一章 20 軽はずみな正義感
聞きに行ったところで、はたして聞き出せるのか、そもそも話せるのか。
無理だな。うん。ムリムリ。
だってさー。
言語の〈解析〉も完全じゃないしー。
口もないから声出せないしー。
ムリだしー。
どーするよ、オレ。
どーするってもなぁ、オレ。
なんて自問自答しても埒が明かない。
とりあえず例の三人組を追おう。
そのうちに何か思い付くかも。
触手を駆使して移動する。
四本出して歩いたり枝を渡ったり。
この世界に生まれてまだ数日しか経ってないけど、なかなか上手く体を動かせるようになった。
さすがオレ、そして魔神様。
使えば使うほど使い勝手が良くなるって言ってたし、この体があればなんだってできちゃいそうだ。
ホントいいもん貰ったな。
魔神様に感謝を捧げていると、三人に追い付いた。
茶色いマント前方に登場。
素早く静かに頭上に移動。
位置取りキープでそのまま長考。
なんてエセラップしてる場合ではない。
さて、どうしよう。肉体言語で語ってみようか。
足を持ち上げて吊るす?
固い触手でぶっ叩いてみる?
イマイチだなぁ。
オレってばほら、基本的に平和主義だし?
暴力はあんまりイクないと思うし?
食べるならともかくとしてね。
でもおっさん三人分は食べたくないなー。心情としては。
好き勝手に喋ってくれればいいけど、そんな都合の良いことは起きるはずもない。
いや待てよ。
罠の情報を喋ってくれないなら、奪っちゃえばいいんじゃない?
三人組から自発的に情報を話してもらうのはまず無理だ。
オレは喋れないし、こんな魔物相手に罠の場所を教えるはずがない。
でもオレは罠のことが知りたい。
だから、これはもう、奪うしかない。
奪うって言っても別にぶんどるわけじゃなくて、ちょっと覗き見っていうか、コピーさせてもらうっていうか、そんな記憶をなくすようなマネはしないから大丈夫……。
いやでもそんな強盗みたいなことを人間相手にするなんて男としてどうかと思うけど……。
今のオレってば人間じゃなくて魔物だし……。
こいつらだって卑怯な罠を使ってるし……。
……何よりも狐ちゃんのためだから、やっちゃっても良い気がしてきたな。
長考完了。
うん。
やっちゃっても良い気がしてきた!
そうと決まれば話は早い。まずは意識を奪おう。
何も殴ったりしなくても良い。別の方法でもっと簡単に事がすむ。
というわけで〈錬金術〉さん、出番です。
話すこともなくなったのか、無言で森を歩く三人の頭上から透明な触手を四本垂らし、そのうちの一本から睡眠薬を噴霧する。
「うわっ」
「なんだ」
「ぬふん」
と驚いた声を上げ、三人はほぼ同時に崩れ落ちた。
残り三本の触手で難なくキャッチ。
倒れた拍子に頭を打って死亡、なんてことになったら殺人事件だからね。
バーロー……じゃなくて、フォローもバッチリだ。
三人とも大木の幹に寄りかからせる。
ちゃんと木の安全性は確認した。
地面は濡れてるけど、雨を弾くマントを下敷きにすればびしょ濡れにはならないはずだ。
次にフードを外す。
三人ともハ……、あーいやいや、えー、つるりと剃り上げた坊主頭だ。
眉のないいかつい顔立ちも良く似ている。
そういえば着ている服も鎧も同じようだ。
暗い黄色の蛇皮の鎧は細部は違うものの、腰につけたポーチまでお揃い。
ポーチには蛇をモチーフにした紋章がついている。
かなりのこだわりを感じられる。
細部に気遣える、つまりお金をかけられるあたり、冒険者として大成しているのだろうか。
おっと。ついつい観察しちゃったけど、あんまりのんびりしてると風邪ひくかもしれない。
さっさと終わらせよう。
やはり一番手はリーダーっぽいダグズからだな。
まずは頭を触手で抑えて固定する。
それから触手の一本を限りなく細く細く尖らせ、額に刺した。
これなら傷も小さいし、回復薬を少しかけるだけですむ。
ただ、勢い余って脳ミソぶっ刺したらどうなるかわからないので、できるだけ焦らず慎重に進める。
脳まで達したら傷つけないように触れて〈解析〉を発動させれば、あとは勝手に記憶を吸い出してくれるって寸法だ。
いやー、〈解析〉はとんでもなく便利だけど、触らないといけないのが玉に傷だね。
脳ミソとか。あんま触りたくないな。
始めたからには終わりまでやるけどね。
そうしてオレは〈解析〉を始めて、すぐに後悔することになる。




