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一章 10 庭掃除でいただきます


 行動開始。

 まずは周辺の〈解析〉から。


 今回、行動するにあたって注意すべきは、食チュー植物をはじめとした肉食性植物に、オレが食べられないようにすること。

 そのために考えたのが、髪の毛のように細い触手。

 これなら近づいても気づかれにくいはず。


 それに試してみたんだけど、本体から触手を切り離した場合、体積の小さい触手の方が、大きい触手よりも魔力の消費は少なかった。

 万が一食べられても体へのダメージは少ないってことだ。


 ちなみに切った瞬間、触手は泡立ち崩れて消えた。

 体を支えられずに消滅するって魔神様が言ってたけど、こんな風に消えるのか。

 少し前に自分がそうなっていたかもしれないと考えると、恐ろしさに身がすくむ思いだ。プルルン。


 なんて震えている場合ではない。さっさとやらねば日が暮れる。

 数本の毛髪型触手を出して、まずは巣穴の周りから探っていく。

 巣穴の上には大人が三人で抱える程の大きな木が生えている。

〈解析〉してみても特に動物を食べるわけではなさそうだし、安全だ。

 見た目も前世で見た広葉樹と似ているし、なんとなく癒される。


 どこからどう見ても普通の木だ。

 他の木から移ってきた動く蔓を枝で叩き落とす以外、普通の木だ。

 その蔓を引き千切って投げる以外、普通の、木だ。


……普通ってなんだっけ。


 樹上の攻防はおいといて、続いて木の周りを〈解析〉。

 この大木のおかげか、積極的に動くような植物は周りにいない。

 たぶん大木に近づいたら吹っ飛ばされるんだと思う。

 あの食チュー植物も、大木に、そして巣穴に届く位置にはいない。


 移動中はそれどころじゃなかったけど、運良く、安全地帯に逃げ込めたみたい。よかった。

……大木を傷付けていたらどうなってたかわからないけど。

 穴の中で手当たり次第に〈魔力分解〉しなくてよかった。

 もし根っこをえぐってたらそのまま潰されてたかも。

 体の柔らかいオレならともかく、狐ちゃんは危なかった。


 さて、巣穴は安全なことがわかった。

 次は草刈りのお時間です。庭の手入れみたいなもんかな。


 ふふふ。オレの触手が火を吹くぜ!


……吹かないな。もっとこう、「本気出すぜ!」みたいな決めゼリフないかな。

 紳士っぽく知的なの。

 聞いただけで「コイツ頭いいぞ!」ってなるようなの。

 今後の課題だな。紳士への道は一日一歩ってやつだ。

 三歩進んで一呼吸、のんびりやっていこう。


 手始めにあの萎びた食チュー植物に近づいてみる。

 すぐさま逃げられるように、そっと、ゆっくりとだ。


 赤ネズミが捕まった位置に来た。反応はない。

 草むらに入ってみた。反応はない。

 触手でつついてみた。ピクッと反応したが、それだけだ。

 根本を触手で掴んでみた。身動ぎするように動いたが、だいぶ弱っているようで反撃はない。


 よしよし、このまま刈り取ってしまいましょう。もちろん、触手で。

 オレの体は〈解析〉をしなければ他の生き物や物体に擬態することはできない。

 でも、〈変幻自在〉で体を動かして平べったくなったり、固くなったりすることはできる。


 と、いうことは、だ。

 現物を〈解析〉しなくとも、触手を平たく固くすれば、刃物の代わりになれる。

 狐ちゃんを助けるのに、触手の先を細く固くして注射針みたいにしたけど、上手いこといったしね。

 鉈みたいな触手を出せば、植物なんてザックリザクザク切り放題。

 恐るべき魔草(まそう)たちよ、覚悟しろ!


 この天才的発想、さすが紳士を目指す男、オレ。素晴らしい。

……誰も誉めてくれないから自分で誉めてるけどさ。いい加減空しくなってきたな。


 よーし。頑張ろー。

 ひとりでもー。おー。

 いただきまーす。



……結論から言いますとですね。

 鉈型触手を用いての草刈りは成功して、ちょっと死にかけました。


 あの弱った食チュー植物は鉈で上手いこと切ってね。

 抵抗らしい抵抗もなく、ざっくばらんに切り分けて、オレ本体にばんばん突っ込んでどんどこ食べました。


 それで、まずは地面の上に出てる葉とか茎とかから切ってたんだけど、土の中にある根っこをどうやって取り出そうか考えてたら、茎と根の境目あたりに魔力の塊があってさ。

 それを取り出したら、残った根っこがみるみるうちに干からびた。


 どうやら魔力を持った魔物は、この塊、仮に魔石って名付けようかな、それを体から剥がすと、急速に力を失うみたい。

 干からびたおかげで土との間に隙間ができて、残った根っこもサクッと掘り出せた。


 とりあえずコツも掴んだし、調子良く他の肉食性植物も刈り取った。

 目もないのにどうして獲物がいる位置がわかるのか、不思議だったんだけど、〈解析〉した結果、ほとんどの肉食性植物に〈熱源探知〉の〈アビリティ〉があった。

 熱を持った動物が近くを通ると、それに反応して蔓や葉を動かして捕獲するみたい。


 でも体温なんてないオレには通じない。

 ぼんやり風に揺れる奴らを、切っては食べ、食べては切って、オレの体はどんどん大きくなった。


 なかには毒の棘を持った植物がいて焦ったけど、刺されたところで魔力以外取り込めないオレには全く効かず、毒も含めてまるっといただいた。

 そこそこ強かったみたいで茎も固く手強かったものの、魔石さえ取ってしまえば弱体化するし、そもそも必殺の毒も効かないし、オレの敵ではなかった。


 オレの億千万いるファンのなかには気づいた人もいるだろうけど、じゃあ何がヤバかったかって言ったら、植物のなかに魔力を吸いとるタイプがいたこと。


 もうね、ホント、ホント危なかった。


 おらーって鉈型触手を振り下ろしたら、そのまま取っ捕まって、ジュージュー吸いとられるの。魔力を。スゴかった。

 例えるならたくさんの掃除機を体につけて吸いとられるような、持ってかれるような感覚。

 オレの体はほぼ魔力だから、実際に持ってかれてるんだけどさ。


 体は縮んでいくし、ヤバい死ぬって思って、もう焦りに焦って鉈型触手を三本くらい出してメチャクチャに振り回してたら、偶然、魔石のある茎を切ることができた。

 あとは怯んだ隙に魔石を奪って、弱体化したところで茎と根を切り離した。


 それでもまだ大根みたいな根っこが地面から這い出て逃げようとしたから、今度は毛髪型の触手でがんじがらめに捕まえて、大急ぎで食べた。

 ビチビチしてた。


 草刈りはそいつで最後だった。

 もちろん森のなかにはまだまだいるだろうけど、巣穴から見える範囲にはいなくなったから、良しとした。

 だいぶ暗くなったしね。

 あとやっぱり死にかけて疲れたしね、精神的に。


 それに、新しい問題も生まれてしまった。当然の結果と言えば、まぁそうなんだけどさ。

 うん。たくさん食べて、しかも魔石も食べたせいか、さ。


 大きくなりすぎて巣穴に入れなくなっちゃった。

 はみ出る。

 どうしよう。


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