね。みんなに遠くからジーっと見られてるし……リラックスする場所がないの」



 売れっ子の芸能人ともなれば、リラックスできる場所など限られているだろう。

玲も亜美の役に立ちたいと思う。



「だからね、最近はこの洞窟に来られることが、とても嬉しいの。玲といるとリラックスできるし」


「亜美の役に立てているなら良かったよ」


「好きで始めた歌手だから、中途半端で終わらせたくないの。だから頑張らないと……」



 やはり亜美はプロの歌手なんだと改めて思う。

精神力が普通の高校生とは違うと感じる強さを持っている。



「普段は強がってるんだけどね……この洞窟でだけは、玲と一緒の時だけは自分に戻れるの」



 それを言って、亜美が顔を赤らめながら微笑む。

恥ずかしくて亜美から視線を逸らせて、髪を掻く。



「こういうリラックスした時間がないと、私……レッスンで壊れちゃうよ」


「芸能界は厳しいんだな。今流行りのグループだけに、注目度も増してきてるしね」


「私達もこんなに流行ると思ってなかったの……」



 そんなに忙しければ、ここで休めばいいし……もっと甘えてくれてもいいと思う。


 そして、亜美の肩を抱いて、亜美の体を自分の体の上に押し倒す。

すると亜美の頭が丁度、玲の膝の上にくる。


 亜美は顔を真っ赤に染めて、目をパチクリしている。

何が起こったのか、一瞬わからなかったのだろう。

今は玲に膝枕をしてもらっている体制だ。



「もっと休んでいいよ。ゆっくりと休もう。俺も目をつむっておくからさ。亜美もゆっくりしなよ」



 そう言って、玲は亜美に膝枕をしつつ、亜美が恥ずかしがらないように目をつむる。

胸の鼓動がドキドキとうるさいが、そのことは亜美には言わないで黙っておくことにした。


 亜美は恥ずかしそうに話題を変える。



「玲とはLINEの交換していなかったね。元の世界でも連絡がとれるように、LINEの交換しておこう」



 確かに元の世界に戻ってしまえば、亜美と連絡のつけようがない。

今、連絡先を教えてもらっておくほうがいいだろう。

そのほうが嬉しいし。


 亜美と玲は素早くスマホを取り出してLINEアドレスの交換をすませた。



「それじゃあ、安心して膝枕で休ませてもらうね」


「うん……いいよ」



 そう言って亜美も目をつむって、玲の膝の上で体から力を抜いていく。

いつの間にか、2人共、眠りに落ちてしまった。







 目を覚ますといつもの時間になっている。

玲は外着から部屋着に着替えて、1階まで階段を下りていき、洗面と髪のセットを行う。

そしてダイニングへ行くと、いつものように瑠香が弁当を作ってくれていた。



「あら? いつもより今日は早いのね」 


「洞窟の中で寝ちゃったからね。こちらの世界に戻ってくるのも早かったみたいだ」


「ふーん、そうなんだ。また今度ネルを連れて戻ってきてね」



 瑠香はすっかりネルに夢中のようで、いつでもウインナーが家の冷蔵庫の中にスタンバイしている状態だ。

時々、大量にウインナーを食べさせられる日もあるけど……ウインナーは大好物だから、あまり気にならない。



「ネルを連れて帰ってくるのは簡単だけど、家だと父さんと母さんの目があるし……外に連れ出すこともできないから、ネルをこちらの世界に連れてくるのは可哀そうだよ」


「私も玲兄ちゃんみたいに夢の世界にいければいいのに」


「それは無理なようだぞ……俺だって、どうやって向こうの世界へ行っているのか不思議なのに」



 向こうの世界で古竜にさえ会えば、何か方法が見つかるかもしれないが、古竜はネルを置いたまま、どこで何をしているのだろうか。


 ムント村でグレクスとミリアさんに、その辺りのことも聞いておくんだったな。



「玲兄ちゃん、早く制服に着替えないと、遅刻しても知らないからね」



 ボーとしていたようで、瑠香に声をかけられるまで、着替えるのを忘れていた。

2階の自室に戻り、制服に着替えていると、スマホのバイブが振動していることに気が付く。


 スマホを見ると、亜美からLINEが届いていた。



《今日は膝枕をしてくれてありがとう……体がリラックスできた。今度は玲にしてあげるね》



 とだけ内容が書かれていた。

亜美からLINEが来たのは、これが初めてだ。



《今日も1日、頑張ってな》



 玲もLINEに返信する。

そのことだけで、玲は心がウキウキしている自分に気がつく。


 もしかすると、玲も知らないうちに段々と亜美のことを気になっている自分に気付く。

そして、制服に着替え終わってから、もう一度亜美からのメッセージを見て、顔をほころばせた。

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