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序章 2 魔神の話


『……いかい? まじん? 何の話ですか?』


 お兄さんの話がよくわからない。

 元々人間じゃないとは思ってたけど、まじんって、「魔神」? ようは悪い神様ってこと?

 お願い断ったらマズイかな。このまま掌で潰されるかな。プチっと。

 こっちの不安が伝わったのか、お兄さん、じゃなくて魔神様は、小さく微笑んで頷いた。


『そう怯えるな。ひとつずつ詳しく話そう――』


 魔神様が語り出す。長い話だったが、要するにこうだ。

 大昔、魔神様は天上界で、新しい生命を生み出す仕事をしていた。

 植物や動物、昆虫や魚、人間も含め、ありとあらゆる生命を、たくさんの神様達と協力して造り上げた。

 そのあとのことは魔神様の領分じゃないからと、ゆっくり休むように他の神々から言われ、魔神様はしばらく言われた通りにしていたらしい。


 けれど、魔神様は暇だった。魔神様に「生命の創成」という役目があったように、神様達にはそれぞれ役目や仕事があって、他の神様達が忙しく働くなか、魔神様はたった一人で過ごしたそうだ。

 暇をもて余した魔神様は考えた。

「そうだ、私も仕事をしよう」

 早速動き始めた魔神様に、他の神様達が待ったをかけた。

 いわく、「今現在そんな余裕はない」と。


 魔神様は一人では生命を造り出すことができない。どんなに力を注いでも、他の神様の力を貰わないと魂を持つ意思ある生命にはならなかった。

 でも創世期の頃ならともかく、今は地上を見守り、育んでいかなければならない時期だった。他の神様達に、余計な力を使うような余裕がなかったのだ。

 それでも魔神様は動き出した。穏やかな性格の神様を何人かさらって、無理やり事を起こそうとした。


『なんでそんな無茶したんですか』

『さて。大昔のことでとんと覚えておらぬ』


 これに怒ったのが戦や闘いを司る神様達で、魔神様はあっと言う間に捕らえられ、地獄に封じられた。

 あの派手な細工の服には、封印のまじないが施されているらしい。

 魔神様はこの場所でまた独りで過ごした。


 それでも魔神様は諦めなかった。

 いくつかの封印を強引に解いて、今度は地上に直接、新しい生命を造ろうとした。

 もと居る生命に魔力を与え、魔物を生み出した。

 誤算だったのは、力を得た魔物が人間を襲い始めたことだった。


『なんでそんな無茶したんですか』

『さて。自棄でも起こしたのかもしれん』


 天上の神々も黙ってはいない。人間に神の力の一部、理力(りりょく)を与え、魔物に対抗した。

 簡単にいうと、呪文を唱えれば魔法を使えたり、振るった剣からビームを出せたり。

 他にもいろいろ、ゲームや漫画なんかで見たことのあるなんやかんやができるようになったらしい。少し羨ましい。

 そうして長い年月が過ぎ、この世界は凶悪な魔物に人間が剣と魔法で立ち向かう、神話や英雄譚のような世界になったそうだ。


 よしわかった。大雑把に世界観は把握した。

 あと魔神様は話が長いこともわかった。臨場感たっぷりで話すもんだから、とにかく長い。

 これでもかなり話をはしょったんだけど。なんだか疲れた。

 話しきって満足げな魔神様に尋ねる。


『それで、お願いってなんですか?』

『うむ。

 先程説明した通り、地上では今、人間と魔物の戦いは拮抗していてな。小競り合いはあるものの、お互い大きく数を減らすことはない。

 ただ、他の生き物と比べ、人間の数が各地で爆発的に増えすぎてしまってな。

 流石に私とて人間を滅亡させようとは思わないが、天上の神々の手に余るのが現状だ』


 そこでだ、と自信満々に胸を反らす魔神様。

 ロクなこと考えてない気がする。


『こことは違う世界、異界から、死んだばかりの未練ある魂を呼び寄せ、魔物として転生してもらい、人間の間引きをしてもらおうと考えた』

『お断りします』


 反射的に答えてしまった。

 やっちまった。後悔の念がオレの心を覆うが、仕方ない。

 オレはただの凡庸な男だ。だったはずだ。殺し殺されの立場になんかなりたくない。

 やるなら一思いに潰せ、と魔神様を睨む。今のオレに目はないが伝わるはずだ。

 だが予想に反して、魔神様から伝わって来たのは戸惑いの感情だった。


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