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10話 グレクスとミレア

 グレクスが肉屋と野菜屋から戻ってきた。

野菜も肉もどっさりと買い込んできている。



「今日は鍋にしましょうね……色々なスープで食べると楽しいわよ」



 ミリアさんがグレクスから荷物を受け取りながら、玲と亜美に微笑む。



「私も一緒に料理を手伝います」



 亜美は慌てて、ミリアのいる台所へ向かった。



「亜美はずいぶんとはっきり記憶があるみたいだが、玲はどうなんだ?」


「すみません……微かにしか覚えていないんです……ほとんど亜美に会うまで思い出せませんでした」


「4歳の頃の話だ。それでいいんだ……それで当たり前だと思うぞ。亜美の記憶が良すぎるんだ」



 そう言ってもらって大変助かるが……自分の忘れっぽさを少し恥じる。



「ここは古竜様のウロコがいくつも集まってできている村なんだ。魔獣は竜を恐れる。そして怯えて村の中へは入ってこない。だから、この村の人々は竜を崇めるんだ」



 なるほど……だから玲と亜美のこともムント村で引き取ることに決まったのか。

それにしても、なぜ13年ぶりに、この村に玲と亜美が訪れることがわかったんだろうか?



「古竜様がな……お前達のことを可愛がって……召喚魔法が解けた後でも大人になった玲と亜美に会いたいと申されてな。魔力のこもったネックレスを渡しておいたんだ」



 そういえば、小さい頃から無意識のうちに真紅に輝くネックレスを片時も外さずに身に着けていた。

自分のことなのに、今まで無頓着で忘れていた。



「その時、古竜様は13年後に、また会おうと言われていたのを俺達が覚えていたわけさ」



 グレクスがそう言って、道具屋の奥にある居間に胡坐をかく。


 だからミリアもグレクスも落ち着いて、俺達と話しているわけか。

どうりで、驚いていないはずだ。


 どうして、古竜は玲と亜美を、元の世界から召喚したのだろう。

このことについては古竜と合った時に詳しく聞いてみよう。


 グレクスの様子をみていると、なんだか自分の家にいるようにリラックスしている。

グレクスとミリアは本当に仲がよさそうだ。



「2人は仲が良いんですね」


「ああ……お前達が去ってから3年後にミリアと俺は結婚したからな。ミリアは俺の女房だ」


「夫婦なのに別々の家で暮らしているの?」



 普段は鍛冶屋は工房だけを使っている。後は鍛冶屋の商売も隣の店でしているだけだ。普段の生活はこちらの家を使っている。2人共、仕事を持っているからな……自然とこうなった」


 家族の生活様式で、色々な形になるんだな……


 ミリアと亜美が台所から鍋を持ってきた。

鍋の下には木の板を敷いて、テーブルが焼けないようにする。



「2人で何を話していたの?」


「俺達が結婚したことを玲に話していたところさ」


「え……ミリア……グレクスと結婚してたの……2人共おめでとう」



 亜美は今、初めてそのことを聞いたらしく、ミリアの体を抱いて喜んでいる。

ミリアは少し恥ずかしそうだ。



「2人は私達が小さい頃から、仲が良かったものね。すごくお似合いの夫婦よ」


「それはありがとう……玲と亜美は付き合っていないの? 仲良さそうに見えるけど」



 それを聞かれて、玲も亜美も顔を真っ赤に染めて、お互いに視線を交わすことができない。



「2人共、恥ずかしがちゃって……本当に仲良しなのね」



 喉がカラカラに乾いてくる。

口から言葉が出て来ない。

なんとミリアとグレクスに話をすればいいのだろう。

亜美が小さな声で呟く。



「実は私達2人も、最近になって、再会したばかりなんです。だから今は互いのことを話し合ってる最中なの……」


「そうだったのね……玲と亜美なら似合いのカップルよ。私達も応援するからね」



 その言葉を聞いて亜美も固まってしまう。

そして、色白の顔が真っ赤に染まる。


ミリアが気を利かせて話題を変えてくれた。



「さーお鍋ができたわよ。皆でお鍋を食べましょう」


「「「はーい」」」


「キュァ キュァ」


「ネルは、さっき台所でお肉を沢山食べたからダメよ。太って飛べなくなってもしらないわよ」



 亜美から聞くと、ネルは台所で、あれだけ大量にあった肉の半分を食べてしまったそうだ。

亜美がネルを叱るのも無理はない。

しかし竜って何でも食べるんだな。


 4人で鍋を食べながら、グレクスは酒を取り出してきて、手樽に酒を入れて飲み始めた。

少し思い出したが、グレクスは玲が小さい頃も、よく酒を飲んでいたような気がする。



「玲と亜美も飲むか?」


「俺達は未成年と言って……まだ、お酒を飲める年齢になっていないんだ。だからお酒は苦手」


「何だ? お前達のいる世界では子供は酒を飲んではいけないのか……変わった世界だな」



 玲と亜美がいる日本という土地の法律だけどね。

そんなことを説明しても、仕方がないだろう。

亜美がミリアに話かける。



「ミリア……2人にはお子さんはいないの?」


「いるわよ。今年10歳になる双子の男子が。今は鍛冶屋の修行で街の寮に泊まっているのよ」


「10歳でもう仕事を決めちゃうんだね。やっぱりムント村では職に就くのが早いのね」


「だって……15歳には成人の儀があるのよ。15歳で大人だもの。仕方がないわ」



 そうか、この世界では15歳で成人になるのか。

自分達のいる世界では考えられないことだけど……


 皆で鍋を食べて、楽しく談笑していると、段々と玲と亜美の体が透け始めた。

もう、元の世界へ戻る時間が迫っているらしい。



「グレクス、ミリア……本当に会えてよかったです。元の世界へ戻る時間になってしまったみたい。もっとグレクスとミリアとお話をしていたかったんだけど……もう時間がないわ」



 亜美が涙をこらえて、グレクスとミリアに説明する。



「ネル……お前は俺達が消えたら、魔巣の森の洞窟で待っておいてくれよ」


「キュァ キュァ」



 玲と亜美は立ち上がって深々と頭を下げる。

次の瞬間には、2人の姿はきれいに消え去った後だった。

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