親愛なる、私の友達へ
拝啓、親愛なる私の友達へ
どうして、私を置いていってしまったの。
あなたを苦しめたその悩みひとつを、どうして私には言ってくれなかったの。
私のことを、頼ってはくれなかったの。
いつもの日々の何かが違う。どこがか違う。全てが違う。朝食の味が違う。一人きりで歩く通学路が違う。道行く人々の姿が違う。
黒く陰が覆い被さり、私の日常を染めていく。ただ冷たい現実が横たわって、一切の希望は見えなくなる。吐き気にふらついて、立つことさえも辛い。
心の何処かで、また戻ることを信じている。きっと目を覚ませば、待ち合わせの場所にはあなたがいて、また手を繋げるんだと思ってる。
人より体温の低いあなたの、その冷え切った指先を包んであげる。
そういう風に、またいつもが続く。そうやって思ってる。にも関わらず、あなたは姿を現さない。ねえ今どこにいるの。私のこと待たせないで、早く来てほしい、そう思ってる。
彼氏も友達も私を励ましてくれたけれど、その優しい言葉は上滑りして消えていく。
何一つ心には届かない。大きく傷の付いた私にとって、それは慰めにすらならず。むしろ、上っ面の態度は苛立ちさえ覚えさせる。
あなたじゃなきゃいけない。私の横にいてくれるのは、あなたじゃなきゃいけないんだ。いつだってそうだった。
小学生の頃から、私はあなたと仲良しだった。引っ込み思案で臆病者なあなたのことをいつも引っ張ってあげた。それが楽しかった。あなたも嬉しかった。
でも心の拠り所はあなただった。本当の意味で必要だったのは、私を支えてくれたのは、他でもないあなが一人なんだ。だから代わりはいない。あなたの言葉以外は私に届かない。
空の色は絶望だ。目に刺さる。気持ちが悪くなる。この世のすべてが、あなたのいない世界なんだと思うと、もういても立ってもいられない。
苦しい。あなたがいないことが苦しい。また会いたい、あなたに会いたい。どうして叶わないの。どうして誰も答えてくれないの。
頼って欲しかった。支えたかった。あなたが一人苦しんで苦しんで苦しんで、姿を消してしまう前に、せめてもの力になりたかった。
どうして、私を残して死んでしまったの?
どうして、私を一人にしたの?
大好きな、大好きなあなた。大切なあなた。何よりもかけがえのない宝物のあなた。私だけのあなた。消えてしまったあなた。もう会うことのできないあなた。もういないあなた。自殺を選んだあなた。
その首の縄で、今すぐにでも、私を連れて行ってよ。
なんて、思ってくれてるよね?
だってあなたは私の親愛なる友達なんだもの。