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一章 13 なんとか逃げた先で

《お知らせ》

閲覧ありがとうございます。


先日、活動報告にてアクセス数が1000を超えたことを報告しました。

その際に感謝の言葉を存分に叫びましたが。

読んでくださる皆さまには、言葉よりも小説本編を進めた方が嬉しいのではないか、と考えまして。

せっかくの夏休み期間ですし。


本日より13日までの4日間、1話ずつ毎日投稿しようと思います。


どうぞよしなに。


 髭面の木こりが声をかけ、五人は大木の前で立ち止まった。

 木こりが大木の周りをぐるりと回ったり、少し離れて枝振りを見たり、大木の様子を確認する。

 あとの四人はそれを見守っていた。

 そして木こりは満足げに頷き、四人に何かを告げる。

 事前に打ち合わせでもしていたのか、木こりが大木の前で斧を構えると、残りの四人は素早く配置についた。

 木こりの後ろに扇形に広がる。


 木こりの斧の刃が、僅かに光る。

 何をするのかと思う間もなく、木こりが大木に斧を打ち付け――


――凄まじい轟音が響いた。


 その衝撃で辺りの木々がたわむ。

 とっさに本体を広げ、狐ちゃんをかばった。


 木こりが素早く離れる。彼の一撃に大木の幹が直径の三分の一程えぐれたが、そこから琥珀色の樹液が溢れ、固まり、傷口を瞬時に塞いでしまった。

 大木が怒りに震え、枝がざわめく。木こりの舌打ちが聞こえた。


 自身を傷つけた敵に対し、大木は幹を曲げ、枝を鞭のようにしならせ襲いかかる。

 枝の当たった地面は見事にえぐれた。当たったらきっと即死だ。

 しかしこれにまるで恐れることなく、後ろに下がった木こりに代わり、冒険者らしき四人が応戦した。

 枝を避け、あるいは防ぎ、隙を見て攻撃を加えていく。


 盾役の剣士の後ろから魔法使い達が交互に魔法を放つ。

 風の刃が枝を切り裂き、炎の矢が幹に穴を開けた。

 彼らに大木の意識が向くと、その反対側から狩人が複数の矢を同時に当てる。

 狩人に気が逸れると魔法使いたちが攻撃し、大木がまた彼らに向くと狩人が攻撃する。


 なかなかのコンビネーションだ。淀みなく常に攻撃を与え、あれだけ巨大で力の強い大木に対し、気負うことなく立ち回っている。

 あれが一流の冒険者ってやつだろうか。

 わかんないけど戦ったら何もできずにオレ負けそう。怖い。


 大木が太い枝を反らせ、力を込め始めた。

 横向きの攻撃で周りを一掃しようとしているのか。

 だがそれを見た狩人がすぐさま爆発する矢を射ち、その枝を吹っ飛ばした。


 飛んだ枝がこっちに落ちてくる。

 避けなきゃ、いや大きすぎる間に合わない!


 焦ったオレの端に噛みつき、狐ちゃんが後ろに大きく飛んだ。

 だが地面に落ちた枝がこっちに跳ね上がる。

 狐ちゃんは空中にいて体勢を変えられない。


 ぶつかる直前、広げたままの体を丸め、狐ちゃんを包んだ。表面だけ固くして衝撃に備える。

 ガツン、と折れた枝とオレの体が当たり、オレたちは空へと打ち上げられた。

 絡み合う枝と葉の屋根を突き抜け、山なりに遠くへ飛んでいく。


 場外ホームラ~ン!

 着地どうしよう!?


 鳥の〈解析〉はしてないから翼を作れない。ヤバい飛べない。

 とにかく狐ちゃんは守らなきゃ、表面は固めたままであああ落ちる落ちる落ーちーる~~!!


 ボールになったオレは、緑の屋根の上を二度跳ね、隙間から落ち、魔草をなぎ倒し、何かに当たって止まった。


 あ、危なかったー……。人間だったら死んでたかも。


 なんて半ば呆然としていると、うなり声がした。

 すぐそこの当たった何かから。

 よく見ると目があって口から牙が覗いて焦げ茶色の体毛に覆われている何かから。


 熊でした。


「ガアァァッ!!」

 ごめんなさぁい!


 吠える熊を背に、触手を何本も出してしっちゃかめっちゃかに走る。走るというか転げるというかとにかく逃げる。

 樹を避け草を掻い潜り大岩を飛び越え、その大岩に隠れて後ろを確認した。


……いない。


 動くのは移動中の蔓くらいで、熊の姿はなかった。なんとかまけたようだ。

 あるいは、追いかけてなかったのかもしれない。

 息を吐くかわりに、全身の緊張をほぐすようにべちょーっと広がる。

 ようやく助かった。


 次に逃げるときは、もっと上手くやろう。

 視界を後ろまで広げて追っ手を見ながら走るとか、触手を出しすぎないようにするとか。

 大きさの違う触手をめちゃくちゃに動かしたから、客観的に見るとかなり気持ちの悪い塊だった。

 「気持ち悪い」は紳士的ではない。やっぱりスマートでないとね、紳士は。


 なんてひとり反省会をしてたんだけど。

 狐ちゃんが動かない。

 おかしいな、怪我はないはずなんだけど。

 触手を伸ばして〈解析〉する。

 怪我はない。息もしてない。


……息してない?


 あわわわわ!

 呼吸! 呼吸させなきゃ!

 叩くんだっけ!?


 触手で背中を強く叩く。

 駄目なら人工呼吸だけど、オレには口も肺もない。できないじゃん!

 焦って叩いた三回目、狐ちゃんが「フハッ」と息を吹き返した。

 荒い呼吸を繰り返し、体を起こす。

 良かった~いやもうビックリしたよ~、と触手で背中を撫でようとしたら噛まれた。

 咥えられるときの甘噛みとは違う、わりと本気噛み。

 めっちゃ睨まれる。


……はい、オレのせいです。ごめんなさい。


 痛覚もないし肉体的にはノーダメージだけど、心が痛む。

 とっさのことだったからね。全身をくるんだらそりゃ呼吸できないよね。

 危うく狐ちゃんを窒息死させるところだった。ホント危なかった。


 もっと、もっと冷静に動こう。うん。

 次にこうならないように、空気を〈解析〉しておこう。

 これならくるんじゃっても、あとから体内に気泡を作ればオッケーだ。


 だからさ。反省してるから、その。

 離してもらえると嬉しいかなぁって。


「グルル……」

 ごめん。


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