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一章 17 光はどこに


 時々休憩を挟みながら、オレと狐ちゃんは歩いた。

 やっぱり疲れてしまったようで、狐ちゃんの歩みは遅い。

 それでも暗くなる前になんとか狐ちゃんの巣穴にたどり着いた。


 前に使った穴と違い、この巣穴は深い。入り口は狐ちゃんが通れるほどの狭い幅。

 それが大人の三、四歩ほどの長さまで続き、奥は少し開けている。

 狐ちゃんと圧縮してないオレが余裕を持って入れる広さと高さだ。

 床には落ち葉が敷き詰められてて、ふかふかして暖かい。


 狐ちゃんは奥まで行くと、倒れるように横になり、そのまま寝た。

 横になったと言うか、実際に倒れたんだろうな。

 そして丸まることすらできずに、倒れたまんまの格好で気絶したんだと思う。


 休憩したときに魔力と体力の回復薬を飲ませたけど、あんま飲んではくれなかったし。

 最初めっちゃ警戒されたし。

 なんとか説き伏せて飲ませたらあまりの苦さに悶絶させちゃったし。

 

 あれは申し訳なかった。

 味覚を再現した触手で回復薬を触って、オレも悶絶したもん。

 また鉄拳制裁代わりに噛まれるかと思った。

 そんな体力も残ってなかったみたいで、ふらつきながら歩き始めたけど。


 その姿があまりにもかわいそうで、持ち上げて運ぶことも提案したけど、すげなく断られた。

 何て言うかこうね、睨まれたっていうか、そうね、めっちゃ冷たい目で見られた。

 めちゃくちゃ冷たかった。

 幸いなことに「睨まれる」までいかなかったから耐えられたけどね、もう少しで心が折れるとこだったね。


 言外に「これ以上余計なことをするな」って言われてる気がして、黙って狐ちゃんのあとを着いていった。

 黙ってって、喋る口もないけどね。たっはー。


 はー……。


 出るはずのないため息が出る気分だ。

 無理やり明るく考えようとしても、体にまとわりつくようなどんよりした空気が散らない。


 灰熊との戦闘を振り返る。

 戦闘、ではないな。あれは単なる逃走劇で、戦いにはなってない。

 同じ土俵にすら立てなかった。


 運良く逃げられただけ。次はどうなるかわからない。

 灰熊の手の内をいくつか暴いたけど、あれ以外の必殺技があったらダメかも知れない。

 なくてもダメか。オレは弱いから逃げるしかない。

 潰されたらおしまいだ。切り裂かれてもおしまいだ。


 ムリだってあんな全身から「オレオマエコロス」なんてオーラ漂う奴なんて。

 いくら魔神様からもらった体だってさ。

〈アビリティ〉だって戦う用じゃないし。

 実際に千切れたわけだし。


 うん、そう。

 いくら魔神様から、貰ったとして――


――も?


 魔神さま……、つまり神様からの贈り物が、たかが熊に負ける?

 ちょっと待てよオレよ。おかしくない?

 だって神様だよ?

 生命を創り出した神様から直々に貰ったものが、なんで魔物に負けるのさ。


 あのときオレは、体を踏み潰されて何を考えた?

「あぁ、千切れる」って諦めなかったか?


〈変幻自在〉はオレの体に馴染み、触手を出すのもスムースになったし、移動も滑らかになった。

 固くしようとすれば固くなるし、動物の形を真似ればその形になる。

 驚いたときも無意識に震えた。

 

 だから、それはつまるところ。

 千切れると思ったから千切れたんだ。


 よくよく考えてみたら、食チュー植物との戦いである程度学んだんじゃないか。

 オレには毒の棘だって効かなかった。

 触手と蔓の打ち合いも制した。

 ヤバかったのは魔力を吸う〈アビリティ〉だけ。

 

 それだって最後には勝てた。

 勝てたったら勝てた。

 偶然だったけど運の良さも実力のうちとかなんとか言うしあれは勝ちに数えて良しだ。


 食チュー植物と灰熊、何が違うんだ。

 そうだ。神様から貰ったこの体と〈アビリティ〉に比べたら、どちらも等しく雑魚である。

 ならば次は勝てる。

 いや、勝つ。

 こっちは神様からいろいろ貰ったんだから。

 オレの方が有利だ。絶対だ。絶対勝ぁつ!


 ふはは、ふははは、ふははははぁ!!


 はぁーー……。


 だめだ。全然だめだ。前向きに考えられない。

 どんなに高笑いしても楽しくない。

 別に楽しいから高笑いするような性格じゃないしね、オレ。

 

 いくら魔神様からいいものを貰ったって、使うのはオレだ。

 赤ん坊に斧を渡したって木を切り倒せないし、剣を持っても勇者にはなれない。

 素晴らしい道具を活かすも殺すも、全ては使う者次第。


 オレはちゃんと使えるのだろうか。

 過不足なく存分に力を奮えるのだろうか。

 

 触手を出して眺める。

 暗い巣穴のなかでは良く見えない。

 明かりが欲しい。


 朝はまだこない。


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