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序章 6 準備完了


 魔神様の話を拝聴するため、正座する。足はないけど大丈夫、こういうのは心意気だ。

 さ、どうぞどうぞ。


 苦笑を浮かべながら、魔神様は説明してくれた。


 水まんじゅう、もとい素体は、どんなものにでも変化できる万能な細胞を持っているらしい。

 だから普段はその素体に魂を移し、ある程度の要望にそって魔物の身体を造り上げ、地上に送り出していた。


 オレは触手になりたい。でも魔神様では造れない。

 そこで考えたのが、素体のまま地上に送ること。

 地上にあるものを参考にして、オレ好みの身体に造り替えていけばいいと。


『可能なんですか?』

『素体だけでは無理だ。他の魔物と同じように、〈アビリティ〉を与える』


 〈アビリティ〉。なんだかそれっぽい感じになってきたぞ。

 それって何だかわからないけど。


『魔物は他の生物と違い、体内に魔力を宿す。その魔力を効率よく動かすために使う力が〈アビリティ〉だ。

 私が考えた。他の奴等より先にな』

『すごい! さすが神様魔神様!』

『褒め方が雑ではないか?』

『オレの持つ少ない語彙ではとうてい言葉にできない感動だったので』

『そうか』


 気分良く魔神様が語るところによると。

 オレなりに例えるなら、魔力は電気、体が回路、〈アビリティ〉はスイッチや電球にあたるようだ。

 どんなに豊富な電力を持っていても、電球がなければ明かりはつかない。

 反対に電球だけでも、電気がなければ明かりはつかない。

 魔力と〈アビリティ〉、両方が揃って初めて効力が発揮される。


 〈アビリティ〉にはたくさんの種類がある。

 さっきの話に出てきた研究者の人には、〈不老〉、〈不死〉、〈不眠不休〉なんていう肉体に関するものや、〈鑑定〉、〈錬金術〉などの魔法じみた能力なんかを与えたそうだ。

 他には〈剛力〉、〈武器創造〉みたいな戦うための能力や、〈治癒の光〉、〈音神の歌声〉なんていう癒しの能力もある。

 さすがに〈触手〉とか〈気持ち良くなる体液〉とかはなかったけど。訊くんじゃなかった。


 それから〈アビリティ〉は使い込むほど、できることが増える。レベルが上がるってことかな。

 例えば〈剛力〉ならどんどん力が強くなるし、〈癒しの光〉ならどんな大怪我でも早く治せるようになるらしい。便利。


『素体はほとんどが魔力で構成されているのだが、それ故に自力で動くこともできん。

 なのでまず〈変幻自在〉を与える。これは身体を変化させる〈アビリティ〉の中でも最上位のものだ。

 これで身体を動かしたり、好みの姿に変えたりすることができるようになる』


 魔神様が、右の掌に乗る素体を指差す。

 左の人差し指から小さな光が出て、素体に溶け込んだ。


『次はそうだな。〈解析〉にするか。身体に触れた刺激などを解析し、視覚や聴覚の代わりにすると良い。

〈変幻自在〉と組み合わせれば、生物を含めたあらゆるものに変化することができるしな』


 また小さな光が素体に溶け込む。


『それから、素体は魔力で構成されていると言ったが、使えば減る。

 一定量を割れば身体を支えられなくなり、消滅する。要は死ぬ。

 故に魔力の補給に〈魔力分解〉と〈吸収〉を与える。

 これは身体に触れたり取り込んだりしたものを分解して魔力に変換する能力と、その魔力を身体に吸収する能力だ』


 二つの光が素体に入る。


『主な〈アビリティ〉はこれで良いだろう』


 満足そうに頷く。それからまた嬉しそうに説明しながら、素体に〈アビリティ〉を加えていった。

 脳みそがないし同時に〈アビリティ〉を使うのは大変だからと〈並列思考〉、〈解析〉したものを覚えておくための〈記録保存〉、さらに物質同士を合成したり分離させたりする〈錬金術〉もくれた。

〈解析〉と組み合わせれば、何でも作れるようになるらしい。

 貰いすぎじゃないかと心配したが、魔神様は朗らかに笑った。


『素体をそのまま地上に送るのは初めてでな。

 ほとんどは生物が当たり前に持つ能力を〈アビリティ〉として与えたに過ぎん。気にするな。

 それにだ。こうして言葉を交わした者が、早々に死んで異界に還ってしまったら、寂しいではないか』


 魔神様が右手を差し出した。

 そうか。オレが水まんじゅうに転生したら、地上に行かなきゃならない。魔神様とはお別れだ。

 水まんじゅうと神様の別れなんて、なんかシュールすぎて全然悲しくなんかならないけどね。

 全然ね。

 ほんの少しかな。

 ちょっとだけだよ。


『まぁなんだ。私は神だから、そこにある水鏡で地上の様子は覗けるのだがな。

 しっかり見守る故、面白おかしい生を謳歌(おうか)してくれ』

『なんですかそれ。ちょっとしんみりし損なんですけど』


 魔神様が笑う。

 オレも笑って、素体に入った。

 真っ暗ななかで〈解析〉を使う。すぐさま視界が戻った。それから音も〈解析〉する。


「どうやら準備は良いようだな」


 初めて魔神様が口を開いた。

 大丈夫、ちゃんと聞こえます。


「そうか。ではさらばだ、名もなき魔物よ。

 お主の生が良いものであることを祈ろう」


 魔神様が静かに立ち上がり、両手を空に掲げる。

 オレの体が浮き、ゆっくりと空に昇り始めた。

 振り返って魔神様を見る。眩しそうな目でオレを見ていた……が。

 あ、と声を出した。


「すまん、言い忘れていた。地上の人間も異界の人間を召喚し始めていてな。

 上の奴等から理力と強力な〈スキル〉を与えられているから気を付けろ。素体に戦うための力はないからな。

 まぁ地上の人間にもまれに化け物じみた者がいるし、基本的に魔物は討伐対象だから、見つかったら全力で逃げろよ。頑張れ」


 え!?

 待って! それ初耳なんですけど!!


 慌てて、魔神様に向かって思いっきり、手を伸ばすように身体を動かす。

 うにゅーっと縦横に伸びる水まんじゅう。

 違う、もっと細く長く! 魔神様は下!


『待って! せめて! 戦うための〈アビリティ〉ください!!』

「すまーん。少しばかり遠いー」


 身体はどんどん浮かび上がり、魔神様から遠ざかる。

 もうどんなに身体を伸ばしても、魔神様の手には届かない。

 虹色の光に包まれ、意識が薄れていく。

 最後に『魔神様のばかー!』って叫んじゃったけど、届いたかなぁ。

 あとで謝りに行けたら……いいな……。



《お知らせ》


『序章 このごろはやりの異世界転生』は今回の更新でおしまいです。

次回から『一章 一難去って難ばかり』を投稿する予定です。


予定なのです、が。


遅筆ゆえにまだ書き終えておらず、といった次第でございまして。

次回から毎週土曜日の20時に更新しようと考えております。

どうぞおつきあいください。



《ここから与太話》

「小説家になろう」に投稿したのは、元々は記念のつもりでした。

なろう作品を色々読んで、自分も書いてみようかな、書いたなら投稿してみようかな、と。

素人が後先考えずにただだらりだらりと書いたものですから、どうせ誰も読まないだろうと思いまして。


で、2話目を投稿した後でしたでしょうか。「アクセス解析」に気づきまして。

確認したらなんとびっくり読まれてる。

……読まれてる!?(二度見)(変な汗)(トゥンクどころじゃねぇ)


もちろん登録タグや流行りのジャンルであるなどのおかげであり、自分の力量とは違う部分で読まれているのだとは思うのですが。

頭の中でこねくりまわしていた空想(あるいは妄想)が、誰かに読んでいただけてる。

自分でも思った以上に嬉しいものでした。あとめっちゃ照れる。正直想定外の衝撃だった。


そんなわけで。

読んでいる人がいる以上、できるだけ頑張って書いていこうと思います。

(面白いつまらないおいといて)(予防線)(突然の弱気)

(とりあえず最後まで書ききれたらいいな)(予定は未定)

では、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。



《もういっちょ与太話》

まさか読んでいただけると思ってなかったのですげぇテキトーに名前つけたのちょっと後悔してる。

ただ改名したところでセンスないからどっこいどっこいな気もする。


とっぴんぱらりのぷう


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