表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/37

一章 06 〈アビリティ〉について考える


 オレはやりました。やってやったんです。

 紳士への第一歩を踏み出しました。

 狐ちゃんの望んだ通り、好き嫌いせずご飯を食べ切りました。

 もう二度と体験したくありません。


 最後の魔力を〈吸収〉して、しばし。

 勇気と根性と引き換えに大切な何かを失った気がして、オレは茫然と立ち尽くしていた。

 足はないから厳密には立ってはないけどね。


 狐ちゃんはいない。

 オレの食事を見届けて、ふらりとどこかへ去っていった。

 恩返し終了ってことかな。いやはや、お世話になりました。

 最後にもふもふしたかったです。


 さて。

 多少動けるようになったものの、昨日のように移動するには少し不安が残る。

 最初の体の大きさと比べると今の体はまだ小さく、魔力が回復していない。

 だからといって動かずにいれば、いずれ魔力切れを起こす。

 移動をするにも魔力を確保するにも、なるべく無駄なく動くべきだ。

 そのためにオレは、オレ自身のこの体や〈アビリティ〉について、もっと深く知らなければならない。


 闇雲に動くより、まずは考える。

 おぉ、なんだか紳士っぽい。

 目指すは落ち着いた大人の男だ。ダンディーってやつだ。

 それでは紳士たるもの、こんなところで熟考するべきではない。

 穴の中に戻って静かに思考を重ねることにする。


 穴に入ったら入り口を枯れ葉で隠す。

 周りからかき集めると不自然な跡が残るので、ならしながら自然に隠れるように埋める。

 こんな時、自在に動かせる触手は便利だ。

 暗くなった穴の中でまずは己と向き合うことにする。

 瞑想だ。いかにも紳士らしい。


 では最初に。

 やはり〈アビリティ〉について知ることにする。

 自分に〈解析〉を向け、特に〈アビリティ〉を知りたいと念じてみる。

 ゲーム画面のように分かりやすい表は現れなかったが、なんとなく発動中の〈アビリティ〉を感じられた。


 今までオレは、〈アビリティ〉は一つずつ発動し、それぞれがそれぞれの働きを持つのだと考えていた。

 図で表すとこんな感じだ。


〈並列思考〉―(オレ自身の思考)

      ―〈解析〉―(光)

           ―(音)

      ―〈変幻自在〉

      ―〈魔力分解〉

      ―〈吸収〉

      ―〈錬金術〉


〈並列思考〉からたくさんの枝が伸びて、それぞれの〈アビリティ〉とくっついてるイメージだ。

 実際は違った。


〈並列思考〉―(オレ自身の思考)

〈並列思考〉―〈解析〉―(光)

〈並列思考〉―〈解析〉―(音)


 今現在使用中の〈アビリティ〉はこんな風に発動している。

 さらに触手を出してみると、


〈並列思考〉―(オレ自身の思考)

〈並列思考〉―〈解析〉―(光)

〈並列思考〉―〈解析〉―(音)

〈並列思考〉―〈変幻自在〉―(触手)


 触手の分、発動〈アビリティ〉が増えるわけだ。

 これを踏まえて考えていこう。


 〈アビリティ〉の魔力消費量を仮に一律で十とする。

 考え事したり動いてたりで常に消費する魔力もあったわけだが、今は考えに入れないことにする。


 最初のオレのイメージだと、

〈並列思考〉で十、

〈解析〉で十、

〈変幻自在〉で十、

〈魔力分解〉で十、

〈吸収〉で十、

〈錬金術〉で十。

 最高でも一度に六十の魔力を消費する計算だ。


 さて、実際はどうか。

 考えるための〈並列思考〉で十、

 視覚のための〈解析〉とそれを操る〈並列思考〉で二十、

 聴覚のための〈解析〉とそれを操る〈並列思考〉で二十。

 この時点ですでに合計五十の消費。

 さらに〈変幻自在〉など他の〈アビリティ〉を使うなら発動に最低二十ずつ消費していくわけで、しかも〈解析〉や〈変幻自在〉の仕様を見るにひとつの事柄に対してひとつずつ発動させなきゃいけないから細かく考えなきゃいけなくて……えー……あー……。


 とにかくいっぱい発動させるとたくさん消費するわけだな!


 想定よりはるかに多くの魔力を消費することがわかった。

〈アビリティ〉への理解が少し深まった。一歩前進である。

 生きていくだけで魔力を消費するので、前世と同じく三食ご飯を食べなければならない。三食以上かな。

 手当たり次第に食べまくったら環境破壊に繋がってしまうので、キチンと考えながら食事しないといけない。

 それこそハゲ山作ってその山の主に怒られるとか、異変を察した人間から追いかけられるとか、そんなことがあっては困る。めっちゃ困る。


 では何を食べるか。何度か植物を食べたけど、それぞれ吸収できる魔力量が違った。

 単純に大きさの違いだけではない。小さな草でも多く魔力を吸収した場合もあれば、大きな木でも少ししかできない場合もあった。

 魔力保有量は種類によるらしい。

 そして、今まで食べたなかで一番魔力量が多かったのは、狐ちゃんのご飯だ。

 あの例のアレだ。食べるのに苦労したやつ。

 つまり、効率良く魔力を摂取するなら、植物より動物を食べる方が良い。


 動物。狐ちゃんを助けておいて、他の生き物は殺すのか。


 思考の沼にはまりかけたその時、かすかな足音が聞こえた。

 軽く素早い足音で、こちらにまっすぐ近づいて来ている。

 穴の入り口の枯れ葉の隙間から、細い触手をそっと伸ばした。

 視界を本体から触手の先に移す。


 茂みから顔を出したのは、狐ちゃんだった。

 周囲を警戒しながら穴に向かってくる。

 口には時々ピクピクと動く、赤っぽいネズミのような生き物が咥えられていた。


 こっちに向かって。

 待って。

 持ってくるってことは。

 待って。

 まさか。

 待って。


 待って。


 ひえぇ。


《与太話》

閲覧ありがとうございます。

本日(2019年06月26日)は一粒万倍日。

良いことも悪いことも、万倍になって返ってくる日です。

「これからもたくさんの作品を世に出せますように」の願いをこめて、

いつもの更新日ではありませんが、投稿してみました。

今後とも、どうぞよろしくお付き合いください。



正確に言えば一粒万倍日は「何かを始めるのによい日」なので、

投稿するのであれば新作の方が良い気もいたしますが、

細かいことはよいのです。


一文字が万倍になれ。

どうか長く続けられますように。


そしてできればそれがおもしろくあれ……!(神頼み)(ならぬ)(己頼み)(がんばるよ)


とっぴんぱらりのぷう


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ